尾池のブルーマンデー憂さ晴らし

ヴァイオリニスト 尾池亜美

第59回 最も自然な演奏とは

こんにちは、ちょっとお久しぶりの、
憂さ晴らしのお時間です。
最近は「自然」ほど美しいものはこの世に存在しないな、
と思います。
特に、飛行機に乗った時、
雲より高いところから地球を見つめた時に、
ひしひしと、そう思います。
ひとは「自然」を、地球に生きるもの、
そしてひとの生き方、
佇まいに感じることが出来るはずです。
音楽も「自然な音楽」と表わすことがあります。
私も、弾くときでも聞くときでも、
自然に楽しめる時が一番幸せです。
 
では、これはどんな音楽のことをいうのでしょうか。
 
私は、ある意味、
目的を持たない音楽なのではないかと思っています。
感動するための音楽。
知るための音楽。
知らせるための演奏。
泣かせるためのヴィブラート。
効果的なクレッシェンド。
私達はこうしたものに意義を感じがちです。
 
また演奏家はもちろん、
どう演奏するべきかを勉強します。
しかし、
コンサートでいざ音楽をみんなで共有するときには、
その全ての方法論から解放された演奏が、
一番幸せなのではないかと思うのです。
 
それは、誰もが結果を期待しないからであり、
期待しないから裏切られないのであり、
また期待しなかったのに結果的に感動したら
もっと嬉しいからです。
 
それを可能にするのが、
自然な音楽なのではないかな。
そう思っています。
もちろん、考えは十人十色です。
 
最近もうひとつ
「自然」の大切さを感じるきっかけがありました。
バタフライ・エフェクトという言葉を知ったのです。
知人から聞いた言葉ですが、
由来は各地で「蝶の羽ばたきひとつから竜巻が起こる」
などと言われたことで、
ほんの小さなことが
大きな変化への影響を与えることを指すそうです。
この言葉をテーマとした映画なども存在します。
 
また、ある研究者が、同じ実験を二度行なおうとした際、
1回めと2回めで全く違った結果になったという出来事も、
この言葉に当てはまるそうです。
 
バタフライ・エフェクトは、
何事も方法論だけでは上手くいかない
ということを表していると思います。
成功する方法、
相手を説得する話術、
良い彼氏に出会う方法(笑)など。
方法論が意味が無いというのではなく、
これらは言い換えれば「蝶の羽ばたきのひとつ」であり、
実行すれば必ず「竜巻が起こる」わけではないのです。
 
自然に生きるって、結構難しいことです。
それでも私は、
少なくとも音楽をするときだけでも、
一番自然な演奏をしたい。
 
だからこれまでの「考えすぎ」を徐々に解除していって、
自然に戻って行きたいな、と思っている日々です。
 
目的や意味を考えすぎず、
シンプルに生きていきたい。
ただいい演奏がしたいだけなのですが。
これからも日々ヴァイオリン弾きとして生き
人間の目で自然を観察し、
それらを楽器を通じて表していきたい。
そう思います。

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