今日のグルーヴ〈229〉
グルーヴを生み出すものにはいろいろなものがある、ということは何度も書いてきた。グルーヴをテクニックと考えた場合、グルーヴを生み出すものに何があるかをはっきりさせたい。
グルーヴとは波動である、躍動感である、という定義から、以下仮説であるが、少し整理していくつか挙げてみたい。
そもそも個人のグルーヴは生まれたときからあるはずであるから、最初のテクニックというのは、閉じ込められた元々のグルーヴ感をいかに解放するか、ということになる。
そして抽象的であるが、最も大切であると思うが、ふだんの生活感、スピード感がある。
踊りの得意な人は、グルーヴ感を養うのに最高の手段を持っていると思う。
意図的に生み出すものとしては何があるだろうか。
ヴィブラート、こぶし、
楽譜にもグルーヴが表現されている。
アンサンブルの場合、元々備わっている一人一人のグルーヴ感にズレがあるから、そのズレが新たなグルーヴを生み出す。
私は最高のグルーヴ感を持つヴァイオリニストの一人にハイフェッツがいると思う。彼は若い頃、あまりに完璧で素晴らしい演奏するのをファンの一人が心配して、『貴方は寝る前にでも、一日一回は下手に弾きなさい。そうでないとミューズの神に嫉妬される』みたいなことを言ったらしい。下手に弾く、というより遊ぶ、ということだろうと思う。これもグルーヴであると思う。
彼は観客を眠らさないためにテンポを速くしているが、それが彼特有のグルーヴ感をもたらしている。そして、ここから先が一番今日書きたいことであるが、彼特有のグリサンドがグルーヴを生み出しているように思えてならない。まるでアクセルのようである。