今日のグルーヴ〈438〉
海外で活躍している日本人演奏家から、宗教戦争がない日本は素晴らしい、と言われたことがある。海外に行ってはじめて、日本の宗教観の寛容なことの尊さを知る、ということなのだろう。
有史以来、宗教は、平和をもたらすより、戦争をもたらすことの方が多いのではないか。人間の心の平和を目的とする宗教が、戦争の原因になる不条理。
三つの宗教の聖地が同地にあるという、有史以来、未来永劫、世界にとって、下手をしたら命取りになりかねない状況は、もし本当に神の存在があるのであれば、何という困難な課題を人類に与えたのであろう。
世界はこの問題に関しては、日本を見てみるべきなのではないか。
何故、宗教にあそこまで命がけになれるのか理解できない、と思えるほど日本では宗教の呪縛から解放されているに違いない。
日本人は宗教を、宗教というよりは、文化、伝統、あるいは情緒としてとらえているように思えてならないが、それこそ平和をもたらす鍵なのではないか。
歴史を紐解けば、日本も、様々な宗教が伝来して以来、新たな宗派が誕生したり弾圧されたりした時代もあったが、現代では、基本的に宗教に寛容である。いつの間にそうなってしまったのだろう。
世界中の文明、文化を吸収して昇華してしまう日本では、宗教をもその対象になるのかもしれない。
しかし、これこそ日本人の最高の叡智のひとつであるように思えてならない。
ところで、人間は本当に平和の為に戦おうとしているのだろうか。実は、それは見せかけ、建前であって、本当は、欲望、利権、そういったものの為に争っているのではないか。目的の為には手段を選ばないから戦争が起きる。まずはこの不条理と戦うべきなのではないか。