今日のグルーヴ〈335〉
世の中には、様々な製品が発売され、進化しているが、最初で最後のような、最初から完成されたものというものが多々あるのではないか。
例えば、ヴァイオリンの弓。モダンの形になったのは、トルテやペカットの時代だが、それ以降、それらを上回る弓を見つけることは至難の業である。
日本ではシャンプーは目まぐるしく変化するが、一方で長く続くものもある。それらは最初で最後のような完成されたものだからなのではないか。
例えば、私にとっては、森永ミルクキャラメルは、最初で最後のキャラメルである。このキャラメルの登場は、1913年である。すでに一世紀を超しているのである。にも関わらず現在に至るまでパッケージデザインも、そしておそらく味も、ほぼずっと維持しているのである。
板チョコの定番、明治のミルクチョコレートの誕生は1926年。値段は私が子供の頃から100円である。その当時は、とても高価で滅多に買えなかった。今は見かけないが、ふた回りくらい小ぶりの板チョコを買ったものだ。いまだに100円前後というのはすごい。
ビスコ。江崎グリコが1933年に発売。子供のお菓子と思っている人がいるが、幾つになっても私には最高のサンドビスケットである。
サクマ式ドロップスに至っては1908年、明治の時代からである。サクマ式ドロップスと言えば『火垂るの墓』である。この作品のストーリーは知っているのだが、どういうわけか、アニメや実写映画にのどちらも、まともに全部を通して観たことがない。どうしても見ることができない。
今では当たり前のように使われているティッシュ・ペーパーであるが、私が幼少の頃、今の箱に入ったティッシュ・ペーパーはなかった。
あったのは、ちり紙である。小学生の時に、扁桃腺の手術をしたのだが、その時に、ちり紙を半分に折ってたくさん用意してください、と病院から言われたので、母が、時間をかけてちり紙を折っていたから、私が小学生の頃には、ティッシュ・ペーバーは一般的には普及していなかったように思う。
その後、ティッシュ・ペーバーが一般に普及したときは驚愕だった。ハンカチなのではないか、と思うくらいなめらかな肌触りだった。これは驚異的だった。
残念ながら、オイル・ショック以降一般的に出回っているティッシュ・ペーバーの質は、最盛期には戻っていないと私には思える。