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今日のグルーヴ〈468〉

今、この楽曲が聴きたい、と思ったときに即座に聴くことができるようになったのは、あるいは音楽は聴きたいときに聴く、という当たり前のことが可能になったのは、スマホのおかげである。


スマホによって、聴きたい曲を即座に検索して聴くことできるようになった。そして、ここからが重要なのであるが、我々は繰り返し機能を使うことによって、その後、何もせずに同じ曲を繰り返して何度でも聴くことができるようになった。


繰り返し楽曲を聴く癖がある人にとって、スマホほど便利なものはいまのところ他に見当たらない。


コンサートには臨場感という最大の魅力があるが、残念なことに、何度も同じ楽曲を聴くことができない。


アンコールというのは、かつて気に入った楽曲の再演であった。そのことが示すように、聴衆は気に入った曲を本当は繰り返し聴きたがっているはずである。


スマホとCloud音楽の登場によって、我々は隙間時間に繰り返し気に入った楽曲を聴くことができるようになった。


その時々に填まる楽曲があり、それを何度も繰り返し聴く癖がある私はまさにこの機能を満喫している。


何故、繰り返し聴きたいのかというと、そもそも、繰り返して聴かないと、音楽を味わいきれないからである。一回だけ聴くのは、素通りするようなもので、あれだけたくさんの情報量がある音楽を味わいきることは無理である。


コンサートで、真に楽曲を味わい尽くしているのは、演奏している本人のみである。聴衆は、下手をすると置いてけぼりになりかねない。


演奏家は、何百回、何千回と楽曲を練習し、味わい尽くしているのである。聴衆が、たった一回だけで味わい尽くすのはそもそもあり得ない。


本当にその楽曲を味わい尽くすためには、自ら演奏するしかないと思うのだが、それは無理である。ゆえに、少なくとも一度に何回も聴くという行為に自然となっていくのである。


そんな小難しいことでなく、普通に聴けば良いではないか、という意見もあるに違いないが、私は、それでは勿体ないと思う。何度も聴くことによって、スルメを味わい尽くすがごとく、楽曲を味わうのである。


それだけの価値があるからこそ、クラシックとして世に残り続けているのだと思う。

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