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リヒャルト・シュトラウスが作曲した、自身最後のオペラ、『カプリッチョ』の冒頭の前奏曲である弦楽六重奏を、今月、京都と滋賀で演奏します。

 

そのオペラの内容は、音楽と詩(言葉)とどちらが大事なのかを、三角関係の恋愛劇に例えたお話のようです。

 

そこで、今日は、言葉のない器楽曲の可能性について、少し書いてみようと思います。

 

 

器楽曲には、メロディやハーモニー、時に標題があったり、espressivo(感情豊かに)など楽語での指示がありますが、基本的には、歌詞がついた声楽曲と違って、その解釈は、演奏家に大部分が委ねられています。

 

もちろん、作曲家の時代背景や置かれていた状況、作曲家が住んでいた土地を訪ねてみたり、自筆譜(コピー含む)を見てみるなどによってイメージが膨らみますし、当然、ご存命の作曲家の方の作品であれば、直接、曲への想いを細かにお聞きすることが可能です。また、国際的な時代なので、作曲当時とは全く違ったとしても、実際に、国のカラーを肌で感じることも出来ます。

 

さらに、その時代ごとのスタイルというものが様々な研究でなされているので、大きな意味での解釈というのは、誰でもたくさんの情報を得られる今の世の中、ある程度共通するのではないかと思います。

 

ただ、そこにどんな想いを込めたり、どんなイメージを持って弾くかが、機械的なテクニックを超えた部分での演奏家の腕の見せ所ではないかと思うのです。

 

とは言っても、演奏家は弾きながら説明する訳ではありませんし、仮に、事前に演奏家が抱いているイメージをお話ししていたりプログラムノートなどに書いておいたとしても、聴いてくださってる方々が演奏家と同じイメージを持つ必要は全くないと思っています。

 

我々人間は、そして生きとし生けるものは、刻一刻と変化する生き物だからです。

 

体調や気分、雰囲気や状況によって、同じものを見ても聴いても、感じるものは違ってきます。

 

その自由さは、尊重したいと思っています。

 

 

ではなぜ弾き手にイメージが必要なのか。

 

ひとつは、イメージ力によって、比較的簡単で楽しいプロセスによってテクニックの向上が可能であるという確信と、

 

ふたつめは、

"ただ弾いている”

”ただ音を並べている”

”ただお上手に弾けている”

を回避するためです。

 

つまりは、伝える力を持つためです。

 

作曲家にインタヴュー出来ない限り、彼らの真意を知ることは不可能です。

 

ですが、音に込められたかもしれない想いを、繊細に感じていくことは大事だと思うのです

 

その一瞬の”何か”が、聴いてくださってる方の、心の琴線に触れることもあるのですから。

 

もし、専門的なウンチク話には興味がない、クラシックって、器楽曲って、何がいいのか分からない、また、なんとなく好きだけど、今以上どうやって楽しんだらいいか分からない、そんな方は、一度、ちょっと頭を休めて、力を抜いて、ただ音の世界にポッと身を置いてみていただきたいなと思います。

 

歌詞がない分、器楽曲の楽しみ方は、聴き手の方によって自由自在なのです。

 

毎日忙しくされてる方、自分の感情にゆったりと付き合ってる暇もない、そんな方ほど、ご自分の心と対面出来るいいチャンスになるかもしれません。

 

そのあたりのことを、次回、第2回のコラム「楽しい曲と悲しい曲」でお届けしたいと思います。

"Follow The Light"
ヴィオラ奏者 安達真理

 

第1回 器楽奏者にできること

Mari Adachi,Vla

東京生まれ。4歳よりヴァイオリンを始める.
桐朋学園大学在学中にヴィオラに転向。卒業後、同大学研究生修了。

 

2009年よりオーストリア、ウィーンに渡る。

ウィーン国立音楽大学室内楽科を経て、2013年スイス、ローザンヌ高等音楽院修士課程を最高点で修了。

 

2015年、同音楽院ソリスト修士課程を修了。

 

2013年よりオーストリアの古都インスブルックのインスブルック交響楽団にて2年間副首席ヴィオラ奏者を務める。2015年夏、6年間の海外生活にピリオドを打ち、日本人として改めて日本の役に立ちたいと決意を新たにし、完全帰国。

 

2005年霧島国際音楽祭にて特別奨励賞、優秀演奏賞受賞。
第6回大阪国際音楽コンクールアンサンブル部門第1位およびラヴェル賞受賞。


2006、2007年ヴィオラスペースに出演。『サイトウ・キネン若い人のための室内楽勉強会』に参加。


2007~2009年N響オーケストラアカデミー生として著名な指揮者、演奏家と共演、研修を積む。


2009年小澤征爾音楽塾オペラ・オーケストラ両プロジェクトにてヴィオラ首席奏者を務め、日本と中国にて公演。


2010、2011、2013年とオーストリアのセンメリンクでの国際アカデミーに参加する度、全弦楽器を対象とするコンクールにてソリスト賞を受賞。


2011年バーデンバーデンのカール・フレッシュアカデミーにて、バーデンバーデン管弦楽交響楽団とバルトークのヴィオラ協奏曲を共演、特別賞を受賞。


2011年よりカメラータ・デ・ローザンヌのメンバーとして、ピエール・アモイヤル氏と共に、スイス、フランス、トルコ、ロシアの各地で多数の公演を行なう。またこれまでにアライアンス・カルテット、ルーキス・カルテットのメンバーとしてオーストリア、ハンガリーを中心に公演を行なう。


2014年、バンベルク交響楽団にて首席ヴィオラ奏者として客演。


2015年、ローザンヌ室内管弦楽団とマルティヌーのラプソディー協奏曲を共演。
同年夏、モントルージャズフェスティバルに出演。クラシック音楽のみならず、幅広いジャンルで活躍。


世界的なヴェルビエ国際音楽祭にて、アマチュアの人たちの室内楽のレッスンにあたるなど、指導者としても活動を始めている。


ヴァイオリンを篠崎功子氏、ヴィオラを店村眞積氏、ジークフリード・フューリンガー氏、今井信子氏、ギラッド・カルニ氏、室内楽を、東京カルテット、ヨハネス・マイスル氏に師事。その他国内外にて多数のマスタークラスを受講。
http://www.mariadachi.com

 

 

聡明な解釈と美しい音による豊かな表現。彼女はアーティスティックな才能を持っている。』

——ギラッド・カルニ(ローザンヌ高等音楽院教授、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団首席ヴィオラ奏者)

オーストリアで出逢った、インスピレーションを掻き立てられる風景のひとつ

© 2014 by アッコルド出版

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