2002年に設立され、以後、日本人作曲家作品の演奏に積極的に取り組んでいるオーケストラ・ニッポニカが、故・石井眞木氏の作品と縁のある作曲家の作品を演奏する。

7月14日に行なわれるこの演奏会のお話を中心にうかがった。

 

オーケストラ・ニッポニカ

第23回演奏会 没後10年 石井眞木へのオマージュ

インタヴュー

『没後10年 石井眞木へのオマージュ』 

 

吉野泰明(ヴィオラ)「作曲家の石井眞木さんの没後10年ということで、こういった企画を立てました(指揮は野平一郎氏)。眞木さんの曲を3曲。1曲はリコーダーのソロ曲です。それから、眞木さんの師匠である伊福部 昭さんの交響譚詩。そして、中国の作曲家、陳明志さんの委嘱作品を演奏します。 陳明志さんは、日本で石井さんに出会われ、陳さんが中国に帰られてからは、お二人で北京での音楽祭の企画を立てたりされていましたから、兄弟分のような間柄だったと言ってよいと思います。」

 

ーー委嘱作品は、どのようなきっかけで依頼することに? 

 

吉野「ニッポニカ設立3年目の年に、北京に演奏旅行に行ったのですが、その企画は、全て石井眞木さんが立ててくださり、その演奏旅行のプログラムの中に、陳明志さんの作品があったのです。その頃からニッポニカとのご縁がありました。」

 

古楽同源・新楽共創

 

ーーこれまでも、新曲を委嘱、演奏されていますね。

 

加藤のぞみ(ヴァイオリン)「先程お話ししました、団設立3年目に中国に行ったきっかけというのは、石井先生からのお声がけで、先生が準備してくださったから実現できたのですが、その企画のスローガンが《古楽同源・新楽共創》でした。古い音楽の源は一緒。新しい音楽を共に創る、という意味です。

 

外国と自国の委嘱作品を演奏して交流する、といったコンセプトの演奏旅行でした。今年の2月には、フィリピンへ演奏旅行したのですが、今回も、フィリピンと日本の作曲家に室内楽と交響曲を書いていただき、4曲演奏しました。」

 

ーーそういった方針がその当時からあったわけですね。 それにしても、4曲の委嘱作品を準備するというのは、ご苦労もあったのでは?

 

奥平 一(ヴィオラ)「決心してから3年かかりました。企画が持ち上がってからは、10年近くかかっています。」

 

ーー何故、フィリピンだったのですか?

 

加藤「私たちがこういった企画を立てるきっかけになっているのは、個人的な繋がりが発端になることが多いです。最初の中国への演奏旅行は石井先生とのご縁。次にベトナムに行ったのですが、それは、本名徹次先生が築かれたベトナム国立交響楽団とのご縁。そして今回のフィリピンの場合は、フィリピン文化センターという、日本でいう文化庁のような組織の代表と団員とが知り合うことができ、それが直接的なきっかけとなりました。」

 

11月の演奏会は『歌手・荻野綾子さんの追憶に』

 

吉野「今年もうひとつの演奏会は、11月24日で、こちらは、歌手の荻野綾子さんをテーマに、フランス歌曲、日本の歌曲、フランス歌曲にまつわる作曲家の作品を取り上げます。」

 

奥平「R・シュトラウスの『四つの最後の歌』や、マーラーの作品にも、オーケストラ付きの歌曲があり、それらは日本でも盛んに演奏されていますが、日本人の作品の中にも、オーケストラ付きの良い歌曲がたくさんあるんです。

 

そして、そういった作品を故・荻野綾子さんは、たくさん初演されました。日本の作品だけでなく、海外の作品の初演も多いですね。ニッポニカでは、これまでの10年間で、荻野さんが初演した作品をかなりの数、再演しているのです。

 

今回のプログラムに入ってる、橋本國彦さんの『笛吹き女』を取り上げるのは、この演奏会で3回目ですし、そもそも、今回のプログラムは、荻野さんが1929年にリサイタルをしたときの再現なのです(ショーソンのシンフォニーを除く)。そういうことで、荻野さんの業績を伝えることができたら、と考えています。

 

一昨年、東京芸術大学に荻野綾子文庫が設けられ荻野さんの資料が閲覧できるようになっています。また、荻野さんの出身地である福岡では、昨年、かなり大規模なシンポジウムも開催されました。

このように、社会的な動きがある中で、再度、荻野さんの業績を振り返ってみよう、ということになりました」

 

ーー毎回、凝ったプログラミングですから、固定ファンも多いのでは?

 

奥平「集客は毎回大変ではあるのですが、音楽関係の方々も来てくださいますし、固定のファンに支持していただいている、といった実感があります。」

 

設立10周年 記念事業

楽譜のアーカイブ化

 

奥平「私たちは、これまであまり取り上げられていない作品を積極的に取り組んでいますが、そのために、楽譜を探し当て、整備し、できるだけ録音して残してきました。それは、広く世の中で聴いていただきたい、という思いでやっているんですね。全部の演奏会を、というのはなかなか難しいのですが、ここ数回はCDに収録し、オクタヴィア・レコードからリリースしています。

 

譜面の整備ということでは、これまで、私たちが演奏した曲目についてをアマチュアのオケ、音楽大学だけでなくプロのオケからもお問い合わせをいただき、私たちが整備した楽譜を使っていただいています。

 

ただ演奏するだけではなく、そういった実績もあり、それも大事な活動の柱として意識しています。」 

 

加藤「演奏される機会の少ない日本人の作品は、文献上はリストに載っていても、見つからないこともありますし、図書館に所蔵されている楽譜であっても、実際に見せていただくと、散逸してしまって、部分的にしか残っていない、ということもあります。その場合は欠落した部分を補う作業が必要です。

 

『ある』と言われている楽譜も、演奏に耐えうる状態かどうかは、この目で確認するまで分かりません。」

 

奥平「このように、時間と手間をかけて我々が整備した楽譜を、できればもっと多くの方々に、アマもプロも境目無く、演奏したいという希望があれば使って頂けるようにする仕組みづくりを具体的にすすめています。来年中にはそういった環境を整えたいと思っています。10年の記念事業と、捉えています。

 

こういった取り組みの重要性を広めるために、様々な機関に声をかけて、催しを行なうことも計画しています。

 

第23回演奏会

没後10年 石井眞木へのオマージュ

 

日時:7月14日(日) 14:30開演(14:00開場)

会場:紀尾井ホール

出演:指揮=野平 一郎 打楽器=菅原 淳**

   リコーダー=鈴木 俊哉*

   管弦楽=オーケストラ・ニッポニカ

曲目:石井眞木/交響的協奏曲(1958)初演

陳明志/《御風飛舞》 in the memory of Ishii Maki(2013)委嘱作品

石井眞木/ブラック・インテンションⅠ*(1976)

伊福部昭/交響譚詩(1943)

石井眞木/打楽器とオーケストラのためのアフロ・コンチェルト 作品50 ヴァージョンB**(1982)

料金:全席指定  S 3,000円、A 2,000円

問合せ:ticket@nipponica.jp

申込み:http://www.nipponica.jp/tickets_form.htm

取材/向後由美

第24回演奏会 歌手・荻野綾子の追憶に


会場:紀尾井ホール
出演:指揮=野平 一郎
   ソプラノ=手嶋 眞佐子*
   管弦楽=オーケストラ・ニッポニカ
曲目:ショーソン/「愛と海の詩」より(1886)*
   近衛秀麿編曲/「フランス17世紀歌謡集」(1929)*(楽譜所在調査中)
   橋本國彦/笛吹き女(1929)*
   ショーソン/交響曲(1889)

オーケストラ・ニッポニカ

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