今日のグルーヴ〈352〉
本田美奈子さんは、もし健在であったならば、不世出のハイ・ソプラノ歌手としての活動を、特にクラシカル・クロスオーヴァーの世界で展開していかれたのではないだろうか。
ただ、本田さんは、ポップス時代からミュージカル、そしてクラシカルクロスオーヴァーへと歌い続けると同時に、たくさんの録音を残された。
彼女の歌が、変遷していくのを辿ると、その劇的さに驚愕する。それは、彼女自身のオリジナルのレパートリーだけでなく、様々なスタンダードな作品をも彼女自身の大切なレパートリーにしていく様そのものである。
あれだけ、美しい高い声が出て、確実な音程で歌いこなせれば、とにかく名曲はなんでも歌いたくなるのは想像に難くない。しかも選曲のセンスも素晴らしい。
彼女のクラシカルクロスオーヴァーは、『JUNTION』『AVEMARIA-アヴェ・マリア』『時-とき』で堪能することができる。
『JUNTION』には、驚異のロングトーンを歌っている「つばさ」が収録されている。
「アヴェ・マリア」といってもシューベルトやグノーではない。カッチーニである。
「誰も寝てはならぬ」で は彼女の驚異のハイ・トーンを堪能することができる。
彼女の歌は、ジャンルを越えた歌、あるいはクラシックの一つの方向性を暗示していたのではないか、と思えてならない。