今日のグルーヴ〈247〉
以前、玉木宏樹先生と、革命的音階練習を作ったときのことだが、シューマンの名言“知性は指を動かすが、単なる肉体練習で指は動かない”を理念としていたのである。
何が革命的なのかと言ったら、音階を長調、短調の二種類だけでなく、旋法(モード)にまで拡げたことが、革命的の一つだった。
我々のほとんどは、長調と短調しか習ってこなかったし、音階とはそういうものだ、と刷り込まれてきたから、そもそも他に音階があるということ自体、何のことだか分からない、という人も多い。私がそうだった。
ごくごく簡単に言うと、
ピアノの白鍵のみを使い、
ドから始まる音階は、誰もが知っている長調の音階である。
旋法として言えば、イオニア旋法である。
次にピアノの白鍵のレから始まる音階がドリア旋法、
ミから始まる音階がフリギア旋法、
ファから始まる音階がリディア旋法、
ソから始まる音階がミクソリディア旋法、
ラから始まる音階が、誰もが知っている短調で、
旋法的に言うとエオリア旋法、
シから始まる音階がロクリア旋法
となる。
既存の楽曲では、様々な旋法が使われているのである。ならば、その旋法も音階練習として練習するべきである。
例えば、リムスキー=コルサコフの『シェへラザード』のあの有名なヴァイオリン・ソロはラから始まるドリア旋法である。
チャイコフスキーの『弦楽セレナード』の第3楽章のメロディはミから始まるドリア旋法である。『君が代』もドリア旋法であると言える。
また、既存の音階練習には必ず旋律的短音階の練習があるが、これは、機能和声上で生じるものであり、旋法的には関係ない。(続く)