今日のグルーブ〈431〉

先日、久しぶりに家族でファミレスに行ったとき、大きなテーブル席に若い男6人衆がいたのであるが、全員、スマホをいじっていて、一切会話がなかった。さすがに相当に異様な光景であった。


かつては、テレビにかじり付く人がいたが、多くの人がテレビ、地上波からスマホやタブレットに移行したのである。テレビはあくまでも受け身であるのに対し、スマホやタブレットは双方向であるから、興味の度合いとしては、やはり地上波を上回るだろう。


地上波テレビは、インターネットTVによってその欠点を多少でも補おうとしている。インターネットの世界は、規制のあるテレビに比べて、拡張性や発展性や自由性が遙かに高いだけに、地上波の形勢はいかにも不利である。


かつて、映画全盛だった時代、ラジオ全盛だった時代が、あっという間にテレビに取って代わられ、テレビの栄華は長く続いた。テレビの地位は絶対に揺らがないと思われた。インターネットが登場した時も、テレビとは無関係だと思っていたが、それは思慮不足だった。


ところで民放テレビは、元々は新聞を母体としたメディアだった。私が小学生の頃、新聞社をクラスで見学したことがあった。その新聞社の紹介で、テレビの放送局も見学することができた。その雰囲気からして、新聞社がテレビ局に対して優位であることは、小学生でもなんとなく察することができた。


テレビは、新聞社から出向した人が運営していたのである。ゆえに当初は、テレビ局に回されることは、新聞を目的として入社した人間にとっては、あまり好ましいことではなかったらしい。しかしその後、テレビ全盛の時代となり、立場は逆転した。しかし、そういった話も、今は昔。


テレビも新聞も絶対に揺らがない媒体だと思っていたが、世の中は何が起こるか分からない。


例えば、LPレコードは、絶対のものだと思っていた。雑音のないCDの登場は、驚愕であった。CDこそ終着点かと思いきや、とんでもなかった。今やクラウド配信やネットに取って代わられている。若者はCDを買わない。


紙媒体における印刷の技術革新も衝撃だった。しかし、そもそも紙に印刷という行為も絶対的なものではなくなっているのも周知の事実である。


自動車も、自動運転や衝突しない車の開発がなされているが、そもそも車がなくなること自体をも想定して、様々な可能性を模索しているという話も昔聞いたことがある。


技術革新や科学やテクノロジーの進歩によって何がどう変化するか、まるで分からない。


翻って、人間と人間とのコミュニケーションは、技術革新に影響を受けるのだろうか。本当は技術革新とは関係の無い世界のはずである。


しかし、目の前の人と会話するのに、“通訳”“翻訳”というテクノロジーが必要になるのだろうか。もしかすると、あった方が良いという場合もあるかもしれない。


先日、驚愕したことであるが、一人の人の話を私を含めて複数の人間が聞き、その内容をあとで聞いた人間同士で確認したところ、私の理解とはまったく異なる理解の仕方をしている人がたくさんいることに、びっくりしたのである。


そういうことは以前にもあったし、人間同士起こりやすいことである。しかし、理解の仕方がばらばらであったり、まったく正反対に理解していることもあり得ることに改めてショックを受けた。


先入観を持って聞くか、ピュアな心で聞くかで、全く理解の仕方が異なってくるのである。


隣の人と会話をするのに、誤解の無いよう、文字を残して、会話するということもあり得るかもしれない。ゆえに“通訳”“翻訳”があった方が、安全という場合が多々あることは容易に想像できる。


しかし、そもそもお互い解り合えない者同士、無駄な会話をしたくないのかもしれない。いらぬ誤解や、いざこざを招きたくない、という気持ちも分かる。


しかし、それでも、若者6人衆は、一度スマホをテーブルに置くべきである。その点、女性は、いくらでも会話ができる。誤解であろうが、解り合えない話であろうと、実りのない話であろうと、とにかく日常性の会話をすることができるのである。


男は、日常性に満ちた会話ができない。興味が無いか、ついて行けないか、である。


それは、日本の近代の文学にも、反映されている。例えば、明治・大正の文豪の作品は、例えば、人間如何に生きるべきか、といった肩に力の入った作品が多いが、昭和に入って、谷崎潤一郎のような文豪の、人間の内面や日常性を描いたりする作品が現われ、女性の解放の時代を予見しているかのような作品が登場してくるのである。なんのデータも無いが、「細雪」を愛読しているのは、圧倒的に女性の方が多いのではないか。


話があらぬ方向へ逸れてしまったが、1970年の大阪万博のテーマ、人類の進歩と調和、の言葉の意義がいまになってしみじみと理解できるような気がする。




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