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インタヴュー

ドイツ、ミュンヘンを本拠地にヨーロッパで活躍しているヴァイオリニストの田中晶子さんが、ゲストにマキシム・ヴェンゲーロフ氏を招いて、久しぶりに東京でリサイタルを行なう(6/6 14時 紀尾井ホール)。



これはヴェンゲーロフ氏が今年から、日本でフェスティヴァルを展開していく中での一つの企画でもある。海外でソリストとして活躍している日本人奏者が、日本でリサイタルを行なう時に応援するというものだ。今回は田中晶子さんのリサイタルにヴェンゲーロフ氏がゲストとして出演する。

田中晶子ヴァイオリン・リサイタル

【日時】6月6日(木)14時
【会場】紀尾井ホール
【共演】新井博江Pf

【ゲスト】マキシム・ヴェンゲーロフVn


【曲目】ラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ第3番、サン=サーンス/ヴァイオリン・ソナタ第1番、クライスラー/プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ、ファリャ/歌劇『はかなき人生』より、スペイン舞曲第1番、サラサーテ/カルメン・ファンタジー、他
【ヴェンゲーロフとの共演曲】ショスタコーヴィチ/2つのヴァイオリンのための小品より、サラサーテ/ナヴァラ、ヴィエニアフスキ/カプリス第2番
【チケット】S¥7,500 A¥6,000 学生¥3,000 SS¥25,000(ホテル・ニューオータニでのパーティ付き)

 

なお、このリサイタルは、マキシム・ヴェンゲーロフと過ごす1日の1つの公演として開催され、引き続き16時半よりヴェンゲーロフのマスタークラス、19時よりホテルニューオータニでパーティーが開催される。


【詳細】
Flagship Japan 050-3633-6951



Akiko Tanaka
桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学ディプロマコースを経て、ロンドンのギルドホール音楽院に入学し、イフラ・ニーマンに師事。その後、ドイツのマンハイム音楽大学に移り、ワンダ・ウィウコミルスカに師事。


ビシー国際音楽コンクールで第1位を受賞したほか、シベリウス国際ヴァイオリン・コンクール、ハノーファー国際ヴァイオリン・コンクール、ヴィニエアフスキー国際ヴァイオリン・コンクール等で上位入賞。


ロンドンのクイーン・エリザベス・ホールでデビュー後、30カ国以上でソリストとして活躍中。北ドイツ放送響、ハンブルク響、ヘルシンキ・フィル、ポーランド放送響、日本の主要オーケストラ等と共演。ユッカ=ペッカ・サラステ等の著名な指揮者と共演。室内楽では、エレーヌ・グリモー、ヴァディム・レーピンらと共演している。


これまでに、曽我部千恵子、辰巳晶子、イフラ・ニーマン、ワンダ・ウィウコミルスカ、ヘルマン・クレッバースの各氏に師事。来年より、音楽大学等日本の音楽教育機関で指導も行なう予定。

凱旋公演



田中「前半はラヴェルのソナタ、サン=サーンスのソナタ、どちらも最終楽章は、無窮動的な作品で、二人の感情を聴き比べるのも面白いかな、と思っています。後半はヴァイオリンという楽器の音楽を存分に堪能できる作品ばかりを集めました。フォーレで始めて、クライスラーのプレリュードとアレグロ、愛の悲しみ、そしてファリャのスペイン舞曲、ドヴォルザーク=クライスラーの母が教え給いし歌、最後にサラサーテのカルメンファンタジーですね。今まではワックスマンの方のカルメンファンタジーばかり弾いていたのですが、ピアノ伴奏の時は、サラサーテの方が映えるようですね。最後の部分が不可能なくらい難しい作品です。この局は桐朋学園の卒業演奏のときに沼尻さんの伴奏で演奏した想い出の曲なので、原点に戻った感じですね。」


──今回のプログラムはラテン系が中心ですね


田中「元々大好きですから。ラロのスペイン交響曲も私の中では特別な曲ですし。今回の曲目はとても自分に合っていると思います。


コンサートの最後に、マキシムと一緒にデュオをします。特にショスタコーヴィチの『2つのヴァイオリンのための小品』は、意外とあまり聴かれていない曲ですが、素晴らしい作品です。


ヴェンゲーロフがヴァイオリン二本のための作品を演奏することはほとんどないので、今回のプログラムも彼は初めて弾くものばかり、と言っていました。


先日、ミュンヘンで会ったときも、楽譜を頂戴、とか言われて私の楽譜を全部持って行きました(笑)。」


──ヴェンゲーロフさんに対する印象というのは。


田中「彼はとても熱いです。エンターテイナーとしてもピカ一。芸術性との両方を兼ね備えている方というのはなかなかいませんから、素晴らしいと思います。人間味にもあふれている。共演できることは光栄です。」


──今回共演されるピアノの新井博江さんとは。


田中「新井さんは桐朋学園の准教授になられていて、とてもよく親しくしている先輩で今まで何回も共演させていただいています。ヴァイオリンとの共演は、五嶋龍さんとの共演はありますが、ソロを中心に活動されています。素晴らしいピアニストです。」



オーケストラのトラで、マゼールの凄さを



──ヴェンゲーロフさんとの合わせはすでに?


田中「実は、4月13日にする予定だったのですが、ミュンヘン・フィルと五嶋龍君とのリハーサルを聴きに行ったとき、ミュンヘン・フィルのコンサートマスターに偶然階段で会って、そのままミュンヘン・フィルのエキストラになって、それで今回(このインタヴューは4月前半)私はロリン・マゼール指揮のミュンヘン・フィルのツアーで日本に来ているんです(笑)。ですから、彼との合わせはまだやっていないんです(笑)。


私はオーケストラの中で演奏することはほとんど無かったので、とてもいい経験をさせてもらっています。ただ曲目がヘビーで、ストラヴィンスキーの『春の祭典』とか弾いたことの無い曲ばかりです。でも今回マゼールの下で演奏できるというのは本当に得がたい体験です。あの頭脳は人間とは思えないほど凄いと思います。『春の祭典』も全部暗譜! あのクリアーな指揮、本当に凄いですね。」


──ふだんオーケストラ作品を弾かないのに、いきなり『春の祭典』ですか。


田中「一晩一睡もしないでさらいました(笑)。その他に、ヴァーグナーのタンホイザー、トリスタンとイゾルデ、ブルックナーの3番、ベートーヴェンの7番、4番……といった作品を弾きました。またとない貴重な体験ですね。


 

マゼールは、ご自身がヴァイオリニストだったこともあるのか、ボーイングの指示が独特なんです。ベートーヴェンの7番の1楽章のあのターンタタン、ターンタタン……のリズムですが、全部ダウンボウから始めるんです。つまり、最初の音を長くして欲しいんですね。だけど、慣れていないと凄く大変です。彼が指揮をするときのパート譜は全部作ってあるんです。L.Mというイニシャルが入っているのですが、ダウンアップ、弾く線の指示……、ボーイングに関しては考え尽くされているという印象です。ですから、リハーサルはほとんど何もしない。」


──ふだんのソロ活動とどんな違いを感じましたか?


田中「比べることはできないですけれど、ただ、みんなで弾くという楽しさは凄くあると思う。ミュンヘン・フィルは、皆さんとても気さくで仲良しなんですよ。」


──ふだんコンチェルトで指揮者と共演されるのと、何か違った印象も?


田中「指揮者と長いリハーサルをすることはコンチェルトではあまりないので、オーケストラ作品で指揮者と長い時間、接するのはいろいろな面で勉強になります。」



あまりに楽しい子育て



──ミュンヘンを本拠地にして何年くらいになりますか?


田中「十年以上ですね。東京は何年ぶりでしょうか。それこそ凱旋公演ですね。実は娘の子育てに集中した時期が合って、それがあるからこそ、演奏活動は、今ものすごく新鮮なんです。自分の根本に帰ってきたような感じがするんです。やはり私の場所は、ここだ、みたいな気持ちですね。子育ての時期があったからこそ今があるということを凄く感じるんです。」


──子育ての時期、楽器にもあまり触らなかったとか。


田中「そうなんですよ。あまりにも楽しくて。」


──楽しい? 大変という感じではなかった?


田中「大変だとは一度も思ったことは無かったです。私の場合、本番前にある程度準備ができると、むしろ気分転換の方が必要になって、その意味で、娘がいるおかげで凄くいい刺激になって効果がありました。とても音楽が新鮮になりました。子供がいるからこそ、体の中から今までとは違った力が沸いてくるみたいな。かつて燃えていた頃とはまた違った深い情熱が芽生えたように思います。」


──来年から、日本の教育機関でも教える予定だそうですね。


田中「まだ、詳細は決まっていませんが、いろいろな先生から素晴らしい教えをいただいたので、それを次の世代に伝えていきたいと思っています。

それが使命かな、と思う歳にだんだんなってきました(笑)。」

田中晶子・インタヴュー

リサイタルを前に(6月6日14時 紀尾井ホール)(コンサートは終了しました。)

ヴェンゲーロフとの共演
 

© 2014 by アッコルド出版

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