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今日のグルーヴ〈406〉

人間が霊長類の中で、最も優秀たる所以は、ユーモアを生み出すところにある。


笑いやユーモアを生み出す主なものに、ボケ、ツッコミ、イジリ、自虐ネタ、下ネタ、オチ等がある。


ただ、普段の生活の中で、これらを駆使するのは、なかなか難しい。

特に、下ネタは、そもそもあまり好きではないし、飲み会で酔っ払った時くらいでないと、上手く行かない。


心地よい酔いは、頭の中の回路、シナプスの結合もスムーズにする。全く相通じなかった二つや三つの概念が結びつき、予期せぬアイディアや新たな概念が生まれる。


これは、音楽で言えば、即興、アドリブというものに相当するだろう。


戦後間もない頃、ジャズのアドリブで行き詰まったりしたときや笑いのグルーヴに行き詰まったときに、麻薬が使われたりされたことがあったが、これなども、素面で出てこないアイディアを生み出すために、新たな回路を作ろうとしたのだろう。


素面でいるとき、人間は常識に縛られる。常識に従う人間という生き物は、普段無理して生きているとは言えないだろうか。普通の人間は、この状態で卓越したアドリブ、ボケ、ツッコミ、イジリを発揮することはなかなかできない。


ところが普通の人間でも、酒の飲める人は、酒を飲むと、常識が多少麻痺するから、生まれたときのようなピュアな心に近くなる。あるいは瞑想やヨガなど、その人独自のピュアになる方法でピュアになれば、実は、人間の心はこちらが無理のない本当の心なのではないか。


ピュアになると、何故か次から次へと常識外の概念が自然と浮かび、アドリブ、ボケ、ツッコミ、イジリ、自虐ネタ、オチが次から次へと展開できるようになる。立川談志が言われたところのイリュージョンも、常識を越えたところにあるのだろう。


そもそも人間は生まれたとき、誰でもそういう心、つまりピュア、無念無想だったはずである。それが、世の中の複雑さゆえに、だんだんとそれが失われていくのである。


我々は、誰でも嫌でも、生まれたときから、様々な知識や体験を積んでいる。放っておいてもそうなる。しかしそれをそのままにしておいても何も新しい概念を生み出さない。


考えるのが好きな人は、ひたすら考えに考え、洞察に洞察を重ねて、哲学者になったりして新たなものを生み出すが、これがその場で考えてその場で表現しなければならないとき、つまり、アドリブであるが、これをするには、考えたり思索している時間はないのである。


では、アドリブができる人の頭の中はどうなっているのだろうか。アドリブができないと思っている人には驚異である。


しかし、我々は誰もが、実はアドリブを無意識にしている、とは言えないだろうか。


例えば、会話。ふだん会話するときに、我々は考えに考え、思索に思索を重ねて会話をするだろうか。たいていは、相手の言葉に即座に反応している。これは、まさにアドリブとは言えないだろうか。


我々は、過去の知識、経験という大海のような深層心理、潜在意識に莫大な貯金があるからこそ、会話をすることができるのである。ただ、そのときに、心がピュアでなければ、それらがスムーズに出てこないのである。


天才が、どのような頭の構造になっているのか分からないが、おそらくピュアな心なのではないか。天才は心がピュアであることにかけては天才的なのではないか。


深層心理、潜在意識から、即座に新しいものを生み、あまつさえ、モーツァルトのように宇宙の叡智を伝える電線の役目も受け持ってしまう。


そこで達人達は、いろいろ考えて、心をピュアにする方法、つまり無心になる方法を考え出すのであるが、いろいろ考えるがために、皮肉にも無心になれないという矛盾をおかすことになる。


無心になるためには無心にならなければならないのである。


ここで哲学者は天才になることを諦め、ひたすら洞察することに楽しみを求める。


しかし、以上のことによって、誰もが天才になることができる、とはいえないだろうか。


実際、誰でも、一瞬、自分は天才ではないだろうか、と思う瞬間がある。それは錯覚である、という意見もあるが、そのような場合もあるが、そうでない場合もある、と思いたい。


例えば、飲み会の会話は、ピュアな頭になった人間同士、つまり天才同士の会話であるから、これほど実りのある会議はないだろう。


ただ、残念なのは、酒はピュアな心を作ると同時に記憶力もピュアにさせる。


翌朝、確かに昨晩、有意義な話をした、ということは覚えているのだが、内容は覚えていないことがほとんどである。


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