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音でのコンタクト

 

ーー 合わせるときは、言葉のやり取りが多いですか? それとも音楽で?

 

横 山「ほとんど言葉はありません。音で示すとそれに合わせてくれます。」

 

藤 森「私は喋るのが苦手なのでね。・・・寡黙ということではなくて(笑)、音楽のことを言葉で説明すると、なかなかうまく伝わらない。言葉のちょっとしたニュアンスは人それぞれ捉え方が違いますから、音で出した方が伝わりやすいんです。また、このメンバーは、そういった感覚に鋭い方ばかりですから。」

 

横 山「本番違ったりしますしね。」

 

藤 森「そうですね、その都度、お互いのやりたいことを察知する感覚はそれぞれ長けていると思います。打ち合わせしても、本番はなかなかその通りに、というわけにはいきませんからね。」

 

結成の経緯は

北海道での演奏会

 

ーー そもそも、このトリオはどのような経緯で結成されたのですか?

 

横 山「私は小森谷さんと10数年のお付き合いがあって、時々室内楽をご一緒させていただいていたのです。

 

ある方から『北海道で室内楽の演奏会をしてほしい』とお声がけいただいたときに、私と小森谷さんと、もうひとりチェロを入れることになり、小森谷さんにチェリストを探していただいたんですね。そのとき、藤森さんの予定がちょうど空いていたんです。奇跡ですよね(笑)。それがきっかけです。

 

小森谷さんは読売日本交響楽団、藤森さんはNHK交響楽団。それぞれ違うオーケストラに所属していますから、予定を合わせるのが本当に大変なのです。年に一度の奇跡で続けてきているといっても過言ではありません。」

 

ーーこれだけ長く続けているトリオは少ないですよね?

 

小森谷「トリオ自体が少ないですからね。」

 

藤 森「ピアノ・トリオは一般的によく知られた曲が少ないんです。意外と地味なんですね。

 

弦楽四重奏は『クラシック通好み』と言われる割に、有名な曲がたくさんあります。」

 

横 山「でもトリオは楽しいですよ。やりたいことがダイレクトにできます。」

 

ーー ご自身の主張が尊重される?

 

横 山「結構自己主張してもアンサンブルが成り立つ編成です。」

 

小森谷「藤森さんも僕も、各々弦楽四重奏を組んでいるのですが、トリオはざっくり感というか、縛りが少ないんです。」

 

藤 森「そうですね。一人一人が独立しています。

 

弦楽四重奏、それからオーケストラもそうですが、それらのアンサンブルは、その中のひとつの部品にならなければならないところが多いので、そこで自己主張は難しいです。

 

どちらが良い、というわけではないのですが、また違った楽しみがあります。」

 

ーー ソリストが集まって成立する編成なのですね。

 

横 山「そうですね。

 

ピアノ・トリオと同じようにピアノと弦とのアンサンブルでも、ピアノ・クァルテットやピアノ・クインテットとなると、弦の塊とピアノ、というようになってしまうんです。トリオはそれぞれのバランスが丁度良いんです。」

 

知識よりも

音楽そのものから感じてほしい

 

ーー クラリネット奏者にとってこの2曲はどのような作品ですか?

 

松 本「大切なレパートリーです。

 

ブラームスのクラリネット三重奏曲は一連のクラリネット作品の最初の曲です。この作品の後に五重奏が作曲され、その暫く後に二つのソナタが作られました。衰えた創作威力を奮い立たせ、『さあ、書くぞ』という意気込みで書かれた作品ですから、ブラームスの勢いを感じます。

 

メシアンの『世の終わりのための四重奏曲』は、捕虜収容所に収容されていた頃に書かれた曲です。当時そこに収容されていた4人の演奏家と、手入れのされていない楽器。そういった禁欲的な場所で書かれたからこそ、色彩豊かで、どこか達観したようなところが感じられる作品なのだと思います。決して満足のいくような場所では無かったと思うので、何かを求めているようなところが感じられます。」

 

ーー そういった知識があるとより興味深く聴くことが出来る?

 

松 本「全く知らなくても、そのままを感じていただければ良いと思います。

 

メシアンは音と色との共感覚の持ち主でした。音を色に例えることができたのです。ですから、色をイメージしながら聴く、というのも良いかもしれません。」

 

100回はいける!

 

ーー 5周年の次は10周年ですね。

 

藤 森「同じメンバーで10回、100回、1000回と重ねれば、言葉無しで、もっと言えば練習無しでもアンサンブルが出来るくらいになると思うのです。それを目指していきたいと思います。1000回は難しいかもしれないけれど(笑)、100回はいけると思います。」

 

横 山「100回いきますか?」

 

藤 森「いきますよ。」

 

横 山「お二人が同じオケに所属していただけるといいのですが(笑)。」

 

全 員「(笑)。」

 

ーー 最後に聴衆にメッセージを。

 

小森谷「トリオを聴く機会はあまりないと思いますので、ぜひこの機会にたくさんの方々に聴いていただければと思います。」

 

横 山「今回演奏する2曲は独特な世界観がある素晴らしい作品ですので、皆さんとその世界観を共有する時間になるとよいですね。」

 

藤 森「やはり、クラリネットのソロに注目ですね。」

 

松 本「練習します、そこで燃え尽きないように(笑)。」

 

藤 森「毎回来てくださるファンの方もいらっしゃるのですが、私たちも回数を重ねていくごとに成長していると思いますので、そういったところにも注目して、これからも応援していただけると嬉しいです。」

 

 

取材:向後由美

 

 

The Grand Trio

結成5周年特別公演


 

11月28日(木)JTアートホールアフィニス

 

小森谷巧(ヴァイオリン)
藤森亮一(チェロ)
横山美里(ピアノ)

Special Guest:松本健司(クラリネット)

 

曲目:
ブラームス/クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114
メシアン/世の終わりのための四重奏曲

 

料金:一般¥4.000 学生¥3.000

 

プレイガイド:

イープラス

http://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050001P002106944P0030001P0006

 

ご予約・お問い合わせ:

Fine Muse Club 045-861-6155

The Grand Trio 結成5周年

小森谷巧(Vn)、藤森亮一(Vc)、横山美里(Pf)

 

ピアノ・トリオの魅力をうかがいました・・・その2

インタヴュー

© 2014 by アッコルド出版

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