ヴァイオリンの状況が貼られている。発表にショウアップされた雰囲気は一切ない。

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随分と早くから人々が無料入場券を求めてスタジオ前に集まっている。

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ウルフ・ヘルシャーやシトコヴェツスキなど審査員は後ろから客席越しに演奏者を眺める。

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オーストリアのチェクノボリアン君は、ヴィブラートの強めのフランクが筆者にはちょっと気に入らなかったが技術は立派で、見事にセミファイナルに至った。ボムソリ嬢はベリオが猛烈に立派だった。

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バイエルン放送スタジオ前に掲げられた巨大段幕。秋の風物詩だ。

日曜日の午後から急に曇り空になり、雨が降り始めた。一夜明けた月曜、天気は回復したものの、ミュンヘンは一気に秋の空気。先週まで半袖どころか裸みたいな格好でうろついていた観光客達もいきなりジャージーを羽織り、朝の地下鉄のサラリーマンはしっかりジャケットを着込んでいる。ARDのコンクールが終わり、日本のお花見シーズンのようなビール祭り、オクトーバーフェストが終われば、もう秋も本番だ。

 

4部門が淡々と進むミュンヘンARD国際音楽コンクール、9日月曜日はなにやらお休み日のような感じになってしまい、やっているのはヴァイオリン2次予選1日目のみ。会場は大会本部も置かれるバイエルン放送のスタジオだ。先頭式ホームのミュンヘン中央駅にドイツ各地やザルツブルク、チューリッヒなどからの列車が突っ込んでくる長大なホームの外れ北側に聳えるバイエルン放送本社ビルは、この街を陸路で訪れた方ならご記憶にあるかも。会場となるスタジオはその北側の低層ビルに収まっている。入口に掲げられたコンクール大段幕は、ミュンヘンに秋の到来を告げる風物詩だ。

 

世に名高いミュンヘン・コンクール、それもピアノと並びコンクールの華たるヴァイオリンともなれば、それこそ華々しく賑わっているとお思いだろう。ところがどっこい、これが案外と地味なのだ。放送局にしてはセキュリティがノンビリした正面を通り、一昔前にはモダンだった内装が逆に時代を感じさせる内部を真っ直ぐ進むと、もうスタジオの前。途中に音楽院同様コンクール経過を伝える張り紙がべたべたと掲げられ、公式案内所のお姉さんがノンビリお昼ご飯のパスタを喰らっている。ここコンクール、現場裏方は殆どが音楽院の学生アルバイトのようで、制服などなく、昨日まではまるで夏の海岸のバイト君みたいな格好をしてたのに、今日からは、みんなジーンズに、長袖のTシャツになっている。

 

ヴァイオリンとはいえ2次予選まではやはり無料。スタジオの前で放送局のオバチャンが定員枚数のチケットを配り、それがないとロビーのテレビモニターでの鑑賞になってしまう。なにごとにも心配性のドイツのご隠居たちは、随分と早くから来てロビーで待ち、切符をなんとか手にするとようやく安心して、今度は扉の前に列を作り始める。ドイツの地下鉄やバスで、自分の降車する駅の2つ前くらいからソワソワしているおばーちゃんがいっぱいいるようなものだ。

 

さて、ヴァイオリンの予選会場は、昨年は弦楽四重奏の予選会場となった最も広い第1スタジオ。並びあった第3会場では一昨日までヴィオラの予選が行なわれていた。隣り合ったスタジオでヴァイオリンとヴィオラの予選を同時に行なっているなんて、正に「コンクールのデパート」ミュンヘン大会の面目躍如である。400程の席が並ぶスタジオのいちばん後ろに、一段高くなった審査員席が設置されている。

 

今回のヴァイオリンは招聘38人で、33人が参加。うち日本人7名韓国人9名。2次予選段階で13人に絞られている。相変わらず経歴はまるで記されぬ公式プログラムだが、ヴァイオリンともなればこちらも知らないわけではない名前が並ぶ。例えば2次予選に残った中には、唯一の日本人サバイバーの和久井映見、先頃の仙台大会で5位となったキム・ボムソリなどもいる。筆者とすれば、昨年の弦楽四重奏部門で2位となったノーヴスQのヴァイオリン奏者キム・ヨンウクがいるのがなんとも嬉しい。ちなみにミュンヘン音楽院で研鑽中のノーヴスQからは、ヴィオラ部門にもリー・スングォンが参加し見事にセミファイナルまで進出した。

 

セミファイナルのヴァイオリンは、モーツァルト若しくはベートーヴェンの「クロイツェル」を除くソナタ。それにブラームスやらフォーレやらからプロコフィエフまでのロマン派1曲と、無伴奏現代曲とが課題。詳細は省くが、筆者が聴いた3人は流石にそんじょそこらの大会のファイナリスト級の実力者ばかりで、流石にミュンヘンと驚かされた。結果から言えば、ボムソリ嬢を含むその3人はなんと全員がセミファイナルに進出したとのこと。さもありなん。

 

さても、これからトリオのセミファイナルに出かけねばならぬので、ヴァイオリン部門の詳細はまたいずれ、セミファイナル以下で。あとは写真をご覧になり、雰囲気を味わっていただきたい。

 

なお、セミファイナルはこちらの12日午後4時、日本時間の12日午後11時から行なわれた。参加者は演奏順に、ジヨン・リム(韓)、エマニュエル・チェクナヴォリアン(オーストリア)、クリスタル・リー(米)、ボムソリ・キム(韓)、ボキョン・リ(韓)、ディアナ・ティシチェンコ(ウクライナ)。ハイドンかモーツァルトの協奏曲と、委嘱新作が披露れた。

 

ファイナリストは、クリスタル・リー、ボムソリ・キム、ディアナ・ティシチェンコとなった。フィアナルは日曜の日本時間午後11時から、ブラームスとシベリウスの協奏曲が演奏される。

 

ヴァイオリン予選は案外と地味  音楽ジャーナリスト 渡辺和

ミュンヘン便り(その3

ミュンヘン国際音楽コンクール

Internationalen Musikwettbewerbs der ARD München

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