でもね、これやりだすと、人前で弾けるところまで持っていくのに、本当に時間がかかるんです。まだ「この音を出そう!」と想像してから形にするまでに時間を要するし、最終的にどうするか決めるまでに日数を要します。それでも、こうしてどんどんこだわっていけば、もっといい演奏に出来そうだし、そういう時の自分の集中力は最高点まで発揮される気がします。

 

しかし、こだわりが出るということは、いろいろなものにNOと言わねばならなくもなってきます。これが体力いるし、さらに時間も掛かるんです。やっぱり何でも許容していると、楽だけど、結果が中途半端なんですね。でも、半端にならないためにいろいろ取り決めをするのでなく、どうしたいか、なぜそうしたいか、という意志ありきの決定です。だから自分の一番やりたいものを導き出すために、考えて考えて考え続けて、答えが見えてきたなら、その目指す先のために断捨離を始めないといけない。

 

いままで「何となく、まんべんなく」掛けていたヴィブラートも、これからは「お断り」です。まあいきなり全てを切り替えようと思ったら、もはや弾けなくなってしまうのですが、常に変える努力をしていないと前へは進めません。

 

で、こういったことを変えていく時にほんとうに大事なのが、基礎練習です。しかも、基礎を出来るようにするためのというより、演奏を変えるための基礎練習だから、これもかなりこだわりを持ってやらないといけない。たとえば音階を1音1音丁寧にやる。それも、今までやったことのないような音の出し方でやる。たとえば弓を一弓かえすごとに、指板側〜駒側〜指板側、と行き来する、とか。様々なことを試して、ひとつひとつ「音のレパートリー」を作っていく。

 

そうした積み重ねが、演奏を変えていくんだろうな、と思いました。

最近良く弾くイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番は、初めて練習し始めたのは2011年の夏でした。その頃は未だ演奏技術を把握していなかったのでひどく時間がかかりました。でも、最近4番を譜読みし始めたら、今回はあまり困ることなく、しかも最初から音選びまで出来る状態で練習スムーズにできました。

 

やれやれ、20年つづけて、やっと練習を楽しめるようになったか、という感慨深い気持ちです。しかもいまここで書いていて、練習を言葉にして綴るって、結構面白いなと思いました。

 

なんだかマニアックになってしまうかもしれないけど、またこんなかんじで、もしくはもっとコアなことも、書いちゃいたいなと思います。

 

常に音が変わり続けていく。だからこそ、また次の演奏会が楽しみになるんだなあ。

 

それでは、よい一週間を!

明るい太陽のもと、心に栄養を注いであげてください。

尾池のブルーマンデー憂さ晴らし

ヴァイオリニスト 尾池亜美

第57回 練習を言葉にして綴る

こんにちは!憂さ晴らしのお時間です。

東京は、月が変わったら、突然季節が変わったかのように暖かくなりました。

それでもまだ半袖にはなりきれないところや、カラッとした空気なんかが、ちょっとヨーロッパのよう。5月のはじめは唯一、ヨーロッパに気候が似ている時期ですね。

 

この頃、演奏の趣味の移り変わりが激しくて困っています。まあ困るとはいえ嬉しい悲鳴なのだけど、はっきりと「好きな演奏」と「好みでない演奏」が分かれてきてしまいました。今までは何でも肯定する派だったし、めったなことで「この演奏はちがうぞ」と思うことはなかったんだけどな。

 

発音は、なめらかなもの...丸く、甘い音、心に負担のなく、優しく話しかけるような音。激しいシーンでも決して弓を弦にぶつけない奏法。ヴィブラートはAutomaでなくManual車を運転するように、ひとつひとつの手順と動作をわきまえて...そうして細かいところから組み立てていくと、もっと美しいものが出来るような気がしています。

© 2014 by アッコルド出版