今日のグルーヴ〈366〉
Apple Music他のクラウド ミュージックでは、数千万曲の楽曲を聴くことができるそうだが、これは、個人にとっては、ほぼ無限である。
とても、全てを聴くことはできないが、クラウドの凄いのは、いつどこにいても、聴きたいと思った瞬間に聴きたいものを聴くことができるということである。
かつて、LPレコードを買っていた時代、聴きたい音楽があった場合、休みの日に一日かけて、レコード店を何軒か廻って、挙げ句の果てに見つからなかったということがあった。
話は逸れるが、書店で本を買う人が、著しく減少しているという報道があった。紙媒体をもワン・クリックで買う人が増えたのである。
それは、そうだろう。書店に行っても、読みたい本が必ずあるとは限らないのであるから。読みたい本を作り出す、という作業はできるが。
話を戻すが、CDの時代になると、情報が豊かになり、見つからないということは減少した。しかし、見つかったのはいいが、他にも聴きたいCDが見つかり、お小遣いの事情で、どちらを買うべきか迷いに迷うということも多々あった。
しかし、クラウドでは、そのような迷いは必要としなくなった。迷うどころか、どんどん知らない曲まで派生させて聴かせてくれる。
苦労して集めたLPレコードは、そもそも扱いが面倒で、慎重にも慎重を期して、レコードを出し入れした。ちょっとでも傷をつけたら、ずっと尾を引いた。CDになって、そのような儀式はなくなったが、だんだん横着になり、CDのケースからの出し入れすら面倒になった。
音楽を聴くということは、音楽の流れている時間だけでなく、その前後の時間までも、束縛されるということである。
音楽を聴くということは、鑑賞という言葉で表現されるほどに、覚悟のいることだったのである。
ところが、クラウドの便利さを体験した瞬間、今までの人生はなんだったのか、となる。
いずれ、全ての音楽は、クラウド化されるだろう。これこそ、言わば人類の共有財産と言えるのではないか。