審査委員長を務めるのはカルミナQのチェロ、シュテファン・ゲルナー氏だ。ちなみにカルミナQはこの年末に来日も予定されている。審査員団にはお馴染みの池田菊英氏も加わっている。

2次予選に進出したQベルリン・トウキョウ。レッジョエミリアでは今ひとつの結果だったが、地力はあるだけにこの秋冬でどこまで魅力的な団体になったか。2次予選で弾く細川作品は、彼らのお得意演目だけに結果が期待される。

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今、ハノイにいる。先週来、諸般の事情で当原稿に関してもすったもんだ、ここまで掲載が伸びてしまって編集長以下関係者の皆様には大いに迷惑をかけてしまった次第。
 
ハノイにいる理由は、また次回以降に。ここにいる急な用事がなければ、恐らくは出かけていたであろう別の場所の話をさせていただく。グラーツで数日前から始まった「第9回フランツ・シューベルト及び現代音楽国際コンクール」について。
 
グラーツ音楽院が主催し、3年毎に同校で開催されるこのコンクール、その名からしてかなり特徴的な大会であることはお察しいただけよう。科目はピアノ付きリート、ピアノ三重奏、それに弦楽四重奏で固定されている。無論、国際とはいうもののヨーロッパの大会、その常識通りに参加者に対する旅費負担などはないため、参加者・団体はヨーロッパで勉強しているかヨーロッパを拠点にしている若い音楽家ということになる(大阪やメルボルン、バンフらは極めて例外的なメイジャー大会なのだ)。
 
この大会で最も特徴的なのは、そのレパートリーであろう。もう大会の名称から一目瞭然、ひとつはシューベルトである。ピアノ付きリートにとっては神様、ピアノ三重奏団にしてみれば究極の長大なレパートリーふたつを書いてくれた恩人、そして弦楽四重奏弾きとしてもこれなしでは地方公演の商売が出来ない超名曲と究極の大作を遺してくれた有り難い存在だ。それと一緒に審査されるのが「現代音楽」なのだから、ちょっと面白い。ドイツ語圏歌手にとってみればシェックやフォルトナーからリームに至る20世紀後半以降の声のレパートリーは、そのまま主要都市や地方都市で盛んに演目に挙がる現代オペラへの大事なトレーニングの場所。ピアノ三重奏や弦楽四重奏にとっても、現実問題としてプロとして食べていくには、ヨーロッパやカナダ、オーストラリアでは公的助成金とセットになった現代自国作品の上演は不可欠な仕事だ(残念ながら、日本は話が別だけれど)。その意味で、極めて現実的なレパートリー設定ではある。
 
 
当稿読者とすれば、最も関心が高いのは弦楽四重奏部門であろう。以下、そのジャンルを中心に記す。正直、この大会、参加しようという団体にとって壁となっていたのは現代音楽レパートリーであった。課題曲リストを眺めるに、1次予選からそれなりのガリガリの現代曲をコンクールレベルで仕上げて来なければならないのだ。ここはちょっとパス、と敬遠する若者達がいても不思議はなかろう。
 
審査委員長のカルミナ弦楽四重奏団(以下Q)チェロ奏者にしてグラーツ音楽院室内楽部長のシュテファン・ゲルナー氏にどのような考えがあったか、直接尋ねる機会はまだないのだけれど、今回からはちょっと課題曲の傾向が変わったことは確かである。要は、「え、現代曲って、これで良いの」と思えるような作品まで含まれるようになったのである。その結果、と敢えて言って良かろう、今大会は随分と参加者も増えたように思える。20団体近く並んだ1次予選は、シューベルトの比較的馴染みの薄い初期作品と共に演奏される「現代音楽」は、バルトーク、ヤナーチェク、ショスタコーヴィチ、シマノフスキ、そしてラヴェルまでが許されている。これならば「ダメモトで受けてみようか」と思えるではないか。
 
結果として、シューベルトのD.87やD.112に説得力のある演奏をせねばならない、という、考えようによっては技術的に難しいだけの(と言ったら身も蓋もないが)現代作品を弾くより余程困難な高いハードルが立ちふさがることになったのかもしれない。その辺り、現場で演奏を聴かずに事務局から送られてくる予選結果発表の公式リリースを眺めているだけでは、なんとも判らぬもどかしさがあることは確かだ。だって、(最近はそこそこ弾かれるようになってきてるとはいえ)音楽学校や室内楽セミナーで、D.87やD.112を《断章》以降の情熱と確信を持ってきちんと始動出来る先生たちなど、それほどいる筈もない。つまり、若き団体は、いくつかの有名録音を参考にしながら、自分らで若きシューベルトの楽譜と直面していかねばならないのである。
 
現在、1次予選が終わった段階の結果が届いている。以下、本日2月8日日曜日、日本時間の午後6次から始まる2次予選の参加団体と演目である。何をこんなに慌てているのかと言えば、昨日、2次予選以降はライブストリームをする、という連絡が事務局からあったからだ。こちら。
 
http://schubert.kug.ac.at/
 
もう多くを語る必要はあるまい。あとは皆様がご自身で経過を追いかけていただきたい。遥かハノイから、「アッコルド」読者諸氏の深夜パソコン画面前の名聴衆としての健闘を祈る。
 
QUARTET GERHARD
Lluis CASTAN, Violine (Spanien)
Judit BARDOLET, Violine (Spanien)
Miquel JORDA, Viola (Spanien)
Jesus MIRALLES, Violoncello (Spanien)
Streichquartett D-Dur op. 18/3 Ludwig van Beethoven
Streichquartett Nr. 2 „Alguns Cants Orfics“ (2013) Joan Magrane
Streichquartett op. 51/1 Johannes Brahms
 
AMBER QUARTET
Ning FANGLIANG, Violine (China)
Su YAJING, Violine (China)
Qi WANG, Viola (China)
Yichen YANG, Violoncello (China)
Streichquartett op. 74 Joseph Haydn
Totem (2001) Zhang Zhao
Streichquartett g-Moll op. 10 Claude Debussy
 
日本時間午後8時休憩
 
EXCELSA QUARTET
Laura COLGATE, Violine (USA)
Audrey WRIGHT, Violine (USA)
Valentina SHOHDY, Viola (USA)
Kacy CLOPTON, Violoncello (USA)
Streichquartett op. 64/5 Joseph Haydn
Arcadiana op. 12 (1994): 5. Satz Thomas Ades
Arcadiana op. 12 (1994): 6. Satz Thomas Ades
Arcadiana op. 12 (1994): 7. Satz Thomas Ades
Streichquartett Nr. 1 e-Moll „Aus meinem Leben“ Bedrich Smetana
 
QUARTET BERLIN-TOKYO
Tsuyoshi MORIYA, Violine (Japan)
Dimitri PAVLOV, Violine (Israel)
Eri SUGITA, Viola (Japan)
Ruiko MATSUMOTO, Violoncello (Japan)
Streichquartett B-Dur op. 33/4 Joseph Haydn
Silent Flowers for String Quartet (1998) Toshio Hosokawa
Streichquartett op. 51/2 Johannes Brahms
 
日本時間午後10時15分休憩
 
BELENUS QUARTETT
Seraina PFENNINGER, Violine (Schweiz)
Anne BATTEGAY, Violine (Schweiz)
Esther FRITZSCHE, Viola (Deutschland)
Jonas VISCHI, Violoncello (Deutschland)
Streichquartett op. 76 Joseph Haydn
String Quartet Nr. 4 (2007) Daniel Schnyder
Streichquartett op. 13 Felix Mendelssohn Bartholdy
 
QUATUOR AROD
Victoria JORDAN, Violine (Frankreich)
Apparailly CORENTIN, Viola (Frankreich)
Samy RACHID, Violoncello (Frankreich)
Alexandre VU, Violine (Frankreich)
Streichquartett D-Dur op. 18/3 Ludwig van Beethoven
Quartet 2 (1998) Xiaoyong Chen
Streichquartett op. 51/1 Johannes Brahms
 
 
日本時間9日午前3時半休憩
 
EQUALIS QUARTET
Remigiusz GACZYNSKI, Violine (Polen)
Matyas ANDRAS, Violine (Ungarn)
Daria UJEJSKA, Viola (Polen)
Dorottya STANDI, Violoncello (Ungarn)
Six Moments Musicaux op. 44 Gyorgy Kurtag
Streichquartett KV 575 Wolfgang Amadeus Mozart
Streichquartett op. 105 Antonin Dvořak
 
QUARTETTO LYSKAMM
18:50 Cecilia ZIANO, Violine (Italien)
Clara Franziska SCHOETENSACK, Violine (Italien)
Francesca PICCIONI, Viola (Italien)
Giorgio CASATI, Violoncello (Italien)
Streichquartett op. 33/1 Joseph Haydn
„7“ (2004) Emanuele Casale
Streichquartett e-Moll Giuseppe Verdi

グラーツ音楽院を正面から。ピアノ三重奏と歌曲予選は、この校舎で行なわれる。なお、ピアノ三重奏部門には大阪で第3位となったトリオ・アタナソフが参加、現時点で順当に2次予選に駒を進めている。

第80回

グラーツ「シューベルト&現代音楽コンクール」

ライブストリーミング急遽決定

電網庵からの眺望

音楽ジャーナリスト渡辺 和

© 2014 by アッコルド出版