今日のグルーヴ〈254〉
かつてイタリアの世界的なコントラバス・クァルテットの『オクトバス4』のメンバーに話を聞いたときのことだ。
彼らの言によれば、イタリアのコントラバス奏者の多くは、ギターやエレキ・ギターから始めて、その後コントラバスに転向する人がほとんどらしい。最初からコントラバスを弾くのは難しい、とのことだった。
言われてみれば納得する。ヴァイオリンやヴィオラやチェロに比べてポジション移動自体が超絶的であるし、子供の頃から弾くわけにもいかない。ある程度、大きくなってから演奏するのであるが、それまでに音楽の基礎的な勉強をしてなかったら間に合わないだろう。
オクトバス4は、勿論超絶技巧が素晴らしいのであるが、そもそもアンサンブル、ハーモニー、リズム感が、つまり、基本中の基本が素晴らしく、非の打ち所が無いような演奏をしていた。
そして一番大切なところだが、彼らは完全に音楽を楽しみ、聴衆にもその楽しさを完璧に伝えていた。それは、今思えば、音程やリズムといった話ではなく、言うまでもなくグルーヴ感そのものだった。
それまで、卓越したコントラバスのアンサンブルを聴いたことがなかったので、最初に聴いたときは本当にびっくりしたものだ。
昔の話だが、コントラバスの演奏で音程が良かったら、それだけで感動したものだ。
しかし、オクトバス4は、完全に先の先を行っていた。あらゆるジャンルの音楽を演奏しアレンジし、そのグルーヴ感で聴衆を虜にした。
おそらく彼らはギターやエレキ・ギターを弾いている段階で、グルーヴ感を身につけたのではないだろうか。彼らのグルーヴは、ロックやポップスで身につけたものであるに違いない。
彼らの本業はオーケストラのコントラバスの首席奏者であったり、教授であったりするから、彼らのようなコントラバス奏者がオーケストラの土台を築いてくれたら、どんなに演奏がグルーヴするだろう。
ロックのグルーヴ感こそ、正に今日本のクラシックの世界で必要とされているものなのではないかと私は思えてならない。その意味でクロス・オーヴァーなのである。
今日もグルーヴィーな一日を!