今日のグルーヴ〈477〉
弟子が自分から離れて他者へ行くことへの嫉妬という問題は、どの分野でもあるようだ。
音楽の世界でもたくさん見てきた。現在は、そのようなことは閉鎖的なことであるということで、嫌悪する著名な先生も増え、開放的な方も多くなり、かつてほどではないが、それでも根絶されたわけではない。
弟子が離れて行くことのさびしさ、他者に就いていくことへの嫉妬、傷ついた自尊心というのは、理解できないことはない。可愛さ余って憎さ百倍、ということもあるかもしれない。
弟子が、自らの判断で、師匠の下を去ると決断したならば、それは、指導者として、本当は最高の成功なのではないだろうか。
それが積極的な意味であるならば、なおさら成功だが、たとえ相性が良くない等の積極的でない意味であっても、決断させたのは成功と思いたい。
教師の役目の最も大きなものは、逆説的であるが、自分を必要とされないように生徒を育てることなのではないか。
生徒がいつまでも、ある師匠の弟子である、ということを冠にしている存在だとしたら、それは師匠としては、失敗なのではないか。
新たなものを新たな世界で学びたい、と生徒に思わせたら大成功である。
それ以降は、先生と生徒という関係から、ひとりの人間同士の付き合いになっていく。こうなることが理想である。
尤も、巣立って行く人は、先生の存在関係なく、黙っててもどんどん巣立って行くくらいの強烈な個性の持ち主なわけで、周りがとやかく言う話でもないかもしれない。いずれにしても先生は温かい目で見てあげる、というのが美しい。