今日のグルーヴ〈338〉

人を説得することはできない。何故なら、私も説得されたくないからである。

人を説得することは傲慢で驕り高ぶったことである。


例えば、俳句に始まる感銘を受ける文学の中で、共通しているのは素朴な写実、描写である。

作者の感情や考えをことさら著わさなくても、作者の気持ちは十分伝わる。

著わしてしまうと、それはもう胸焼けがするのである。


言葉のチョイス。これは人々に共感を持ってもらうために、書き手が心血を注ぐところであるが、難しい言葉を使っても、あるいはありふれた言葉を使っても、共感を持ってもらうことは困難である。


ゆえに、先人達は、文章を削ることイコール名文という思い込みで文章を書いたのであるが、本当の名人はともかく、一般の人がそれをやると、結局、何も書かない方がまし、ということになりかねない。


素朴な描写、という考え方を他の芸術に応用すると、つまり、音楽に応用すると、それも文学と同じく達人ならばともかく、演奏しない方がよかった、ということになりかねない。


ゆえに、人を説得したい時は、説得してはいけないのであると同時に、説得していないふりをしても見抜かれるのである。


人は説得されるのではなく、シンパシーを感ずる、もしくはオルグされるのである。

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