満席のお客様を迎えて


 4月1日。リニューアル・オープン式典は、オルガニスト松居直美さんの「トッカータとフーガ」で始まりました。ホールアドバイザーでもある松居さんは、2011年3月11日、翌日の公演のために、このホールでひとりリハーサルをしていて震災に遭いました。廊下に出て大きな揺れが収まるのを待ちながら、ホールに響く何かが壊れる音を聞いていたと言いますから、まさにその場に居合わせたのです。

 そのホールを松居さんのオルガンが再び開け放つのは、なかなか素敵で感慨深い演出です。


 ピカピカながら、内装はまったく変わらないホールで、降り注ぐオルガンの響きを聴いていると、ホールが戻ってきたという実感と、市やホール関係者の皆さんの晴れやかな安堵感や、1,900席満席の聴衆の期待が感じられ、一つのホールの持つエネルギーや果たす役割の大きさを今更ながら知りました。


 阿部市長、来賓のご挨拶の後、同じくホールアドバイザーを務める大谷康子さんのヴァイオリン、小川典子さんのピアノという、普段は見られない共演で「乾杯の歌」「G線上のアリア」「ツィゴイネルワイゼン」、ピアノ・ソロで「トルコ行進曲」。アンコールは大谷さんの名人芸、2階席まで歩きながらの「チャルダッシュ」に手拍子がわくというお祝い気分満載で、会場に笑みがこぼれました。


 フランチャイズオーケストラ、東京交響楽団(以後、東響)のソロ・コンサートマスターである大谷さんは「ミューザで演奏するようになってから、音響がいいとよく聴き合うので、音が浄化されてきれいになりました」と話すと、小川さんは「休館した時、市長の『音楽はソフトなのだから』といち早く代替公演を決め、各地で演奏を続けたことに感銘を受けました」と振り返りました。多くの方が休館を惜しみ、支援の手を差し伸べ、またスタッフが強いチームワークで乗り切ってきた2年間は、苦しいながらも実り多かったようです。ミューザ再開館後も市内各所でのコンサートを継続してほしいという、市民の嬉しい要望もそのひとつです。





変わらない音響と優れた耐震性を兼ね備えて


 第2部は、ユベール・スダーン指揮、東響の演奏で「スペイン狂詩曲」「ボレロ」。オープン前には東響がサウンドチェックのための試奏をしていますが、その際には桂冠指揮者でありホールのチーフアドバイザーでもある秋山和慶さんが、すべての座席を回って試聴し「前とまったく変わらない」とお墨付きを出しました。常任指揮者の大友直人さんは「以前より洗練されてそれぞれの楽器や音の響きがとても明瞭になった」とコメントを寄せています。響きを変えず、ごく稀に起こる地震にも対応できる耐震性を得たわけです。


 東響の演奏は、団員の喜びと、終盤に向かって高揚していくボレロの曲想によって、一層祝祭気分を演出していました。また、カーテンコールでトロンボーン奏者に起こったとりわけ大きな拍手を聞きながら、聴衆もなかなかよく聴いていらっしゃると嬉しくなりました。よいホールによい奏者、楽団、そしてよい聴衆。これらが揃って、2年止まっていた時計を動かし、ホールを育てていくのでしょう。


 式の最後に「プロにとっては響きのいいホールとして、市民にはハレの舞台として」という言葉がありましたが、プロの奏者だけでなく、広く市民、アマチュア奏者のハレの舞台として使われることが、ホールの高い稼働率をさらに押し上げています。アマチュアにとってはとても幸せなことですし、バックステージの使い勝手のよさ、丁寧に応対してくれる職員、スタッフの存在は大きな魅力です。





多彩なコンサート・スケジュール


 7日の同楽団の「MUZAリニューアルオープンコンサート」はブルックナーの9番にテ・デウムを続けてのプログラムで完売。これもまたすこぶる評判がよかったと聞きます。


 今後も、東響との「名曲全集」シリーズや人気企画の「フェスタ サマーミューザ」はじめ、秋にはウィーン・
フィル(11/16)、ロイヤル・コンセルトヘボウ(11/17)、ベルリンフィル(11/20)による驚きの「海外オーケストラ・ウィーク」など、コンサートカレンダーは多彩な公演であふれています。それに伴い、一時は2400人ほどに落ち込んだ「友の会」会員も、3,000人を越えて伸び続けているとのこと。


 お好きなプログラム、贔屓の団体の公演がきっと見つかりますので、まずは新しいミューザを味わってみませんか。


  

コンサートプログラム、友の会情報など詳しくは
ミューザ川崎シンフォニーホール

http://www.kawasaki-sym-hall.jp

ミューザ川崎シンフォニーホール

感動を、またこの場所で。

2年の休館を経てリニューアルオープン      文・重松貴子

式典の模様

フランチャイズオーケストラ:東京交響楽団

内装はもちろんのこと、幸い難を逃れたパイプオルガンもスイスから技術者が来日し、メンテナンスが行なわれた。



写真・堀田正矩

式典での阿部市長のご挨拶

開館に先立ち、3月25日には友の会会員や関係者を入れ、東響の避難訓練演奏会を開催。総勢550人が演奏会途中で、非常階段を使用して2階の広場まで避難した。

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