今日のグルーヴ〈455〉
人間万事塞翁が馬という諺の意味は、人生は何が幸いするか、あるいは何が幸いしないか、予測し難いから、一喜一憂すべきでない、ということであるが、半世紀以上生きてくると、確かにその通りであるとしか思えない。
調子に乗っていると、すぐに痛い目に遭う。反対に調子が悪いときでも、じっと我慢していれば、好転することもある。
人生は、それがほとんどなのではないか。一回で上手く行くことなどまずない。尤も、何をやっても一回で上手くいったとしたら、逆につまらないと思うかもしれない。なかなか上手く行かないからこそ、さらなるやる気が起きるのではないか。
哲学者の土屋賢二先生は、ジャズ・ピアニストとして、素晴らしい演奏をされてきたが、トランペットにも挑戦されてきている。しかし、トランペットに関しては、挑戦して10連敗、と言われていた。
これぞ土屋先生の真骨頂である。一回や二回で諦めるようではそもそもやらない方がいいのかもしれない。10連敗しても、世界的なトランペット奏者のエリック宮城さんと共演されたりするし、土屋モデルのトランペットが献呈されたりするのである。
土屋先生によれば、人生に無駄なことは何一つもないそうである。無駄だと思ってもそれは無駄ではないらしい。激しく共感するものである。
ぼーっとしていると、無駄な時間を過ごしたと思いがちであるが、このぼーっと、というのは、実は無念無想であったりする。その瞬間、思ってもみなかった考えが浮かんだりすることもある。風呂やトイレでは無念無想になりやすい。
実は一見無駄と思えるようなこと、取るに足らないような雑用と思えるようなことに真理があったりする。
ただ、これが分かっても、それを継続するのは自分との闘いになる。