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ヴァイオリンは“弾き語り”が苦手と言ったけれど、
この苦手意識はどちらかというと、身近でないものに対する拒否感や抵抗感、
あるいは「食わず嫌い」的なものに近いような気もする。確かに、
わが業界で学ぶ、顎で楽器を軽く挟むような姿勢、そして近代奏法は、
「弾きながら歌う(語る)」ことをあまり想定していないし、実際、
普段演奏する一般的な楽曲ではまず、そんなことは要求されない。
 
必要な奏法を学ぶだけで、ひいひい言っているのだから、
余所見をしている場合じゃない、というところが本音? でも、
それが例え、自分の世界に必要のないものだったとしても、
ヴァイオリンやヴァイオリン弾きの可能性を可視化してくれるのなら、
それは見てみたい。絶対、役に立つはずだから。
 
そして、そんなこんなの映像を見ると、
ヴァイオリンが本当に凄いヤツだということが分かる。
 
“弓奏楽器”の括りにいるくせに、弓はなくても演奏できるし、
“擦弦楽器”に分類されるのに、擦らなくても音は出る。
“弦楽器”の代表なのに、打楽器の代わりを務めることもできる。
「メロディ楽器」なのかと思ったら、実は「伴奏」も得意だし、
その気になれば「リズム」も刻めちゃったりする、超マルチな楽器。
 
ということで、本日のテーマは「ヴァイオリンを味わい尽くす」。
フィドルなヴァイオリン含め、ジャンルまったく気にせず、
難しいことも一切語らず、お薦めとかベストとかということでもなく、
ただただ、お気に入りの動画を紹介してくことにしよう。
どうぞ、お茶かお酒のご用意を。
 
 
「『弾き語り』得意ですけど、何か?」
 
ブルーグラス界のトップスター、ティム・オブライエン。

Tim O'Brien at TCAN

 

ヴァイオリン弾きの手帖

ヴァイオリニスト、ヴァイオリン教師 森元志乃

第118回

ヴァイオリンって…ヴァイオリンって…

渋いなぁ。普通に構えていても、こんなに声って出るんだ…。
 

 

オールドタイム・フィドルのトミー・ジャレル。

Tommy Jarrell: Cripple Creek (1983)

「呼吸するように」っていうのはこういうことかと考える。
汚いボロボロの楽器なのに、愛されているのが分かる。
ヴァイオリンと一緒に、こんな老後を過ごせたらいいなぁ。
 
弾きます、歌います、踊ります、ノリノリです。
ごっきげんな体育会系フィドラー ロスト・バイユー・ランブラーズ。

Lost Bayou Ramblers. Blue Moon Special

 

これも体育会系? イングランド出身セス・レイクマン。
なんてカッコいいんでしょう!

Seth Lakeman - Race To Be King

 

個人的趣味で、セス・レイクマンをもう一曲。
見て下さい、この体幹。鍛えたのかなぁ。(関係ないけれど、場所最高!)

Seth Lakeman - Lady Of The Sea Live

 

 
 
実は、リズム楽器なんです。
 
超絶『チョップ奏法』炸裂、ケイシー・ドリーセン。

Casey Driessen & Ben Sollee - Boogie On Reggae Woman

『チョップ奏法』って?! 興味のある方はこちら

Techniques & Skills with Casey Driessen. Series One: The Chop

シアトル生まれのフィドラー、ダロル・アンガー。
趣の違うチョップが聞けます。

Darol Anger and The Furies, featuring Maeve Gilchrist,

Emy Phelps, Sharon Gilchrist, Rushad

やっぱりチョップが気になる、という方はこちらも。
右手のスタンスはどの世界も大事っていうことかな。

Darol Anger Rhythm Technique Lesson

二人でやれば、こんなこともできます。
ケイジャン・フィドラー、デューイ・バルファ。

Dewey Balfa - Jai Ete Au Bal - Awesome Fiddlesticks

 

やってみたい? だよね。スティックの選択を間違えないように。
叩くところも間違えないように。酔った勢いでやらないように。(笑)
 
 
もはや何だかよく分からないけど、すごい人達。
 
弓の持ち方! さりげなくカッコいい左手のピチカート。
イングランドのナンシー・カー。声も素敵。

Nancy Kerr & James Fagan - Dance to Your Daddy

 

右手のピチカートもここまで行ける。
ご存知、ハンガリーのヴァイオリニスト、ラカトシュ。

Roby Lakatos:Deux Guitars

 

人とヴァイオリンはどこまで行くのだろう? 
アバンギャルドな音楽家、チェコ出身のイヴァ・ビトヴァ。

Iva BITTOVA sings *Ne nehledej

 

続、人とヴァイオリンはどこまで行くのだろう!! 
必見、アメリカン・フィドルのダグ・カーショウ。

Orange Blossom Special - Doug Kershaw (Fiddlers Three)

ヴァイオリンって、どういう状態でも、どういう位置でも、
どう弾いても、どうやっても音が出るんだねっ!
まさに、限界への挑戦。弓の替えが何本も置いてある(笑)。
よい子は真似しないように。
 
突っ込みどころ満載。でも思わず何度も見てしまうダグ・カーショウ。

Doug Kershaw - Diggy Liggy Lo

そうなんです。踊りながらだって弾けます!
楽器を選んで、修行をすれば、ヴァイオリン砲も打てます。
われらフィドラーにできないことなんて、何にもありません! 
リンジー・スターリング、アメリカのダンス・ヴァイオリニスト。

Roundtable Rival - Lindsey Stirling

 
せっかくですから、クラシックの曲も。
 
ただし、これはスピード違反です。
イギリスのヴァイオリニスト、ベン・リー。

World's fastest violinist plays Flight of the Bumblebee

こちらもスピード違反です。
ギリシャのヴァイオリニスト、レオニダス・カヴァコス。

young Leonidas Kavakos plays No5 by Paganini

せっかくなので正統派も。クリストフ・バラーティ。
簡単そうに見えちゃうかなぁ。それも悔しいなぁ。

Schubert-Ernst: Der Erlkönig (Kristof Barati, 2005.)

パガニーニ弾き、アレキサンダー・マルコフ。
高速運動中の右手の残像と過剰な演出をお楽しみください。

Alexander Markov plays Paganini's 24th Caprice 

もう一つ、マルコフ。ボウイングにご注目。

Paganini Caprice no.5

なんだか、ヴァイオリン弾くのが嫌になってきたかも(笑)。
 
なので最後に、クール可愛い少年たちの演奏でお別れを。

Sleepy Man Banjo Boys: Bluegrass virtuosity from ... New Jersey?

© 2014 by アッコルド出版

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