ジョヴァン・フランチェスコ・プレッセンダ

(Giovan Francesco PRESSENDA)
1800年代のアントニオ・ストラディヴァリ(Antonio STRADIVARI)
 
ジョヴァン・フランチェスコ・プレッセンダは1777年、ピエモンテ州のワイン生産地帯の中心であるアルバ近郊のレクイオ・バッリアに生まれる。
 
農家の息子であるジョヴァン・フランチェスコは、朝日がぶどうの木を温め、晩には霧が立ちこめ、他の土地ではできない貴重なブドウが育つ土地に生まれ、幼少期から青年期までをこのブドウ畑が広がる丘陵地帯で過ごす。
 
そして40歳になって初めて、どういう理由か、
「ヴァイオリンメーカーにして商人」として知られるレテ・ピッレメントゥ(Lété Pillement)のトリノ中心街にある工房で職人として働き始め、弦楽器製作の世界に足を踏み入れる。
 
見事な才能を持った彼は1821年には自身の工房を開き、そこが生涯の仕事場となる。
弦楽器職人としてのすばらしいキャリアの中で、彼は数多くの勲章やメダルを受賞することになる。1829年に二つの賞を、次に1832年には銀メダルを二つ、更に1838年に銀メダル、1844年に金メダルと続き、最後には1850年に73歳にして賞を受賞している。
 
かの有名なミラノのレアンドロ・ビジャック(Leandro Bisiach)直筆の文章によれば、プレッセンダ工房の職人の中で特に重要な役割を果たしたのはレオポルド・ノイリエッル(Leopold Noiriel)、「パリの有名な工房で経験を積み、確実にそこでニスの製法を学んだ」ジョゼフ・カロ(Joseph Calot)、そしてニースからジェノヴァへ、更にトリノへ移り住み、プレッセンダの製作活動の晩期に最も継続的にコラボレーションしていたピエッル・パッシェレッル(Pierre Pacherel)であると考えられる。
 
更に当然のこと同郷のジュゼッペ・アントニオ・ロッカ(Giuseppe Antonio Rocca)の名を挙げないわけにはいかない。プレッセンダの1834年から1836年作の楽器を見れば、彼との共同制作が行なわれたことは一目瞭然である。
 
巨匠プレッセンダの才能は、彼の楽器の革新的な特性にあり、その功績から、弦楽器製作の黄金期1700年代以降初の近代バイオリンメーカーと呼ばれるにふさわしい存在である。
彼の作った楽器は、1700年代のクレモナ製の名器に劣らず力強く澄んだ響きで、並外れた量の倍音と暖かい音色を持ち合わせつつも、音が出しやすいのがその特徴である。
 
弦楽器に塗られるオイルと樹脂でできたニスは、時と共に金色から、オレンジ色、さらに赤茶へと移り変わる。
 
たっぷりと厚く塗られたオイル調合のこのすばらしいニスによって、時間の経過と共に彼の製法独特の滑らかなニスに特徴的なひび割れが現われる。
 
現在カッリガーリ・コレクション所蔵の右の写真のヴァイオリン(1830年)は、著名なアメリカのソリストが愛用した、巨匠プレッセンダのキャリアの中でも黄金時代に作られた傑作である。
 
最高級の楓を用い、一枚板でできた裏板にそのクオリティの高さが際立っている。表板は整った平均的な木目を帯び、内部構造は巨匠がいつも使用していた柳材である。
 
型はプレッセンダ独自のモデルで、生涯この型を使い続けた。ストラディヴァリの型をもとに変更を加えたもので、明確で力強い音色を支える広いミドルバウツと、ソロ楽器の特性を際立たせる豊かなアーチを持つ。スクロールの彫刻は完璧で美しく形作られ、プレッセンダの創造力を存分に現している。
 
この楽器に用いられている金地にオレンジ褐色の見事なニスは、巨匠の黄金時代の特徴で、完全な状態で保存されている。
 
その音色は、ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz)(彼もプレッセンダの黄金時代1829年製のヴァイオリンのオーナーの一人である)を始めとする偉大なソリスト達に常に愛されてきた音色である。

イタリアン・ヴァイオリンの巨匠達5

オールドモダンヴァイオリンを中心に

イタリアンヴァイオリンの専門家として

世界中の音楽家、弦楽器製作家、鑑定家と

幅広い交流を持つパオロ・バンディーニ氏に、

ストラディヴァリ、アマティ、グアルネリの

大巨匠の後に続いた

1800年、1900年代の

イタリアン・ヴァイオリンの巨匠を

紹介していただくシリーズ。

今回は、

プレッセンダです。

 

(読者からの質問も募集しています)

1820年頃、トリノの市場風景
1820年頃、トリノの市場風景
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1830年G.F.プレッセンダ表全体
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1830年G.F.プレッセンダ表本体
1830年G.F.プレッセンダ表本体
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1830年G.F.プレッセンダ裏全体
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1830年G.F.プレッセンダ裏本体
1830年G.F.プレッセンダ裏本体
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1830年G.F.プレッセンダ側面
1830年G.F.プレッセンダ側面
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1830年G.F.プレッセンダ テスタ
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1830年頃、プレッセンダ工房の新聞広告
1830年頃、プレッセンダ工房の新聞広告
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鑑定書W.メーニング&サン
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鑑定書ハンマー商会
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パオロ バンディーニ Paolo Bandini

 

イタリアンヴァイオリン研究家&コンサルタント

 

イタリア・ボローニャ出身。

若くしてエミーリア・ロマーニャ州高等裁判所専属骨董宝飾品鑑定士を務め、古美術・宝石商をしていた20代の頃、ボローニャ派弦楽器製作の巨匠O.ビニャーミに出会う。

 

古美術・宝石商を続けながら弦楽器の芸術の世界に魅かれ、巨匠O.ビニャーミの下ヴァイオリン製作を学ぶ。13年間にわたるビニャーミとの厚い親交は彼の死まで続き、その間A.ポッジ、M.カピッキオーニ、C.ポッラストリ等、歴史に残る多くの偉大な製作家とも交流を深め、オールド・モダン・ヴァイオリンの研究、専門家としての道を歩み始める。

 

イタリア弦楽器製作に関する研究、多くの書籍の原稿を手掛ける他、ピエモンテ州後援「イタリアンヴァイオリンの巨匠達」DVDを監修。

 

ミラノ・G.ヴェルディ国立音楽院より特別講師として招かれる等、イタリア各地で「イタリアンヴァイオリンの歴史と選定の仕方」講演会を行なう。

 

2006年、世界初の弦楽器インターネットオークション“Da Salo”の創設者の一人として注目を集める。

 

カッリガーリコレクションの保管者として多くの若手音楽家に弦楽器貸与を行い、イタリアを代表するヴァイオリニスト、U.ウーギ、S.アッカルド他、V.ムローヴァ、M.ブルネッロ、ヨーヨー・マ、G.ソリマ等と交流を持ち、多くの音楽家からイタリアンヴァイオリンの専門家として厚い信頼を得ている。

 

イタリアンヴァイオリンについてのご意見ご質問は下記のメールでお受け致します。

(日伊英3カ国語対応)

paolobandini@hotmail.it

プレッセンダ—の銅像とその生い立ち

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