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尾池のブルーマンデー憂さ晴らし
ヴァイオリニスト 尾池亜美
第95回 2つの体験
こんにちは! 憂さ晴らしのお時間です。
最近はまったくことなる2つの体験をさせて頂きました。
実はテレビ朝日の収録に行ってきたのです。
バラエティ番組のディレクターさんが、
ネット上で変わったヴァイオリニストを捜していたそうで(?)
たまたま私が検索に引っかかり、このコラム等をおよみ頂き、
出演依頼に至ったそうですが、
その番組は「関ジャニ∞の仕分け」という、
3月21日で終了する番組の楽器の企画で、
出演するヴァイオリニストは、
カラオケの機械の「精密審査」という機能を相手に、
如何に正確にヴォーカルラインをなぞって弾けるか、
ヴィヴラートを美しくかけるか、抑揚を付けて弾くか、など、
実に細かい作業を要す演奏をして、得点をあらそうという、
面白いゲーム方式でした。
放送はその21日の18:56~20:54の2時間で、
そのどこかで出るそうなので、
お時間がありましたら、ご覧下さい。
まさかこんな展開になるとは夢にも思ってなかったのですが、
前回の同企画には先輩のNAOTO氏も出ており、やはり
頂いた機会は完全燃焼しないと、ということで頑張って参りました。
いやはやでもテレビ業界の方とは初めてお会いしましたが
なかなか凄い雰囲気を持っていらして、
ディレクターさんは隅から隅まで情報収集をして下さっているのです。
当たり前なのかもしれないですが、Wikipediaからyoutube、
そしてTwitterの書き込みまで、
テレビのトークに使える内容を捜して、読み込んで下さるのです。
ただでさえお忙しいのに、いち出演者のためにそこまでなさるって、
とても根性の要ることだろうなあ、と
素直に感心してしまいました。
テレビの裏側の凄さをかいま見た日でした。
はたまた、まったく違った体験その2は、久しぶりに聞きにいったライヴ。
会場は依前から知っていて、そこでスイスから室内楽の団体で来日していた友人たちにシュニトケの弦楽三重奏や、ペンデレツキの四重奏を弾いて頂いたことがある、あるデザイナーさんのご自宅でした。
こちらで今回は「表現」というグループのライヴでした。
東京芸術大学のメンバーで構成された、
というとアカデミックなイメージが多少出ますが、
やはり芸大というのは芸術のがっこうであり、
学問的な雰囲気はありません。
ある評論家の言葉で「人を感動させられるものこそが芸術だ」
というものがありますが、
表現 -Hyogen-さんは、
声と楽器を駆使して見事に芸術の世界を表現されていたと思います。
お客の人数も限定し、皿には食卓も設置し、メンバーのお一人が器を作られて、料理家さんが四季の優しい料理を合間合間に運んでくださり、頂きながらゆっくりと演奏を聴くという贅沢な時間。
お客に囲まれるようにして演奏し続けた彼らは
ヴァイオリンとヴォーカル
ギターとヴォーカル
アコーディオンとヴォーカル
そしてウッドベースとヴォーカル
このようにして、4人が4様のまったく違う美声を組み合わせて、
実に色々なヴォーカルを作り上げます。
マイクを使わなくても、木材のみの空間と少ない人数のお陰で、
たっぷりと音が届きます。
大音量のときは4人で同時に、
また、ささやくように1、2人で歌うときもあり、
素朴な歌詞がいきいきと伝わってきます。
楽器で奏でる音も、単純に聞こえながらもとても精密に組み合わさっており、これを楽譜にするとしたら至難の業になるのではないか、けれどある意味室内楽としてすら成り立つのではないか、100年後にもしかしたら古典になっているかも… なんて思いを巡らせました。
1曲目に入る前や、曲と曲を繋ぐあいだにも、それぞれが楽器をゆったりと即興で鳴らし、お客さんの気持ちは宙に浮いたまま、ひと時も「落ちる」ことなく、最後は天まで持っていってくれる、そんなライヴでした。とても素敵な音世界でした。
また聞きたいしCDも欲しい、少しでも長く世界に浸っていたい、そう思わせてくれる音を作る人たちって、実はとても少ないように思います。
良い会でした。ありがとう。
それでは皆さん、どうぞ良い一週間を。
Ami Oike
French Romanticism
尾池亜美 ヴァイオリン
尾池亜美(ヴァイオリン)
佐野隆哉(ピアノ)
セザール・フランク:ヴァイオリン・ソナタ・イ長調
カミーユ・サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ短調Op.75
クロード・ドビュッシー:夢
定価2,500円(税込)
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