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もっとオープンに演奏を

 
「かつて桐朋学園で十数年ほど富山の桐朋学園の校舎で、東京クァルテットのメンバーをよんで講習会をずっとやっていたのですが、その講習会の精神、主旨が受け継がれ、池田くんと磯村くんが来てくれて、また一緒にやることになりました。」
 
──懐かしいメンバーですね。
 
「そうですね(笑)。」
 
──感慨深いものもあるかと思います。コンサートも一緒になさるわけですしね。
 
「本当はここに原田貞夫さんがいればもっといいですね。」
 
──そういうことも…
 
「そのうち、ありますね。」
 
──指導されての印象を。
 
「今日が3回目のレッスンだったんですよ。それぞれ1時間半ずつのレッスンです。十分、時間もありましたし、細かいところまで指導することができました。」
 
──どんなことをアドヴァイスされるのでしょうか?
 
「例えば、モーツァルトだからということで萎縮してるというかあまりやっちゃいけないというか、そう思っている団体もありましたが、でももっとオープンに思い切っていろんなことをやるようにと、言いました。その結果、とても良い演奏になっていたと思います。」
 
──こういった講習会を私も過去にいろいろ見てきましたが、ともすると講師の方が結局自分のやり方を強要してしまうようなパターンも多かったと思いますが、原田先生は、生徒さんの自主性を尊重されているように思いました。
 
「それは生徒のレベルにもよりますが、自分たちのものを持っている団体に対しては、その持っているものを尊重しますけれども、まだ経験の浅いグループに対しては技術的なことばかりを言いますね。」
 
──教え方もレベルによって変えていくということですね?
 
「そうですね。」
 

本格的なレジデントカルテットを

 
──もしカルテットとしてずっとやっていくとなると、先生からのアドヴァイスというのは。
 
「そうですね。勉強する段階ですと、このような講習会に集まるときくらいの練習ペースでもいいでしょうが、プロフェッショナルとしてやっていこうとする場合は、もうそれこそ毎日のようにリハーサルをやらなくてはいけないでしょうね。
 
でも日本はカルテットは難しいですよね。 アメリカとかヨーロッパではカルテットが演奏するする機会は、たくさんあります。日本は、そういう機会がなかなかないから……。」
 
──海外へ行くことをおすすめしますか?
 
「そうですね。本当にカルテットをやりたいと思ったら、アメリカかヨーロッパへ行かなくては、現段階ではやっぱりだめですね。」
 
──日本でもカルテットのファンの人口が増えてきていると思います。
 
「確かに増えてきているけれども、なんて言うんだろう。いわゆる、継続的なしっかりした室内楽シリーズがないですよね。だから日本では食べていけないんですよ。残念ながら。やはり海外に行くより仕方ないですね。
 
海外では大きなコンクールで良い成績をとれば、いいマネージャーがつきますから演奏する機会が増えていきます。 日本にはそういう場がないですからね。仕方ないですねこれは。
 
アメリカのほとんどの大学はresident Quartetを持っているんですよ。それである程度の基本の収入を得られます。生活基盤ができあがります。ヨーロッパでもそういう学校が増えてきています。
 
ところが日本には一つもないです。だから日本ももうそろそろどこかの学校が、例えば桐朋学園なり東京芸大なりあるいはここ洗足学園が、そういうカルテットを一つ持つとだいぶ変わってくると思うんです。」
 
──もしそういうカルテットを募集するとなると激しいオーディションなりますね?
 
「もちろんです。でも学校が雇ってくれれば彼らはそれである程度の基本的な生活ができますから。後は自分たちで演奏会を開拓していけばいいわけです。どこか一つの学校が始めれば、きっとどこの学校も、自分たちのところも、ということになると思うんです。
 
僕もそういう働きかけの活動をちょっとやりましたが、なかなかね難しいです。皆さんなかなか理解してくださらない。そういうカルテットを学校が雇用するということ自体が全然理解できないのでしょうね。その辺の意識改革を一番最初にやらなくてはいけませんね。」

第1回洗足学園室内楽フェスティヴァル

 

芸術監督:原田 幸一郎さんに訊く

インタヴュー

第1回洗足学園室内楽フェスティヴァルが、3月11日から16日にかけて、洗足学園音楽大学内で行なわれた。
 
これは、ヴァイオリニストの水野佐知香さんの発案。室内楽の公開レッスン、コンサートを中心に行なわれたもので、芸術監督に原田幸一郎氏を迎え、講師にはかつて東京クァルテットで一緒に活躍した池田菊衛氏、磯村和英氏を。
 
そして、川田知子、永峰髙志、沼田園子、大野かおる、百武由紀、山崎伸子、北本秀樹、藤村俊介、田中麻紀、山田武彦の各氏といった、日本を代表する実力者たちが迎えられた。
 
弦楽四重奏、ピアノ四重奏中心のレッスンが、音楽学生や若手の演奏家達に対して行なわれたが、どこの団体も数回のレッスンによって高い水準の演奏を実現していた。
 
一つの団体に対して、ひとりの先生が集中してレッスン、というコースと、生徒と先生とが一緒になってカルテットならばカルテットを演奏する、というコースがあった。
 
特に、先生と生徒が一緒に演奏しながらのレッスンというスタイルは、現代では世界的に行なわれているが、正に生きた学習という印象で、生徒さんは緊張しつつも、学ぶこと多々あったに違いない。
 
数回に亘って、この模様をお伝えするが、最初に芸術監督を務めたヴァイオリニストの原田幸一郎さんに、お話をうかがった。

© 2014 by アッコルド出版

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