「基本的に、夏の講習会というのは、専門的な道に進む方を対象にしたものが多いですが、僕は、ヤマハ銀座で、『チェロフェスタ』というイヴェントをやっていたことがありまして、それは、基本的にはアマチュアの方々を対象にしたもので、3日くらいのレッスンの後、コンサートを行なっていたものです。

 

そこには様々な出会いというものがありましたが、私にとっても出会いというのは大事で、お互いに財産になるものがあったわけですね。そのイヴェントは今は行なわれていないのですが、このようなものが形を変えて行なわれないかな、と考えていたところに、この《MUSIC CAMP IN IKAHO》のお話をいただきました。

 

アマチュアの方々に気軽に参加して楽しんでいただければな、と思っています。
僕らの世界は、狭いですが、アマチュアの裾野というのは凄く広いです。彼らが僕らを求めてくれるのと一緒で、僕らも彼らと出会うことで助けられることがあったり、大事なご縁になって今でも仲良くさせていただいたりしています。

 

今回も、そういうお互いの出会いの一つのきっかけになれば、と思っています。」

 

講習のポイント

 

「弦楽四重奏等の室内楽にポイントがあるのですが、特に《練習の進め方》です。アマチュアの方々が室内楽の練習を進めるときに、案外戸惑うことがあると思います。試行錯誤が重なっていくと思うんです。それは、私達もそういうところはあります。

 

勿論グループのレベルによって、それぞれ違いはあると思うけれど、その人達なりの楽曲の作り方であったり、練習の進め方であったり、あとは、具体的な技術のことであったり、そういうことのレッスンを受けてもらうことによって、もう一歩踏み込んだ演奏の表現、向上を目指していただければな、と思います。それは小森谷巧さんも仰っていたことです。」

 

── アマチュアの方にとっては、正に一歩先へゆけるものですね。

 

「そうだと思います。アマチュアの方は、上手くいっていないのは分かるけれど、どうやったら、解決できるのだろう、どうアプローチすればいいのだろう、というところで悩まれていると思うんです。

 

例えば、私はゴルフをやっているのですが、ゴルフも一緒で、一人で練習しても、なんか全然上手くいかないなぁ、ということが多々あって、じゃあどうしたら打てるようになるのだろう、と思うわけですね。それと一緒だと思います。ですから、どういうとこころで悩まれているか、をすぐに見つけて、どの対処法をすぐに提示することができると思います。

 

ですから、趣味でカルテットをなさっている方達が一皮二皮剥けるようなことのお手伝いができると思います。

 

そして大事なことは、アマチュアの方達も人前で演奏することが目的でやっているわけで、自たちだけで演奏していればそれだけで楽しい、という方々はそんなにいないと思う。

 

このキャンプの特徴は、最後にやったことの成果を披露する、つまりコンサートをすることで、人前で演奏することの大切さを最後に皆さんに味わってもらいたいわけですね。そのことによってよりモチベーションも上げていただけると思います。アマチュアの方々同士の交流の場、情報交換の場にもなると思います。それで、よりいっそう裾野が広がっていくことにお役に立てれば、と思います。」

 

── 一皮剥けるためには。

 

「一つ言えるのは、アマチュアの方々を見ることは時々あるのですが、例えば、音程をきちっと合わせて、いいハーモニーで演奏する、ということが、できそうでできない人が多い。おそらく、例えば4人で弾いていて、バスの音程が良くないとか、内声が上手くいっていない……といったことはアマチュアの方々にも分かることだと思いますが、だけど、実際にどうアジャストするといいのか、そういうことが意外と分かっているようで分かっていない、上手くいっているようでいってないグループというのが多いんです。

 

とりあえず正しい音程で弾いていたとしても、それがアンサンブルの中でいい音程であるとは限りません。基本の基本ですが、そこがまず最初に行なうべきところですね。アマチュアの方に多いのはフィンガリング、つまり指使いがあまり理にかなっていない、というか、もっと他のものを探すことで自然に演奏することができる場合が多い。

 

そういうことを私はよく発見します。指使いは、校訂者がつけたもので、良いものもあれば、演奏者本人にとって良くないものもありますから。自分で考えられた指使いで弾いておられる方もいますが、そのことが足かせになって上手くいかないことも多々あるように思います。

 

そういった具体的なアドヴァイスはできると思います。一般的には、今言ったようなことが多々見受けられると思います。あるいは音楽を構築する、これはプロでも難しいことですが、例えば、カルテットはシンフォニーとならんで、作曲家が最も力を入れる形態だと思うので、その作曲家のすべてが現われるわけです。そしてその作曲家の起承転結が楽曲の中にあるわけですが、その起承転結が、最も上手くいっていないことの一つです。

 

音程という基本的な部分も大事ですが、音楽の骨格を作る、構築する、という基礎工事が上手くいっていない場合が非常に多い。その原因はいろいろあります。先ほどから言っている音程もそうですし、ダイナミック・レンジ、テンポ設定、そういうことは具体的にいろいろあります。

 

フォルテと書いてあって、彼らはフォルテで演奏しているつもりなんでしょうが、じゃあそのフォルテに対応するピアノがなかったり。またフォルテシモとの違いがなかったり。

ですから、基本的な骨格を作ることの手助けができれば、私としても嬉しいです。」

 

── 確かにアマチュアの演奏を聴くと、ダイナミックレンジの幅の狭さを感じることが多々あります。

 

「確かにそう感じることが多いです。ただ、絶対的なダイナミックではなくて、相対的でいいと思うんです。ピアノだと思っていても、全然ピアノでなかったりしますから。」

 

── 気づいていないところを気づかせてあげるみたいな?

 

「もしかすると、そういうこともできるかもしれません。そういうところに参加していただく意義があると思いますし、また受講生の方々だけでなく、聴講される方にとっても大変に参考になるものだと思います。」

 

── アマチュアの方からも学ぶことも?

 

「本当に圧倒的に好きだからなさっている方ばかりですよね。ある種、プロよりも知識が豊富でらっしゃることもある。そういうところで、こちらが教わることもあります。そういう豊富な知識を、実践でどのように活かせるのか、そのあたりもレッスンの中で伝えられたらいいな、と思います。あるいは出会ったことによって、応援してくださる方もいらっしゃる。相互に得るものというのはたくさんあります。

 

教える中で、こういうふうに工夫しないと伝わらない、ということも分かってきます。レッスンの仕方そのものが勉強になることもあります。教わることもたくさんありますね。」

 

古川展生さん、節目の年に

 

── ご自身のこともお聞きします。これからの抱負としては。

 

「僕も速いもので都響に入って15年経ちました。節目節目でリサイタル等をやったりもしていますが、昨年、久しぶりに自主リサイタルを行ないましたが、そのように自分でやりたいと思うことを実際に形にすることをこれまでに行なってきました。

 

実は、ソニー・ミュージックダイレクトからCDを出すことになりまして、一枚は、この年末、もう一枚は来年の夏くらいにリリースされる予定です。一枚は、チェロの小品集。小品集というと、もう出尽くしているので、僕がふだんやっている他のジャンルとのコラボレーション的な音楽も含めた、今までの小品集にはないようなものを作ります。

 

具体的には、僕が最も信頼しているピアニストのひとりである塩入 俊哉さんとの共演なんですが、彼はクラシックも勿論演奏するのですが、基本的には、オリジナルを作られたり、クラシック意外のジャンルで活躍されている方なんです。彼と十年来ずっとやってきたライヴ活動の中で、彼と一緒にできることになってとても嬉しく思っています。

 

コンセプトの一つは、クラシックの作品であるけれども、それをその通り弾くのではなくて、リ・アレンジするわけです。塩入さんは、アレンジの天才でもあるんですが、例えば、ショパンの別れの曲やクライスラーの小品といったものを塩入風にアレンジしてもらって、ジャズ風の愛の悲しみ、といった新しい一面を感じてもらえるような作品を何曲か収録します。あと塩入さんは私のオリジナル作品です。

 

あと、堅苦しくないチェロの無伴奏の作品も収録します。
チェロの小品集というと、白鳥とか鳥の歌といったプログラムのアルバムというのは世界中にあるわけで、それを今僕が出しても仕方ないと思うので、今までに無い小品集、ということを考えました。

 

もう一つは、僕も40歳になりましてデビュー15周年という節目ということありまして、バッハの無伴奏組曲全曲を収録します。自分にとって久しぶりの大きな挑戦であるんですが、この一年、自分自身の表現方法であったり、技術的なこと、音楽的なこと、を掘り下げていって、2枚のアルバムにそれを活かす。そういう意味では、アルバム制作、コンサートを含めて、この一年はある意味勝負だと思っています。

 

新しい僕を見てもらえるように頑張ります。バッハの無伴奏は、やはりチェリストにとってバイブル的な作品で、それをいつ録音するのか、というのはとても重要なことですが、ある程度、若いときでないといけないのではないか、という気持ちもあって、今回録音することにしました。

 

2年ほど前から、1700年代のジョゼフ・ガリアーノを使わせていただいています。南イタリアの明るい音がします。この半年くらいでようやく馴染んできています。本当にいいなぁ、と思いながら弾いています。弓は、シュルル・ペカットとドミニク・ペカットです。ドミニク・ペカットもお借りしているのですが、本当に弓によって全然違うということがよく分かりました。どれが良い良くないではなくて、弓の特徴がそれぞれ違って、使い分けることが大事だなと思いました。

 

楽器から学ぶことがある、とよく言われていましたが、正に最近、身をもって楽器から学んでいます。楽器の持つポテンシャルによって、可能性を感じることがあります。」

 

── アマチュアの方々の中には、楽器の調整が粗末だったりする方も、意外と多いと思います。

 

「楽器の手入れ、調整ということもアドヴァイスできると思います。このキャンプで楽器のブースも設けてメンテナンスをすることができると思います。そういう意味でも、行き届いたキャンプだと思います。」

 

 

 

 

取材:青木 日出男

チェリスト 古川展生さん
プロの演奏家とアマチュアの演奏家が身近になることを
──《MUSIC CAMP IN IKAHO》

チェリストの古川展生さんとヴァイオリニストの小森谷巧さんが講師として、《MUSIC CAMP IN IKAHO》というレッスン合宿が行なわれる。これは室内楽を中心として行なわれるもので、弦楽三重奏、弦楽四重奏、弦楽五重奏、チェロ・アンサンブルなど編成は自由。

このキャンプの内容、目的、そして、プロとアマチュアとの交流について、古川展生さんに語っていただいた。

古川 展生 (チェロ)
Nobuo FURUKAWA, Cello

 

1973年5月9日京都生まれ。桐朋学園大学卒業。チェロを故・井上頼豊、秋津智承、林峰男の各氏に師事。

 

1996年安田クオリティオブライフ文化財団の奨学金を得て、ハンガリー国立リスト音楽院に留学、チャバ・オンツァイ教授に師事。

 

1997年第27回マルクノイキルヘン国際コンクール(ドイツ)チェロ部門にてディプロマ賞受賞。1998年帰国後、東京都交響楽団首席チェロ奏者に就任、現在に至る。2003年第2回齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。

 

ソリストとしても、東京都交響楽団をはじめ国内多数のオーケストラ、著名指揮者と共演を重ねるほか、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を中心とした室内オーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」、レニングラード国立歌劇場管弦楽団等と全国ツアーで共演、いずれも絶賛を浴びた。

 

各地においてソロリサイタル、国内外の演奏家との共演など室内楽の活動も精力的に展開。サイトウ・キネン・オーケストラ、宮崎国際音楽祭にも毎年出演している。

 

また、ポップス、ジャズ、タンゴなど他ジャンルのアーティストとのコラボレーションやライブハウスでのコンサートも積極的に行なうなど、クラシックのみならず、形態にとらわれない幅広いフィールドで目覚しい活動を続け、映画「おくりびと」のテーマ曲のソロ演奏を担当するなど、人気、実力ともに各方面より注目を集めている。これまでに6枚のソロアルバムと2枚のベストコレクション(クラシック/クロスオーバー)をリリース。


1995年に結成したストリング・クヮルテットARCOでは、1999年大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門第3位に入賞(邦人として最高位)。


また2007年には、藤原道山(尺八)、妹尾武(ピアノ)とユニット「KOBUDO−古武道−」を結成。あらたな音楽の創造を目指した演奏・制作活動を展開している。

 

古武道としては、2007年5月にファーストアルバム<KOBUDO>、2008年6月にセカンドアルバム<風の都>をリリースしている。

 

 

 

 

 

《MUSIC CAMP IN IKAHO》
日程:10月4日〜6日
会場:如心の里 ひびき野(群馬県渋川市伊香保町403-125)
TEL.0279-72-7022
http://musiccamp.jp

申込資格:年齢・プロ・アマ問わず。
申し込み方法:03-5368-1366へ
電話。
参加費等詳細は、お問合せください。

 

【講師によるミニコンサート】
豪華演奏者の演奏をすぐ間近で聴くことが出来るまたとないコンサート。
出演:小森谷巧(読売日本交響楽団コンサートマスター)
古川展生(東京都交響楽団首席チェリスト)

日程:10月4日(金)
時間:開演 20:00(開場19:45)
会場:伊香保温泉 如心の里 ひびき野内"スイングバー"
チケット:2,000円

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