今日のグルーヴ〈404〉
将棋の世界では、実力だけがものを言う。レジェンドと言われるくらいのベテランでも、中学生に負ければ、「負けました」と頭を下げる。
凄い世界であるが、これは、考えてみれば、当然のことだろう。
勝ち負けがはっきりしているだけに、逃げ隠れできない。厳しい世界であるが、納得できる世界である。
しかし、音楽の世界では、はっきりとした勝ち負けの世界ではないだけに、「参りました」とはなかなか言わない。
ベテランが若手に対して、参りました、とは絶対に言わない。ベテランにはベテランの味がある。音楽はテクニックだけではない、音楽性というものがある…というのが、だいたいの理論武装である。
勿論そうであるが、その言葉が空しいと思うこともないではない。
まだ頑張りたければ、もし、自分を脅かすような人が出てきたら、潰そうとするだろう。
ベテランによる若手への公開レッスンといったものをずいぶん見た。自分を脅かさない程度の才能には、優しく対応する。そもそもこういうものを行なうことじたいの矛盾を常々感じていたが、自分を脅かすような若手だったとしたら、育てようとは絶対に思わなく、潰しにかかるだろう。実際、そうとしか思えないような場面が多々あった。
これが、レジェンドVs.若手だったりすれば、お互いに直接的に脅かす存在とは、世間では見ないから、両立は可能だろう。
実は、世の中は、こういった人間関係が、ほとんどの実相に違いない。それを覆すのは、周りの人間の素直な感想の表現である。