2013年イタリア・クレモナのモンド・ムジカ
今年の弦楽器部門の出店店舗数は昨年に比べ少しだけ縮小されたものの、ピアノ展示会場の増設と共により大きな展示会として開催され、ヨーロッパ、アメリカ、日本など世界各地から多くの楽器製作者、音楽関係者が集まりました。
昨年のトリエンナーレ(第13回A.ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクール)の優勝者の方々にも1年ぶりに再会し、世界各地から著名な製作者、鑑定家が集まり様々な情報交換がされるのも、ここストラディヴァリの街クレモナのモンド・ムジカならではでしょうか。
会場内には個人製作家のブースから有名楽器店、音楽雑誌、楽譜出版社、木材、材料専門店など、音楽に関する様々な店舗が出店される他、いくつかあるカンファレンスルームでは専門家による講演会などが行なわれます。
よく耳にしたのは、今日、1800、1900年代のモダン・イタリアンの良質な楽器を見つけ出す事が大変困難になってきていると共に、その値段が上昇し続けているという事です。
理由の一つに、中国、台湾といった新しいアジアの市場がこれらの名器を探し始めている事が大きく関係していると言われています。
特にモダン・イタリアンを代表するM.カピッキオーネ、A.ポッジ、G.ポッラストリ、A.ファニョーラ、G.フィオリーニ等の巨匠達の楽器をオリジナルな状態で見つける事は大変困難になり、それらの楽器の注文を受けたディーラーと有名コレクターが情報交換をするなど、世界中に散らばった名器を探し出す作業のごとくモンド・ムジカでは、名器に対するこだわりが一層強くなっている様に感じました。
会場内に展示されていたフィオリーニ、ポッジ等を演奏し、その音色の美しさとバランスの良さ、そして楽器の持つ芯の強さは名器と呼ばれるにふさわしい貫禄すら漂わせ、世界中の音楽家、コレクターが探し求めるのも頷けました。
また新作楽器の人気も大変高く、この不況下においても価格は維持されているか値上がりしています。クレモナを代表する巨匠の一人、G.スコラーリや日本でも知られるフェラーラのA.チチリアーティ、女性初のトリエンナーレ優勝者U・デデールのブースを訪れ、楽器を手に取りながら現代の生きた巨匠達から直に楽器に対する思いやこだわりを伺う事もでき、私達演奏家も学ぶ事がたくさんあります。
クレモナ市街では、郊外のメッセ会場で行なわれるモンド・ムジカとは別に、クレモナの製作者を中心にいくつかの工房がストラディヴァリの生家や自身の工房等で独自の展示会を開催し、この新しくて小さな試みも密かな注目を集めました。
モンド・ムジカをはさんだ約一か月間は普段静かなクレモナの街も弦楽器一色になり、今年はストラディヴァリ財団の新しいヴァイオリン美術館のオープンも重なり、秋の深まりと共に芸術の誕生の地が賑わいます。
2013年もイタリア・クレモナのモンド・ムジカが9月27、28,29日の3日間、開催された。
この模様をイタリア・クレモナ本拠地にヨーロッパで活躍しているヴィオラ奏者である矢谷明子さんにレポートしていただきました。
矢谷さんは2012年第13回A・ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクール”トリエンナーレ”にて、日本人音楽家として初の審査員を務めています。
矢谷明子さん