尾池のブルーマンデー憂さ晴らし

ヴァイオリニスト 尾池亜美

第65回 真面目さに向き合う

こんにちは!憂さ晴らしのお時間です。
 
少し前になるのですが、セルビア大使館にて
チャリティーコンサートを聞いてきました。
 
出演は竹下史子氏を始めとする
セルビアに所以のある演奏家。
竹下氏は
以前セルビアでリサイタルをさせていただいた時に
チャールダシュで共演して、以来尊敬し続けている
アコーディオニスト。
 
単身でセルビアへ渡り、
その難しく伝統的な技術や曲を習得していかれたのです。
演奏されるときの彼女は
憑依的なまでに音楽に入り込んでおり、
いかに身体に染み込んでいるかを感じます。
またお会いできて嬉しかった。
そしてやはり東欧の響きは素晴らしかったし、
違う言語に聞こえない音楽でした。
 
私にとって一番「違い」を感じる音楽言語は
やっぱりドイツ語かな、と思います。
日本語とドイツ語の違いというのもかけ離れているし、
民族も歴史もぜんぜん違う。
ロシア語だって全然違うけど、
まだなんか「土臭さ」というか、
五音階的な旋律や哀愁があるし、
東欧やハンガリーなんかは先祖が近いとも言うし、
フィンランドもしかり。
フランスに至っては
その「曖昧さ」や「妄想力」が近いとも思うけど、
ドイツだけは共通点が...。
強いて言えばその「真面目さ」かしら。
 
これまで私は「真面目さ」というところ以外で、
音楽をしてきていた気がします。
「楽しさ」「情熱」そんな感じ。真剣さもあった。
でも真面目な面はいままで無かったといえるかな(笑)。
 
でもいま、その真面目さに向き合いたいと思ってる。
ドイツとオーストリアで生まれた音楽を、
自分の音楽用語の感覚にインプットしたいです。
ドイツ語もむずかしいけど、
分かる言葉から喋ってみると、
あんがい発音なんかはシンプルで、
しっくり来たりもする。
 
私事なのですが、祖母が80歳を越えて、
ますますその真面目さが出てきているように感じます
彼女が一番好きな作曲家が、ベートーヴェン。
聞くときは眉間にしわを寄せ、
目を閉じ(またはどこか一点を凝視)聞き入ります。
身動きしないんだけど、
心はどこかへと方向性をもって進んでいく感じ。
 
そう、
ドイツ音楽はかならず「方向性」がある気がします。
いろんな方向や質感があれど、
何かへと向かう力がどの作品、
作曲家にもあるな、と。
 
きちんと実体があって、
その実体同士が影響し合っているのも特徴なのかな。
ドイツ音楽において伝統を受け継いでいない音楽家、
作家はいないですよね。
ここはお気に入りの喫茶店なのですが、
木彫のベートーヴェンの顔が客席を見下ろしています。
もちろん顔は怖いんだけど、
それでもやっぱりひとりの神様のように、
みんなを見守っている気もするか。
 
「君たち。しっかりと生きているか。
ちゃんと語り合っているか。」
と語りかけてくるようです。
 
もうだんだん暑さにも負けてきて、
今日は何だか空想的なことばかりです。
でも身体は冷やすだけじゃなくて発汗が大事です。
どうぞご自愛下さいね。
よい一週間を!

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