帰国後、様々な変化を経て
 
「ずっと尊敬するゴードン・バックと共演を続けてきて、今回もゴードンさんと共演の予定だったのですが、健康上の理由で、残念ながらお休みということになりました。

 

今回、ブラームスの一番のソナタを演奏する予定でした。これは私の長年弾きたいと思っていた曲なのですが、一度ゴードンさんに却下されたことがあるのです。でも、今回は、勇気をもって提案してみたら、彼も推してくれました。今年の3月の段階では、ラブラ、レスピーギのソナタ、ブラームスの雨の歌、と決まっていました。 これは、私の思い通りのプログラミングでした。
 
レスピーギは昔から好きな曲です。ゴードンさんは、30年以上も前に弾いた曲だったそうですが、試しに一緒に弾いてみたら、凄く盛り上がったので、すぐ決まりました。ブラームスは私が7歳のときからずっと好きな曲だったのですが、まだコンサートで一度も弾いていなかった憧れの曲でした。

 

やっとブラームスが弾ける・・・と思って練習を始めたのですが、合わせが一番大変なのは、レスピーギだと思っていたので、レスピーギを弾いた経験のある菊地さんに、練習に付き合っていただきたいと無理なお願いをしたら、快諾してくださったんです。

 

そうこうしているうちに、ゴードンさんが健康上の理由で日本に来られなくなってしまったので、菊地さんに引き続き共演をお願いしました。彼とは初めての共演ですし、私のリサイタルではありますが、菊地さんご自身も表現していただきたいと思いまして、プログラミングも新たにしたんです。ただレスピーギはそのままプログラムに入れました。

 

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの2番、ドビュッシーのソナタは、菊池さんが得意としていらっしゃる作品です。彼はパリとドイツに留学していて、彼のデビューCDはフランスものです。」

 

──ブラームスはまた先に送られるわけですね。

 

「そうですね(笑)。ゴードンさんと弾きたいという想いがあったので、気持ちを切り替えるためにも。彼とはずっと信頼関係を積み重ねてきたので。私の中にあるものを引き出してくださり、凄くしっかりと支えてくださるピアノでした。
 
ただ、彼はずっと年上なので、私の今後を考えるとずっと頼っていくわけにもいかないので、私の方がイギリスへ行ったときなどは、一緒に演奏する機会もあると思いますが、日本で共演するのはなかなか大変かもしれないですね。」

 

さらに大きな変化を

 

──今回のコンサートに向けて。

 

「まず第1回目のころは、まだ学生気分が抜け切れていなかったと思うんです。凄く緊張しましたし、初めて皆さんの前で演奏するわけでしたから。
 
その半年くらい後に、留学先のイギリスから帰国したのですが、そこから二回目のリサイタルの間に、凄いカルチャーショックを受けました。日本の暮らしを始めてから最初のリサイタルが第2回めのリサイタルとなります。そこには、凄い変化がありました。
 
二回目と三回目のリサイタルの間に私は国立音楽大学の付属中・高で教えることを始めたので、先生と呼ばれるようになり、でも同時にいろいろなことを学んで、変化がありました。目に見える変化です。

 

前回と今回の間には、これといった大きな変化はなかったかもしれません。先生としても演奏の方も、とても順調で、今年で学校に入って六年目になりますが、だいぶいろいろなことに慣れてきました。

 

今回のリサイタルの大きな特徴は何だろう、と自分でも思っていたのですが、ゴードンさんが来られなくなったので、ゴードンから離れて独り立ちする、みたいな、そういう意味で大きな変化のあるリサイタルになると思います。」

 

──ピアニストによって演奏が変わってきますよね。

 

「チラシの表写真は最初から私一人しかいませんが、これは間違いだと思っているんです。二人で音楽を作るので、表紙に私一人、というのは本当は間違っていると思うのですが、中身は一人ではないので、ピアニストが替われば、私自身の音楽もまた全然新たなものになると思います。」

 

──ピアニストにとって過酷な曲も多いですしね。

 

「ベートーヴェンの奏法、その時代のスタイルを勉強しながら作っていくことは重要だと思います。勿論それでも、十人いたら十人とも違う演奏になります。私としては、弾き込んでいくことによって、これだ、というものを見つけていくことですね。
 
古典派の中では、特にベートーヴェンは違いの出る音楽だと思います。本番中に閃いて変えていくということもありますし。」

 

──リサイタルに向けて。

 

「私はイギリスに長くいたので、イギリスの作品を聴くと、独特の共通の雰囲気を共有できるように思うんです。これもイギリス的なグルーヴというのでしょうか。むしろ、色とか匂いという言葉の方が、私にはピンときますが。どこの国にも独特のものがそれぞれあると思います。

 

ただ、矛盾するようですが、どこの国の国籍の作曲家であるか、というのは、作品自体にそれほど関係しないような気もするんです。レスピーギが好きな理由は、ウォルトンのヴァイオリン協奏曲に凄く似ているからなんです。ウォルトンはイギリス人ですが、イタリアが好きで、晩年は島にずっと住んでいたんですね。
 
イタリアが好きといっても彼の作品はイギリスっぽい。レスピーギはイタリア人ですが、作品はイタリアっぽくないと思うんです。このレスピーギの作品は冒頭が、ウォルトンの作品に似ていて、凄くイギリスや北ヨーロッパのような暗い空のような感じです。
 
ディーリアスは、ほとんどイギリスに住んでいなくてフランスにずっといたけれど、作品はイギリスっぽい。

 

まずは、作品を忠実に再現しようとすると、その色や匂いというものが自然と出てくるような気がします。
 
今回のプログラムは4人の作曲家が登場しますが、本当に全然別の色や匂いですね。そういったところを聴いていただけたら、と思います。」
(取材・青木日出男)

 

イギリスで長年留学生活を送り、リサタルでは必ずイギリスの作品をプログラムに入れるヴァイオリニストの小林倫子さんが、帰国後4回めのリサイタルを行なう。
 

いつも共演してきたピアニストのゴードン・バック氏が、健康上の理由で今回はお休みされる。

小林倫子 ヴァイオリン・リサイタル

 

リサイタル直前インタヴュー

小林倫子 ヴァイオリン・リサイタル

 

【日時】2013年11月24(日)午後2時開演

【会場】東京オペラシティ・リサイタルホール(京王新線「初台」駅)

【共演】 菊地裕介(ピアノ)

【曲目】 

   ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第2番

   ディーリアス:ヴァイオリン・ソナタ ロ長調

   ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ

   レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ

【入場料】入場料:4000円(全席自由)

【お問合せ】マルタミュージックサービス

      Tel. 047-335-2002

 または、

 http://www.michikolondonviolin.com/page/schedule.html



Michiko Kobayashi,Vn

 

5歳よりヴァイオリンを始め、室谷高廣氏に師事。
 

全日本学生音楽コンクール東京大会、小学校の部、中学校の部に入選。


桐朋女子高等学校音楽科に入学し、徳永二男氏に師事。その後桐朋学園大学入学。1997年同大学室内楽演奏会に出演。


1997年9月より、ロンドン・ギルドホール音楽院に留学、デイヴィット・タケノ氏に師事。2000年、同音楽院からの交換留学生として、ドイツ、ロベルト・シューマン音楽大学にて研修、アイダ・ビーラー氏に師事。


2001年、ギルドホール音楽院学士課程主席卒業、翌年修士課程修了。


2003年、コンサートリサイタル・ディプロマを取得。


在学中は同音楽院からフルスカラシップのほか、野村国際文化財団からも助成を受ける。

     
JILA音楽コンクール第3位、クロイドン・シンフォニーオーケストラ・ソリスト・アワード優勝、第69回日本音楽コンクール入選、北ロンドン音楽祭・無伴奏バッハコンクール優勝、リピッツァー国際ヴァイオリンコンクールにて特別賞受賞。ギルドホール音楽院にてBirdie Warshaw、 Maurice Warshaw、 Max & Peggy Morganの各賞を受賞する。

     
ソリストとして、クロイドン・シンフォニー・オーケストラ、エプソム・シンフォニー・オーケストラ、そしてロンドンのバービカンホールにてギルドホール交響楽団と共演。ロンドンの主要リサイタルホールであるウィグモア・ホール、セント・ジョンズ・スミス・スクエア、セント・マーティン・イン・ザ・フィールドなどでリサイタルを開催。


フランス人ピアニストオリヴィア・キャノルと「デュオ・メリザンド」を組み、リサイタルを行なうほか、ピアノ三重奏団「フロイデ・ピアノ・トリオ」を結成し、フェスティヴァルに招かれるなど、室内楽演奏活動も精力的に行った。


2004年、浜離宮朝日ホールにてデビューリサイタル。野平一郎氏と共演。


その後も定期的にリサイタルを開催し、「進化し続けるヴァイオリニスト」と評価が高い。
現在は日本を拠点に、室内楽、無伴奏リサイタルなど、幅広く活動。教育にも力を注いでいる。
国立音楽大学付属中学・高等学校講師


 

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