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ヴァイオリン弾きの手帖

ヴァイオリニスト、ヴァイオリン教師 森元志乃

第144回

神猿―勝る―優る―魔去る

昨年末の、あるコンサートの打ち上げで、

相方のピアノ弾きがニコニコしながら、

突然、こんなことを言い始める。

 

「モーツァルトの干支が何か、知ってる?」

 

モーツァルトの“干支”? 

そりゃまた、面白いことを。(笑)

思わず、真面目に考えてしまう。

で、出した答えが ―「“ねずみ”?」

 

「正解!」

なんだって、当たると嬉しいものだ。

別な意味でも、嬉しかったりする。だって。

「いいなぁ、しのさん。“ねずみ”だもんね。モーツァルトと一緒」

 

ふっふっふっ、いいだろう!

まあ、干支が一緒だからって、(だって、『干支』だよ!)

何がどうなるものでもないが、それはそれで何だか嬉しい。

 

「私なんて、モンテヴェルディなんだよぉ」…ぼやく、卯年の彼女。

 

あ、モンテヴェルディファンのみなさま、ごめんなさい!

彼女に悪気はないのです。「そうかぁ」と共感を示した我々も、

そんなつもりは毛頭なく。とはいえ、

「もっと、誰かいるんじゃない?」なんて、

あれこれスマホで検索してしまった、その行為は許されない?

 

そこは、寛大なお心で受け止めて頂くとして、

出ました、卯年の作曲家。

「グリーグやプロコフィエフも、卯年らしいよ」

「え? グリーグと一緒なの? よかった~~~っ」

「よかったねぇ」

 

はい。そうです。確信犯です。深謝。

 

 

“十二支”は、暦法(暦を作る基準)の一つ、

中国で考案されたもので、古く殷代に起源をもつ。

元々は、公転周期が約12年である木星の位置を、

12分割して測るために考案されたもの。12という数が、

一年の月数に当たることから暦に用いられるようになった…そうだ。

 

各文字の原意は定かでないとされるが、草木の芽生えや滅びといった、

「草木の成長における各相を象徴する」という説が挙げられていたりもする。

とにかく、当初は順序を表す一種の記号であって、動物とは関係なく、

今のように動物(十二生肖)の名前は割り当てられていなかった。ふむ。

 

その“干支”― なんとなく日本だけのものだと思っていたら、

いやいや。アジア圏から東欧まで、広く用いられているという。

干支の動物は国によって若干の相違があり、違っている部分が面白い。

 

例えば、

チベットやタイ、ベトナムで卯(兎)は「猫」、亥(猪)は「豚」、

ベトナムではさらに、丑(牛)が「水牛」で、未(羊)が「山羊」、

インドでは酉(鶏)は「ガルダ(インド神話の神鳥)」、

イランでは辰(龍)が「鯨」、アラビアでは辰は「ワニ」。

 

猫好きな相方ピアニストにとっては、

卯年=猫年であることの方が嬉しいかもしれない。

 

 

『干支別性格』―「信じるか信じないかは、あなた次第」

といったところだが、一般的に言われるその性格と、

それぞれの作曲家のイメージが重なる部分もあって、面白い。

 

「イメージが一致しない作曲家」もいて、

それはそれで、自分の持つイメージが正しいのか、

大体、そのイメージはどこから来て、どう作り上げたものなのか、

そんなことが、気になり始めたりもするし、

 

「イメージすら浮かばない作曲家」に至っては、

人物像どころか、曲もろくに聴いたことがないことに気付いたりもして、

その不勉強ぶりに、今更ながら少々焦ってみたりもする。

 

それやこれやで、

『作曲家=干支』談義は、

なかなかに楽しいものだった。

ついでに調べた『作曲家の星座』、

これも結構、面白かった。

 

バッハ=丑年,牡羊座、

モーツァルト=子年,水瓶座

ベートーヴェン=寅年,射手座、

ブラームス=巳年,牡牛座、

いかが? みなさんのイメージは? 

 

ちなみに、個人的趣味で紹介すると、

ドビュッシー=戌年,獅子座、

ラヴェル=亥年,うお座、

シベリウス=丑年,射手座

 

干支と星座が共に自身と同じだったのは、ジョン・ケージ(子年,乙女座)。

ううむ。煙たがらずに、ちゃんとケージを勉強してみるかなぁ。

 

 

2015年は、メモリアル・イヤーと言われた。

戦後70年、日韓国交正常化50年、

日航ジャンボ機墜落事故から30年、

阪神大震災、地下鉄サリン事件から20年。エトセトラ。

 

我が業界では、シベリウス生誕150年で賑わった。

グラズノフも、デュカスもニールセンも生誕150年だった。

スクリャービンは没後100年。ただ、その注目度は…。

 

2016年はやはり、サティだろうか。生誕150年。

ヒナステラ生誕100年、グラナドス&レーガー没後100年。

う~ん、どうだろう。盛り上がるかなぁ。

 

ヴァイオリン弾き的には、

クロイツェル生誕250年を推したい!

クロイツェルの《42 Études ou Caprices》 全曲演奏会とか。

聞きたくない?(笑) 

いや、弾きたくない?(大笑)

 

 

2015年、このコラム、多くの方に応援頂いた。

この場を借りて、

お読み下さった皆さまに、深く御礼申し上げます。

 

2016年、どんな年になるだろう。

『丙申』は、本質が露になり、成長し成熟する年、

秋の午後を照らす穏やかで美しい太陽のイメージなのだとか。

じっくりと。穏やかに。そして、果敢に。

よい年にしなくては。

 

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

さて、最後に、

作曲家の干支が、ちょっと気になるあなたへ、

せっかく調べたので―『干支と作曲家』、お届けします。

巷でよく見掛ける性格診断と共に、どうぞお楽しみください。

(作曲家のピックアップに偏りがありましたら、お許しください)

 

 

♡ 子年

知的好奇心が強い。そのため、興味があることにはじっとしておられず、落ち着きに欠けることがある。発想力が高く、企画力に長ける。目標には努力を惜しまず、用意周到、それを達成する強運も持ち合わせる。内面に強引な性格も持つが、無邪気で正直、柔軟性や協調性もあり、温厚でもあるので周囲には適応できる。几帳面で綺麗好き、細かいところに気付くデリケートさもある。

 

ハイドン、モーツァルト、ロッシーニ、J.シュトラウス(父)、グリンカ、

チャイコフスキー、リヒャルト=シュトラウス、ハルヴォルセン、

ファリャ、クルト・ワイル、コープランド、ケージ

 

♡ 丑年

責任感が強く、努力家。忍耐力があり、辛抱強く、根気がある。自己表現が得意ではなく、言葉数が少ないため内気な性格に見えるが、芯はしっかりしていて、信念があり、人情派の側面もあるので、周囲からは厚く信用される。一見のんびりとしているが、好き嫌いがはっきりしていて強情なところもあるので、頑固者・偏屈者と見られることもある。融通の効く自信家。

 

J.S.バッハ、D.スカルラッティ、ヘンデル、ルクレール、クヴァンツ、

A.ルビンシテイン、シャブリエ、ドヴォルザーク、ニールセン、デュカス、

グラズノフ、シベリウス、ロドリーゴ、ブリテン、ルトスワフスキ、

ブーレーズ、ベリオ

 

♡ 寅年

冒険心が旺盛、新しいことにひるまず立ち向かう積極性を持つ。義理人情に厚く、親分肌な気性だが、服従は苦手で、目上と事を争いがち。瞬発力、集中力に長け、豪胆で、進取の気性もあるが、強情で、短気なところもあり、環境の変化に弱く、些細なことで挫折する弱い面も持ち合わせる。情熱家で、一途。対人トラブルに注意は必要だが、奉仕の仕事では大成する。

 

G.ガブリエリ、ペルゴレージ、ベートーヴェン、ジョン・フィールド、

パガニーニ、オーベール、グノー、バッジーニ、マスネ、モシュコフスキ、

ヤナーチェク、スーザ、ノヴァーチェク、カリンニコフ、ブゾーニ、

サティ、マルティヌ、イベール、マルタン、ハチャトゥリアン

 

♡ 卯年

温厚で人を和ませる力があり、愛嬌もあって強引さがないので、人気がある。信頼され、上から引き立てられることも多いが、マイペースで、物事をやりっ放しにしてしまう傾向も。社交的で、賑やかな一面も持つが、小心な部分もあり、人知れず物思いに耽っていたりもする。野心はないが、遠大な計を巡らすことがある。社交的であるが故に、経済的苦労をすることがある。

 

モンテヴェルディ、オッフェンバック、スッペ、クララ・シューマン、

グリーグ、ショーソン、リャードフ、グラナドス、ベリエル、滝廉太郎、

レスピーギ、ブリッジ、プロコフィエフ

 

♡ 辰年

直感力・集中力に秀で、芸術家肌、専門的分野に優れた才能を持つ。行動力があり、常にポジティブで、小さなことには拘らない性格。プライドは高く、勝気で強情、命令されることを嫌い、負けず嫌いで、我儘な部分もあるので、人間関係でトラブルが起きることがある。感情的だが、その分、憐れみも深く、涙脆い一面も持つ。気まぐれを克服できれば、才能を活かせる。

 

ラッスス、ケルビーニ、ヴュータン、サラサーテ、

リムスキー=コルサコフ、オネゲル、グローフェ、ミヨー、

カバレフスキー、ヒナステラ、デュティユー、シュトックハウゼン

 

♡ 巳年

探究心に溢れ、何事にも捉われない自由な発想を持つ。貪欲なまでの向上心、困難に打ち勝つ精神力を持ち、辛抱強く勤勉。周囲からの信頼は厚いが、その用心深さが猜疑心に取って代わることもある。見栄を張るところがあり、信じるところには猛進してしまう傾向もある。嫉妬心も強いが、争いは好まない。一見、柔和にも見えるが、内面は剛毅である。

 

コレッリ、ムッファト、パッヘルベル、シューベルト、ドニゼッティ、

メンデルスゾーン、ボロディン、ブラームス、フォーレ、

レオンカヴァッロ、エルガー、シャミナード、ルーセル、エネスク、

バルトーク

 

♡ 午年

陽気で社交的、フレンドリーな性格なので、誰とでもすぐ仲良くなれる。派手好きで賑やかなことを好む。生命力が強く、積極的に物事に挑戦するが、気が多く、情熱が過ぎることも。一方で根気が足りない部分もある。整然性や秩序を求めるが、大雑把で細かいことは苦手。負けず嫌いで、短気だが、バイタリティーに溢れ、芸術・芸能関係に適している。

 

ヴィヴァルディ、ヴェラチーニ、グルック、ウェーバー、ショパン、

シューマン、フランク、プッチーニ、レハール、シマノフスキ、コダーイ、

ストラヴィンスキー、トゥリーナ、ショスタコーヴィチ、武満徹

 

♡ 未年

穏やかな性格で気立てよく、情に厚く、人間関係は良好。思慮深く、慎重、芯も強く、正直で曲がったことを好まない。地道な忍耐力もあり、研究心も旺盛で、努力家。内気で臆病な部分もあるので、回り道が多く、頼みごとが断れず苦労することもある。芸術面にも秀でるが、消極的な性格から才能が埋もれがち。よき理解者の存在が才能開花・運気の上昇のきっかけとなることがある。

 

フレスコバルディ、リスト、ラロ、サン=サーンス、ヴィエニャフスキ、

N.ルビンシテイン、ウェーベルン、ヴァレーズ、ヒンデミット、オルフ

 

♡ 申年

聡明で、才能豊か、手先も器用。気配りができ、話術も巧みで、明朗活発。機敏で、機転も利き、統率力があるため、早くから目立つ存在となる。くよくよせず、楽観的で合理的。常に前向きで、進取の気性があるが、過ぎると、軽率で自信過剰なイメージを持たれることもある。目先に囚われ、持久性に乏しく、飽きっぽい一面も持つ。

 

リュリ、クープラン、タルティーニ、スメタナ、ブルックナー、ドリーブ、

ヴォルフ、アルベニス、マーラー、スクリャービン、セヴラック、

ヴォーン=ウィリアムズ、アルヴェーン、ルロイ・アンダーソン、メシアン

 

♡ 酉年

愛嬌があり、人当たりよく、交際上手。色彩感覚に優れ、お洒落。几帳面で、用意周到。仕事熱心だが、せっかちな面があり、あれもこれもと忙しくなってしまうことがある。現実的で、効率性を重んじ、計画的に物事を進めることができる。ただ、飽きっぽく、長続きしない一面も。大望を強く抱くことがあるが、失敗することが多い。

 

パレストリーナ、シュッツ、ジェミニアーニ、テレマン、ベッリーニ、

ワーグナー、ヴェルディ、J.シュトラウス(子)、バラキレフ、レーガー、

ラフマニノフ、ベルク、コルンゴルト

 

♡ 戌年

正義感が強く、義理堅い。陰日向なく、真面目で正直、忠誠心も強い。人懐っこく、一度信じた相手は裏切らないが、強情で、融通の利かない部分もある。周囲からの引き立ても多いが、骨折り損も多い。伝えるのが下手で、くよくよする一面も持つ。規律を重んじ、責任感も強いので、信用は厚く、組織の中では重宝される。

 

トレッリ、フンメル、ビゼー、マックス・ブルッフ、ドビュッシー、

ディーリアス、ホルスト、シェーンベルク、アイヴズ、山田耕筰、

ガーシュイン、バーバー

 

♡ 亥年

飾り気なく、率直で、さっぱりとした気性。包容力があり剛毅、積極果断。天真爛漫で、情に脆く、思いやりがあり、信義にも厚い。周囲を引っ張る力があるが、猪突猛進な部分もあり、人に迷惑を掛けることも。自分に自信があり、思慮深いが、思い込みが激しい部分もある。思うところを現実に適用することが不得手な一面も持つ。

 

パーセル、アルビノーニ、ラモー、ロカテッリ、ツェルニー、

ベルリオーズ、ムソルグスキー、ダンディ、マスカーニ、ラヴェル、

ケテルビー、クライスラー、ヴィラ=ロボス、プーランク、リゲティ

Erik Satie: "Sonnerie pour reveiller le bon gros Rois des Singes."

(いつも片目を開けて眠る見事に太った)猿の王様を目覚めさせるためのファンファーレ

© 2014 by アッコルド出版

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