今日のグルーヴ〈174〉

グレン・ミラーの代表曲の一つである、「ムーンライトセレナーデ」は、スタープレイヤーだったトランペット奏者が唇を切ったための、窮余の策の産物だったらしい。


それまでのアルトサックス2本、テナーサックス2本、バリトンサックス1本のサックスサウンドに、クラリネットを加える事によって、かつてなかったサウンドがこの曲によって作られたのである。


常に作曲家、演奏家はニューサウンズということを考える。それは、おそらく、ベートーヴェンもそうであったに違いない。


ベートーヴェンの初期のシンフォニーはハイドンやモーツァルトの古典派の音楽に似ている。しかし、第九の頃になるとまるで別世界である。


返す返すも残念なのは、ベートーヴェンの時代に、良いトランペットが無かったことだ。もし、現代のような機能に優れたトランペットがあったならば、ベートーヴェンはもっと、トランペットを盛んに使用したに違いない。


勿論、ティンパニーとのセットでのサウンドでは素晴らしい世界を前進させた。しかし、良い楽器があったなら、耳が不自由であったとしても、それ以上のサウンドが作られたはずだ、と思いたい。


では、作曲家、演奏家は、何故ニューサウンズを求めるのか。これは作曲家や演奏家もさることながら、聴衆が求めているのだと私は考える。


人間は、常に真理を求めたり、見たことの無い世界を見たがる。そして、それは結果的に人類の進歩をもたらす。そこに人間の人間たる所以があるに違いない。


そして、進歩をもたらすものは、アカデミックな世界がもたらすというよりも、案外、普段の何気ない瞬間にヒントが隠されているように思える。


グレンミラーのニューサウンズは、そこを見逃さなかったのであろう。


今日もグルーヴィーな一日を。

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