インタヴュー

ラボ・エクセルシオ 新章Ⅱ

「現代から未来へ~弦楽四重奏の挑戦!」

日本には数少ない常設の弦楽四重奏「クァルテット・エクセルシオ(以下「エク」)」、その活動は日本の室内楽界では重要な位置を占めている。現代音楽においては積極的に積極的な演奏活動だけでなく、コーチング・ファカルティを勤めるサントリーホール室内楽アカデミーでは現代音楽ワークショップも行なってきた。4月19日に行なわれる彼らのシリーズ「ラボ・エクセルシオ」に関して、練習の合間に話を伺った。

​ーー本日はお時間を頂き、ありがとうございます。さて、現代音楽に積極的に取り組んでいくシリーズ「ラボ・エクセルシオ」ですが、クラシック音楽に馴染みの無い方にはどうしても敬遠されてしまいがちな「弦楽四重奏」で、同じく好まれにくい「現代音楽」への取り組み。なぜ敢えてその挑戦をなさっているのでしょうか?

エクはコンクールに挑戦しているような随分昔から、現代音楽への取り組みには高い評価を頂いていたのですけれども、コンサートのシリーズとしてもこれまで沢山行なってきました。



私たちのホームページでも書いていますが、多くの作曲家はとりわけ弦楽四重奏という完成された形態に対する要求を高く持ち、「自分自身の作曲過程にある到達点」として、完成度の高い作品を作り上げていくことが常です。練習では複雑なリズムや音程の微細化、頻繁に行なわれるテンポ変化、目まぐるしい特殊奏法などを、大胆に、かつ一つ一つ丁寧に音作りを進めていきます。そうすることで、今まで聴いたことのない、新しい「音」が生まれます。それは誰も接したことのない新しい音楽です。新しい音楽を聴くことによって今までと違った感覚を呼び起こし、聴きなれていると思っている音楽も、またひと味違った印象で聴き手の耳に届くはずです。皆さんの「耳の可能性」を広げる経験に繋がるんですね。


ーー新章ラボ第2回ということで、今回はスカルソープの第11番、三善晃の第2番、バルトークの第2番を演奏されます。選曲のコンセプトは?


バルトークの弦楽四重奏曲は、新章のラボでは全て取り上げようと決めていました。

三善先生の曲は、以前に弾いたことがありました。紀尾井ホールで行なわれていた現代音楽の企画だったのですが、とても前のことなので、今回はまた完全に新しい新鮮な気持ちで取り組んでいます。「こういう曲があるので、他の方々にもどんどん弾いて欲しい、レパートリーにして欲しいな」という気持ちもあって、取り上げてみました。実際にもっと演奏機会のあって良い曲なんじゃないかな。

スカルソープはオーストラリアの作曲家で、多くの弦楽四重奏を書いています。11番は1990年の作品ですね。今回の中ではこれが一番新しい曲ですね、20数年前。


ーー「現代音楽」の中では、比較的古い作品が集まっている?

新章になって、実はプログラム構成にあたって、作曲された時代などでは特に区別していなくて、敢えてバルトークのような少し古い作品も取り入れているんです。


選曲においては自分たちが「良い曲だな」って思う曲がまず大前提にあります。でも演奏されている機会が少ない曲。つまり、今はあまり知られていないけれども名曲になって欲しい曲を取り上げるようにしています。人に聴かれる場を作ることで、次世代に引き継がれていくチャンスをつくりたいです。



そして室内楽作品を聴く愛好家の方に来て欲しいのはもちろんですが、同時にご自身で楽器を弾かれる方にも来て欲しいですね。このような作品を我々だけでなく、もっと多くの方々に弾いていて欲しいです。残念ながらこのまま放っておいても弾かれる機会のある曲ではないと思いますので、このよう作品を紹介することで多くの人に聴いて貰って、また演奏されることによって、人々にもっと知られる名曲になっていくことを願っています。


ーー三善先生の作品に取り組むのは2度目。先日はギターの大萩康司さんと「黒の正座」(弦楽四重奏曲第3番としても編曲されている)も演奏していました。エクの邦人作品の演奏は、海外でも高い評価を得ていますね。

三善先生の曲は特に気持ちが込めやすいです。三善先生の独特のハーモニーやリズム感、そしてその世界を自分たちで理解して、表現したいなという意欲がわいてくる作品だからこそ、今回も取り上げているんです。

比べてよいのか分からないけれど、たぶんベートーヴェンなどに通じるような、とても深い情熱がこの曲に込められている印象があります。音のエネルギーなどは、普通では考えられない程の強さを感じます。

三善先生の曲は全体的にそのような印象があるのですが、とても美しかったり、時として暴力的にすら感じるようなエネルギーの奔流、激しい情熱などがありますね。もちろん、お姿からはあまり想像はできませんが(笑)。


ーー弦楽四重奏としては、日本人作曲家の重要な一人ですね。

西村朗先生が以前おっしゃっていたことですが、ベートーヴェン、バルトーク以降は彼らほどの弦楽四重奏の傑作は無いそうです。やっぱりバルトーク以降にはとてつもない壁はあるんでしょうね。それを打ち破るような作品は、日本の中ではまず三善先生の作品という事になるのかもしれません。



もちろん、西村先生にも素晴らしい作品があるのも私たちは知っていて、前回のラボ・エクでは取り上げさせていただきましたよ。

いつかは若い日本人作曲家が書いた、素晴らしい作品などを発表する場となっても良いですね。それこそ本当にラボラトリー(実験工房)のように。


ーー先ほど「バルトークは全ての作品を取り上げていこう」とありました。新章として改めてラボを行なうにあたり、長期的な展望などで大切にしたいことはありますか?

ラボ・エクセルシオはメンバーの得体の知れない熱意で動いているので、それを言葉にするのは難しいですね(笑)。

新章になる前もラボは、何年にもわたって様々な切り口で取り組んできましたが、新章になってからは、まず「現代音楽のレトロ」な部分に立ち返ることになっています。温故知新とでも言いましょうか、古きをたずねて新しきを知ると。自分たちに対しても少し原点回帰を求めているのかもしれませんね。



原点にしっかり立ったら、次の新しい未来がはっきり見えるのだと。


ーーでは読者のみなさんに、今回の演奏曲の魅力をお伝えいただけますか?

三善先生の作品に関しては、若い頃の作品の弦楽四重奏曲1番などとは作風は全然違いますね。演奏をしていると、込められているものが全く違うように感じるんです。曲としてとても洗練されています。



スコアには三善先生自身の言葉で、



「形式的な弦楽の作品を考えていったときに、その心の足場固めとして、自分の懐のロマン的なものを確かめて」



 って書いてあるんです。



演奏家や聴き手によっても少しずつ変ってくるのかもしれませんが、この作品には三善先生の考える「ロマン的なもの」が込められているんですね。

国や時代も少し違いますが、バルトークの曲もとてもロマン的ですよね。ハンガリーのメロディーや、リズムがとても情感豊かに使われている。

そういう意味ではスカルソープも、オーストラリアの古代から存在する岩など、自国の大自然への愛情が弦楽四重奏で表現されているので、とてもロマン的ともいえますね。

今回の演奏会では、20世紀の作曲家がそれぞれの形でどのように「ロマン的」を、弦楽四重奏で表現しているか聴いてみて下さい。



ーーありがとうございました。素晴らしい演奏を期待しています。

ラボ・エクセルシオ 新章Ⅱ

「現代から未来へ~弦楽四重奏の挑戦!」
 

日時:4月19日(金)19:00開演
会場:音楽の友ホール
曲目:スカルソープ:弦楽四重奏曲第11番
   三善 晃:弦楽四重奏曲第2番
   バルトーク:弦楽四重奏曲第2番


18:30より作曲家・西村朗氏によるプレトーク

(聞き手:音楽ジャーナリスト・渡辺和)

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