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ヴィオリスト矢谷明子さん

2013年クレモナのモンドムジカと共にこの秋注目を集めたのは、ストラディヴァリ財団ヴァイオリン美術館MdV(Museo di Violino)が9月14日に正式オープンした事です。

 

昨年から少しずつプレ・オープン&コンサートが行われていたこのMdVは、クレモナ出身の大富豪G.アルヴェーディ氏によって創設され、クレモナが世界に誇るストラディヴァリ、アマティ、グァルネリの楽器展示だけでなく、この3大巨匠の後、今日まで続く名工達の弦楽器や3年に一度クレモナで開催される世界最高峰の弦楽器製作コンクールで知られる「A.ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクール“トリエンナーレ”」の歴代優勝楽器が一堂に展示されています。

 

ストラディヴァリが実際に使っていた貴重な工具類なども大切に保管されており、館内係員に頼むと引き出しを開け見せてもらえます。予約をすれば日本人係員の方が丁寧な説明と共に館内を案内してくれるので、私達日本人にとっても大変嬉しい配慮があります。

 

また事前予約をする事で展示されているストラディヴァリの音色を目の前で聴く事ができる事もこのMdVの大きな特徴です。

 

美術館内部には一般的な弦楽器工房も再現され、イタリア各地のヴァイオリン発祥の歴史から楽器製作の過程を大画面パネルやタッチパネルを使って楽しく見ていく事ができるので、小さな子供や弦楽器に興味のない方でも一見の価値があります。

 

このMdVでもう一つ話題となったのは、クレモナ出身の建築士G.パル氏と世界的な音響技師、豊田泰久氏によって建設された室内楽専用コンサートホールです。

 

美術館に併設された創設者の名前を冠したこのG.アルヴェーディコンサートホールは、客席数464席と室内楽を堪能するには最適な規模で、自然木材をたっぷりと使った優雅で贅沢な作りが印象的です。

 

昨年の9月に既に完成していた為、最初に使われたのが2012年、「第13回A.ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクール“トリエンナーレ”」の音響審査でした。

 

私も審査員の一人として連日ホールで楽器の音を審査し、実際に舞台で50台以上の楽器を演奏してみましたが、その音響の素晴らしさは言うまでもなく、全体に滑らかな曲線を描いたホール内部はとても美しく、円形舞台を客席が囲む様に設置され、演奏者と聴衆が一体となって音楽を味わえる素晴らしいコンサートホールでした。

 

また、美術館内部に展示されているトリエンナーレ歴代優勝楽器の録音が行われたのもこのホールです。普段滅多に演奏されない展示楽器に触れ、私も9台あるヴィオラのうち5台のヴィオラを演奏、録音し美術館オープンのお手伝いをさせていただきました。これらの録音は美術館受付にて渡される自動音声ガイドを使って展示楽器を見ながらこのコンサートホールの響きと共にその音色を楽しむことが出来ます。

 

モンド・ムジカ期間中はこのオープニングに合わせ弦楽器の大コレクションで世界に知られ、滅多に見る事の出来ない台湾、奇美財団のイタリア弦楽器コレクションと世界中から集めたストラディヴァリ等の名器を奏でる第1回A.ストラディヴァリ音楽祭が同時に開催され、この他に類を見ない貴重なヴァイオリン美術館はいま世界中から注目を集めています。

 

ストラディヴァリ財団 ヴァイオリン美術館

Museo del Violino

www.museodelviolino.org/‎

弦楽器製作のメッカ、イタリア・クレモナにストラディヴァリ財団ヴァイオリン美術館MdV(Museo di Violino)がオープンした。

 

イタリア・クレモナ本拠地にヨーロッパで活躍しているヴィオラ奏者である矢谷明子さんにレポートしていただきました。

 

矢谷さんは2012年第13回A・ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクール”トリエンナーレ”にて、日本人音楽家として初の審査員を務めています。

ストラディヴァリ財団

ヴァイオリン美術館MdVがオープン

ストラディヴァリ財団ヴァイオリン美術館

ストラディヴァリ財団ヴァイオリン美術館 新しいホールでの録音風景

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ストラディヴァリの街

クレモナ ヴァイオリン博物館

© 2014 by アッコルド出版

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