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尾池のブルーマンデー憂さ晴らし

ヴァイオリニスト 尾池亜美

第83回

肩当て無しに慣れる

こんにちは! 憂さ晴らしのお時間です。
先週は2回目のクラスコンサート。そのための練習をしている時に、思わぬ事が起きました。肩当てを使わずに弾けるようになったのです。
 
これまで色々種類を試しつつも、肩当てはかならず使っていたし、無いと弾けないほうだったのですが、外すと肩の上でつるつる滑る代わりに、動きやすく自由度が上がるのですね。
 
やってみたくなって、部屋の暖房を最高温にして肩の出る服装になり、肩にヴァイオリンを乗せたら滑らなくなりました。置く場所はまず鎖骨の上の具合のいいところに乗せてから、楽器を持つ左手を左右に動かしていい場所を探します。
 
そして、肩当て無しに慣れていない自分と楽器とを、徐々に慣らしていきます。自分だけじゃなくて、楽器も肩当て無しで弾き始めたばかりの時は、けっこう間の抜けた音がしました。それまでは脇をがっちりと肩当ての部品に押さえられていた訳で、その状態と付いていないときでは、箱の振動の仕方も変わるのですね。
 
間もなく、服を着たままでも自分自身安定して弾けるようになり、楽器もその新しい振動の仕方に慣れてくると、それまでに聴いた事の無かった様な音が出てきました。虹色の全色が見えたときのように、カラフルで鮮やかな音。弓でのアプローチにも素直に応えてくれて、肩当てを付けている時よりも深く弾き込める感じがしました。
 
その感覚に病み付きになってしまい、最初の日は一日中それで練習していました。するとある問題が。鎖骨が異様に痛い。あご宛の金属の部品が直接乗っていたので痣が出来てしまったのです。
 
仕方なく翌日は金属の部品に柔らかいレザーを当て、それでも痛かったので肩当てあり、なし、交互に練習していました。それに楽器を支えるのに、やはり首から肩、背中と腕の、それまで使わなかった部分をかなり使うので疲れてしまうのですね。それで最終的に肩当て有りに戻ってきたのですが、得るものは大きかった気がします。一度無しに慣れると、肩当てを使った時にも自由に左右の手や腕を使えるのかな。
 
そんなこんなでクラスコンサート直前に、あれこれと試行錯誤してしまいました。本番はやっぱり、慣れている肩当て有りで。
Florian Saalというとてもいい響きのホール。なかなか取れないそうなのですが、こんなところで弦楽四重奏など出来たら最高だろうなー。
 
グラーツ最終日は、それまでの曇り空とは一変してすっきりと晴れて居ました。
さあこれから日本に帰ってコンサート、いろいろです!
ヨーロッパの友達に、日本の年末年始の忙しさを伝えると、わりとびっくりされます。お父さんにはお仕事仲間からの年賀状が何束も届くんだ、とか、師走っていうほどみんな忙しいんだ、とか。
 
寒いので皆さんどうかご自愛ください。
それでは、よい一週間を!

© 2014 by アッコルド出版

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