演奏を終え、拍手。

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ヨーロッパの室内楽演奏会の多くは、コンサートホールに限らず、様々な空間であることが屡々。聴衆との距離も近い。

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諸事情で一ヶ月ほど更新が途絶えてしまった。皆々様にご迷惑、ご心配をかけましたことを陳謝いたします。申し訳ありません。
 
さて、クァルテット・ベルリン・トウキョウ(以下QBT)とのインタビュー、後編である。結成から数年、プロの団体としてマネージメント会社との契約も持ち、「お仕事」を始めようとしている若者達にとって、何より欲しいのは演奏の場である。現在のヨーロッパの室内楽界で、各地の小規模楽友協会以上に重要な主催者となっているのが音楽祭。所謂「音楽祭のレジデンシィ」である。QBTも、6月には南仏エクサン・プロヴァンス音楽祭に招聘され、レジデントとして滞在する予定。日本の団体としては、ヴィーン留学中のクァルテット・アルモニコ以来だろう。
 
そんなQBTの日本での拠点となるのが、来る7月に札幌市内にオープンする「ふきのとうホール」である。東京藝術大学室内楽科を実質上立ち上げ、QBT第1ヴァイオリン守屋に室内楽への道を決意させた恩師でもある岡山潔が音楽監督を務めるこの民間室内楽専用小ホール、若手団体の育成をミッションのひとつとすることを表明。QBTのレジデンシィを発表した。以下、岡山監督の言葉を引用する。
 
「この舞台から世界へ羽ばたくアンサンブルを育てたい」その想いから室内楽の演奏に情熱を注ぐ若手2組をレジデンスアンサンブルとして迎えます。 アンサンブルを結成して以来常に演奏を共にし、理想の音楽を探し求める彼らのために心ゆくまで音作りができる環境を約束します。
世界に、ホールに、そしてお客様の心に響かせたい音の約束です。」
(音楽監督:岡山潔 ふきのとうホール公式ホームページより)
 
弦楽四重奏を学ぶとはどういうことか、札幌でどんな活動が予定されているのか、そしてなによりも、QBTが目指す音楽は何なのか。前編で雄弁を振るっていただいた守屋氏に代わって、他のメンバーが大いに語る。
 
なお、今後の予定を含むQBTの公式な情報は、以下の公式ホームページを参照されたい。
http://www.quartetberlintokyo.com/
 
 
――皆さんは5年目になるわけで、いよいよ次の段階に入ったわけですね。守屋さんの強い意志は判りましたけど、でも他の3人の皆さんがいないとやれない(笑)。ところで、パブロフさんは第2ヴァイオリン固定ですよね。
 
パブロフ:私は15年の間、第2ヴァイオリンを専門にしてきました。これまで5つのクァルテットを経験してきましたが、全て第2ヴァイオリンです。
 
――QBTはヴァイオリンは固定なんですか。
 
守屋:ええ。
 
パブロフ:席は代わりません。
 
――ところで、クァルテットを習う、ということについてお伺いしたいのです。皆さんより前のある世代までは、学ぶと言えばアマデウスQとかメロスQ。最近では「ケルンでアルバン・バルクQに学ぶ」とか「ベルリンでフェルツに師事」、「バーゼルでライナー・シュミットに師事」というプロフィルばかりが目立ったわけです。その意味でいうと、フェルツ先生の弟子だったオリバー・ウィレさんに学んでいる皆さんを見ていると、いよいよ本格的に世代交代になってきたな、と思えるのです。抽象的な質問になってしまいますが、クァルテットを学ぶというのはどういうことなんですか。勿論、《死と乙女》のこの部分では和声の動きを考えて音程を少し低めに取ろうとか、この部分は多少無理でも表現のためにアップボウにしようとか、そういう具体的なことはいくらでもあると思いますけど。
 
松本:それはソロのレッスンですることだと思います。クァルテットのレッスンというのは、弾くことではなく、まず最初に音楽のことです。さっき守屋さんが「譜面上のことではない」と言いましたね。勿論、譜面から始まるんですが、その背後に行く。
 
――なるほど。
 
松本:それともうひとつは、チームワークです、人間関係というか…なんというんでしょうね、ひとりじゃないですから。そのふたつです。ソロのレッスンにピアニストと行っても、音楽的なことも学びますが、どちらかというと、どうやって弾くか、どうやって弾いたらそう伝わるかとか、そういうHow toの方を教わる。弦楽四重奏のレッスンはそうじゃなく、特にウィレ先生は、そこのところに重点を置かれます。
 
杉田:オリバー先生のレッスンでは、凄く楽譜をアナリーゼします。ここがこうなって音程を出そうとか、和声がここで変わるからそれをもっと出そうとか。そういうのを全部、先生がクァルテットの横でピアノで弾いて、それで示して下さるので、音楽の立体感が凄い。
 
――指揮者みたいですね。
 
杉田:ああ、結構、そうですね。でも、レッスンを受けたあとに自分達でも分析出来るようになりますし、みんなでこれをこうしてみない、とか考えるようになる。それから、音程だけとかではなく、短いフレーズになってるからもっと長いラインで音楽を作りなさい、と指摘して下さったり。頭を使う、クレバーなレッスンなんで、レッスンを受けた後、頭が疲れます(笑)。でも、楽しい。
 
パブロフ:私は、他の団体で別の先生にも習ってきました。ですが、ウィレ先生は「自分のやり方で演奏しなさい」と私に言わなかった、最初にして唯一の先生なのですよ。私たちが弾くように、そして私たちが良く演奏するように、助けてくれるだけです。有名な先生の殆ども、「自分の好きなようにしなさい」と言いはしますよ(笑)。でも常に、自分らのドグマを、自分のシステムを押し通すのです。それにはそれなりの眞実があるからでしょう。ですがウィレ先生は違う。彼はドイツ人ですがアメリカでも学んでいて、ヨーロッパやアメリカの偉大なクァルテット奏者から学んでいる。良いミックスがある先生です。
 
――彼が師匠で良かった。
 
パブロフ&杉田:ええ、良かったです。
 
杉田:先生がいつも仰るのは、自分達を出せ、「Be yourself」、ということ。君達はもともと良いんだから、ステージの上でそれを出せばいい。じゃあ、どうやってベストを出せるか。それを教えて下さる。
 
――皆さんは、クスQのコピーではない。
 
杉田:違います。先生はそれをいちばん嫌だと思っていらっしゃるでしょうし。
 
――最後に、今後の日本での活動についてお尋ねします。札幌のふきのとうホールのレジデンシィということですが、具体的には、どいう風に活動なさるのでしょうか。
 
杉田:1年に2回帰国します。7月はオープニングで、7月8日に弾きます。
 
パブロフ:ふきのとうホールには、美味しいクッキーがありますよ(笑)。
 
――レジデンシィとは、具体的にはどういうことをイメージすれば良いのでしょう。
 
守屋:岡山先生が仰ってるように、ホールが育てる、ということです。
 
――音楽ファンのレベルからすれば、年に2回戻って来て、そこで弾くということになっちゃうんですけど(笑)。期間は。
 
守屋:来年の1月から3年間です。
 
――札幌の1月って、大変な季節ですね。
 
松本:ええ、去年も2月に札幌の六花亭ホールで弾かせていただいてるんですけど、この吹雪でお客さんも大変でした。
 
――まあ、新しいホールは市内ですからね。
 
守屋:演奏会は、1月と7月というような形になると思います。
 
――プログラムの予定は。
 
杉田:考えているのは、バルトーク全曲です。
 
――なるほど、6回決まっているなら、丁度良いですね。
 
杉田;それと、ハイドン。それから、ベートーヴェンの中期ともうひとつ、《大フーガ》とか。
 
――大いに期待させていただきます。最後に、これは言っておきたい、ということがあればどうぞ。
 
パブロフ:私たちの弦楽四重奏は、音楽を愛しており、音楽のために、ステージで音楽をするために生きています。
 
守屋:弦楽四重奏に集中しています。
 
パブロフ:そう、言うまでも無く。ですから、私たちの演奏会に来て、聴いて下されば、聴こえるのはそれだけでしょう。安っぽいことはしたくありません。これが私たちの生き方なのです。それが私たちのメッセージ。私たちは音楽に生きている。
 
(2015年2月20日新宿にて)

師匠のオリバー・ウィレ氏と。右から、第1ヴァイオリン守屋剛志、チェロ松本瑠衣子、ウィレ、ヴィオラ杉田恵理、第2ヴァイオリンのモティ・パブロフ。なお、オリバー・ウィレ氏はクスQの第2ヴァイオリンとして6月に来日、サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンに出演する他、武蔵野、名古屋宗次、大分などでの演奏会が予定されている。

第83回

クァルテット・ベルリン・トウキョウ

大いに語る(2)

電網庵からの眺望

音楽ジャーナリスト渡辺 和

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