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尾池のブルーマンデー憂さ晴らし

ヴァイオリニスト 尾池亜美

第58回 オーガニックな演奏とは

こんにちは! 憂さ晴らしのお時間です。

 

今日は、今までで一番興奮したメンデルスゾーンの弦楽八重奏の演奏のことをお話ししたいと思います。

 

よく弦楽四重奏をワインのボトルに例えて、中身であるワインはセカンドとヴィオラ、その容れ物であるボトルがチェロ、そしてファーストはワインのラベルだという表現をしたりします。

 

会社や家族の大黒柱など、様々なリーダー像が存在するように、弦楽四重奏のファーストも様々なキャラクターのひとがいますが、八重奏だと、中身であるワインが沢山あるので、ファーストの立ち位置がちょっと変わります。

 

とくにこのメンデルスゾーンの八重奏の場合は、ファーストがあまりに美しく目立ったところで、どうも物足りなく感じてしまう。彼の協奏曲もそうなのですが、メロディ頼りはいかんのです。チェロはもちろん、内声の結束力と積極性によって曲の面白さがぐっと上がる作品です。

 

この曲は大きめの編成の室内楽のなかではかなりよく演奏されるもので、私もチェロ以外のほとんどのパートを弾いていますし、よく聴衆としても聴きます。そのなかで最も面白かったのが、ウィーン・フィルのひとたちがメンバーにいるKallisto Ensembleというひとたちのものでした。

 

この時のファーストのひとが、とにかく物凄く落ち着きがあるんです。冒頭のメロディのこまかいところが他声に埋もれようが気にせずにたんたんと進めます。一人だけ音域が高いことで、彼だけが目立つことを避けていました。唯一思いきり歌ったところは、全員でハーモニーを奏でたときのみ。それ以外は、書いてある音符を忠実に再現するのみ。

 

一楽章の前半のうしろのほう、B durになるまえに彼が一瞬ひとりになる時なんて、開いた口が塞がらないほどの落ち着きで、とことん調性ありきを貫いていました。だからもちろんその後の全員でのカデンツァもリタルダンドは無しです。人工甘味料、添加物一切なし、といったところでしょうか。安直かもしれませんがオーガニックな演奏だと思いました。

 

全てに於いてファーストがそうで在れば良いとは全く思わないのですが、ファーストが目立たないことで活きる室内楽という哲学を貫いた演奏が聞けて新鮮な感動を覚えたのでした。

 

終演後のものですが、その時の写真です。

なんか感想文みたいになっちゃったけど、今日はこの辺で。

どうかよい一週間を!

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