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「体の重心」と聞いて、皆さんはどのような感覚を思い浮かべるでしょうか?

 

スポーツやダンスをしている方、体をよく動かしている方はわざわざ意識をしなくとも、知らず知らずのうちに、感覚としてはご存じなのではないかと思います。

 

重心ととても関わりの強い感覚に「グラウンディング」というものがあります。

 

グラウンディングというのは、「地に足がついていない」「上の空」とは真逆で、地面にまるで根が張ったごとく、しっかりと足が地についている状態です。

 

これは決して物理的なことだけではなく、おヘソの少し下の丹田という場所にも程よく力が入っていて(お腹が出ていない状態)、呼吸も深く、精神的にもどっしりと肝が座り、落ち着いている状態も差すと考えています。

 

そしてこれは「重心が低い」状態でもあります。

 

私は音楽をする時も日常も、この重心に身を置くことを常に心がけています。

 

そうすることで、一時的な感情に左右されることも少なくなるし、いい意味で冷静でいられます。

 

グラウンディングをちょっと意識するだけで、例えば電車の中でも安定さを保てるのは不思議な感覚です。

 

ちょっと疲れている時や、自分がふわふわしてるなと思う時、意識してグラウンディングしています。

 

音楽家としては、緊張している時にグッとグラウンディングします。また、ここは特別どっしりとした音が欲しい、深い音が欲しいという時にも意識をします。


また、これは私のものすごく個人的な感覚ですが、「心の重心」もあるような気がしています。

 

好きな人が遠くにいて会えない、そんなキューンとしたセツナイ感じは、左上に小さく寄るような感じがするし、温泉に入ったりリラックスすると、心がぼよーんと大きくなって胃の上あたりに大きく広がる感じがします。

 

私は音楽に触れながら、このささやかな感覚に気付くのが大好きです。

 

一言で言ってしまえば、感性なのかもしれませんが、この感覚を自分が演奏する時は自分の内側からにじみ出るようにします。

 

例えば、ものすごくラッキーに恵まれ、嬉しくてルンルンな日に悲しい音楽を奏でる時は、グググっとその悲しみの深さに自分の心の重心を移動させます。

 

こういうところから、「経験は芸の肥やし」と言うのかもしれません。

 

多くの経験を積めば積むほど、感情、そして表現の引き出しが増えて、より多くの方々の心と響き合い、共有出来る部分が増えていくからです。

 

自分の成長と共に曲の解釈もどんどん変わっていきますし、一人の人間としての在り方が、演奏家としての在り方だと言っても過言ではないと思います。

 

少しずつでも、人間として一歩一歩成長していって、聴いて下さる皆さまに音楽という素敵な波動をお届け出来るよう、日々精進しようと思います。

 

次回は、その心の重心を移動させた感覚を「女優型?憑依型?冷静型?」というテーマで、書いてみたいと思います。
 

"Follow The Light"
ヴィオラ奏者 安達真理

 

第5回 重心の意識の仕方

Mari Adachi, Vla

 

東京生まれ。4歳よりヴァイオリンを始める.
桐朋学園大学在学中にヴィオラに転向。卒業後、同大学研究生修了。

 

2009年よりオーストリア、ウィーンに渡る。

ウィーン国立音楽大学室内楽科を経て、2013年スイス、ローザンヌ高等音楽院修士課程を最高点で修了。

 

2015年、同音楽院ソリスト修士課程を修了。

 

2013年よりオーストリアの古都インスブルックのインスブルック交響楽団にて2年間副首席ヴィオラ奏者を務める。2015年夏、6年間の海外生活にピリオドを打ち、日本人として改めて日本の役に立ちたいと決意を新たにし、完全帰国。

 

2005年霧島国際音楽祭にて特別奨励賞、優秀演奏賞受賞。
第6回大阪国際音楽コンクールアンサンブル部門第1位およびラヴェル賞受賞。


2006、2007年ヴィオラスペースに出演。『サイトウ・キネン若い人のための室内楽勉強会』に参加。


2007~2009年N響オーケストラアカデミー生として著名な指揮者、演奏家と共演、研修を積む。


2009年小澤征爾音楽塾オペラ・オーケストラ両プロジェクトにてヴィオラ首席奏者を務め、日本と中国にて公演。


2010、2011、2013年とオーストリアのセンメリンクでの国際アカデミーに参加する度、全弦楽器を対象とするコンクールにてソリスト賞を受賞。


2011年バーデンバーデンのカール・フレッシュアカデミーにて、バーデンバーデン管弦楽交響楽団とバルトークのヴィオラ協奏曲を共演、特別賞を受賞。


2011年よりカメラータ・デ・ローザンヌのメンバーとして、ピエール・アモイヤル氏と共に、スイス、フランス、トルコ、ロシアの各地で多数の公演を行なう。またこれまでにアライアンス・カルテット、ルーキス・カルテットのメンバーとしてオーストリア、ハンガリーを中心に公演を行なう。


2014年、バンベルク交響楽団にて首席ヴィオラ奏者として客演。


2015年、ローザンヌ室内管弦楽団とマルティヌーのラプソディー協奏曲を共演。
同年夏、モントルージャズフェスティバルに出演。クラシック音楽のみならず、幅広いジャンルで活躍。


世界的なヴェルビエ国際音楽祭にて、アマチュアの人たちの室内楽のレッスンにあたるなど、指導者としても活動を始めている。


ヴァイオリンを篠崎功子氏、ヴィオラを店村眞積氏、ジークフリード・フューリンガー氏、今井信子氏、ギラッド・カルニ氏、室内楽を、東京カルテット、ヨハネス・マイスル氏に師事。その他国内外にて多数のマスタークラスを受講。


http://www.mariadachi.com
 

https://twitter.com/AdachiViola

 

https://www.facebook.com/mari.adachi.viola

 

聡明な解釈と美しい音による豊かな表現。彼女はアーティスティックな才能を持っている。』

——ギラッド・カルニ(ローザンヌ高等音楽院教授、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団首席ヴィオラ奏者)

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