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他校の音大生と一緒に

ーー皆さんはどちらの大学に在籍されているのですか?



​篠崎史門さん(以下 篠崎)「上野学園大学を卒業して、今は桐朋学園大学の研究科に在籍しています。専攻は打楽器です。」



野崎りいなさん(以下 野崎)「私は東京音楽大学を卒業して、今は大学院科目等履修生です。楽器はヴァイオリンです。ナナシオケには、第1回公演には演奏のみで参加していて、第3回公演から運営にも関わるようになりました。篠崎さんと私は、演奏と運営とを掛け持ちしています。」



山本匠さん(以下 山本)「僕は運営のみに関わっていて、演奏はしていません。大学も音大ではなく、早稲田大学大学院で専攻は数学です。3月に修了し、新年度から社会人です。
1 回目の演奏会では、運営スタッフをしっかりと決めずに行なったらしいのですが、2回目の演奏会から運営組織を固めて行なおうということになり、僕はその時 に篠崎さんから声をかけていただきました。僕はコントラバスをやっていて、篠崎さんは高校時代ブラスバンドを一緒にやった仲間なんです。」



篠崎「やはり音大生だけだと行き届かないところがあるように感じて、山本さんと、今日は来ていないのですが吉本さん(運営主任)に、手伝ってほしい、とお願いしました。例えば、彼らは市民オーケストラ等の運営に詳しいので、予算のことなどに関しても、知恵を借りられると思ったんです。それで、お手伝いしてほしい、と。」



山本「とりあえずホール・スタッフとして手伝ってよ!という軽いノリの話だったのですが、段々と責任が・・・(笑)。
でも、メンバーが皆、やる気に満ちあふれているのを感じたので、面白そうだなと思い手伝わせてもらうことにしました。
いろいろな音大の学生が集まってオケをつくるというのは、珍しいですよね。音大以外の大学だと、他の大学同志が集まって、というのはそれほど珍しくはありませんが。音楽大学生がそういうことをやるというのはあまり聞いたことがなかったので、そういった点でも興味があったんです。」



ーーナナシオーケストラをつくろうと思われた経緯は?



篠崎「このオケを始めた頃、私はまだ上野学園に在籍していました。皆、それぞれ大学にオケがあって、そこで演奏することはあっても、他の音大にいる友人と定期的に、というのはなかったんですね。それに、例えば演奏会や学園祭の手伝いなどで他校の音大生と仲良くなっても、一緒のオケで演奏するという機会もあまりありませんから、新しいオケをつくって一緒に演奏してみたいね、と話していたんです。
でも、その頃はまだ、漠然とした構想しかありませんでした。具体的に動き出したきっかけは、2009年の6月に、桐朋の友人や、同じ大学でヴァイオリンを専攻していた川又明日香さんらと、メンバーを募ってオケの演奏会をしたんです。それが、ナナシオケの第1回公演となりました。この時はまだ、第2回公演のことは考えていませんでした。2回目をやろう、と再結集したときが、メンバーたちの意気込みという意味でも、本当のナナシオーケストラの誕生でした。」



ーーメンバーはどのように募ったのですか?



篠崎「核になる主要メンバーをまず決めて、その主要メンバー各々が声をかけてメンバーを集めてくる、という方式を採りました。ですから、主要メンバーの友人や仕事仲間が集まってできた、というのが最初で、そこから徐々に広がっていきました。」





スッキリしない気持ちが残った第1回目





ーー第1回目の演奏会の手応えはいかがでしたか?



篠崎「手応えというよりも、とにかく“演奏したい”というのが一番の目的でしたから、演奏会に向けて、突き進んだという部分が大きかったです。ですから、”演奏をした”ということについては達成感を感じつつも“だけれども・・・” というスッキリとしない気持ちが、メンバー皆の心に残ったのです。」



野崎「第1回公演は運営スタッフを決めていなかったそうで、いろいろと問題があったようです。その時に雑務をやってくれていたメンバーが、終演後に、次に向けての改善点を話し合ったようです。」





社会に出る前に経験しておきたいこと





ーー年に一度のペースでの演奏会ですが、メンバーは固定されているのですか?



篠崎「入 れ替わります。やはり、それぞれ進路が異なりますから、留学して参加できなくなった人もいれば、プロのオーケストラに就職して時間を合わせるのが難しく なった人もいます。参加できなくなったメンバーが次のメンバーを探したり、運営が新たに声をかけたり、残っているメンバーに紹介してもらうこともあります。」



野崎「最近では有り難いことに、空きがあったらぜひ乗りたい、とおっしゃってくださる方もいます。そういった声が多くなってきて、とても嬉しいです。」



ーー年齢の幅はどれくらいありますか?


野崎「一番上は27歳くらい、一番下は18歳です。多いのは22から24歳です。」



ーー年齢差がありやりにくい、と感じることはありませんか?



篠崎「それは特に感じたことはありません。みんな、年齢や所属に関係なく、『ひとりのプレイヤー』として参加してくれているので、なるべく言いたいことを言い合えるような環境を、メンバーが自然につくっているように感じます。有り難いことです。

せっかく自分たちでつくったオケなのですから、各々がやりたいことを試せる場にしたいと考えています。学校を卒業していろいろと外に出ると、そういったことは、なかなか難しいですから。」



ーー大学が違うと、練習の進め方などにも違いが出ると思いますが・・・



篠崎「そうですね。でも、実際に社会に出て仕事で演奏をするようになったら、そういうことは当然言っていられなくなります。そのためにも、学生のうちから引き出しをたくさん作っておいて、違う意見にも対応できるような柔軟性を養っておかなければならないと思います。
でも、それを学生のときにやることは意外に難しくて・・・それは、試せる場がないからという面もあると思うんです。ナナシオケが、それを実現できる場になればいいと考えています。
自分の言いたいことを言える場を作ると、様々なやり方があることが分かるし、また、そこから多彩なアイディアも出てくる。それを一つにまとめて音楽にすることができたらいいよね、といつも話しています。」





第4回はメジャーな作品を



ーー選曲はどのように?



篠崎「指揮者、コンサートミストレス、運営スタッフとで話し合って決めています。各々から候補の作品を挙げてもらって、長さ、作品同士の相性などをみて決めています。」



ーー第4回の聴きどころは?



篠崎「第1回公演から第3回公演までは、あまり演奏されない作品を入れたり、第3回目の時は『3』にこだわって、3がらみの作品(作品番号、交響曲の番号、フラット3つのEs-Dur=変ホ長調等)のみでプログラムを組んだんです。

でも今回演奏する作品は、グリンカのオペラ『ルスランとリュドミラ』序曲、ラヴェルのマ・メール・ロワ、ブラームスの交響曲第4番と、全てメジャーな作品ですね。私たちにとっては、これまでとは違ったプログラミングなんです。
第3回までの聴衆は、コアな音楽ファンが多かったように思うのですが、今回は馴染みのある作品ばかりですので、ぜひ聴きに来ていただきたいです。」



ーー練習はどのような雰囲気ですか?



野崎「結構、意見をぶつけ合っています。例えば、コンサートミストレスの川又さんが、チェロの方に、こうしない?と提案すると、チェロが、いや、自分はこっちの方が良いと思う、と返す。というように、お互い妥協することなく意見を言い合っていることがあるんですね。そういった場面を見ていると、こちらも、もっと良い音楽にしよう、という気持ちになります。」



篠崎「話し合って、ぶつかり合って、妥協せずに、お互いの意見が合うところを探していく、というやり方です。
練習は、各自準備をしてから、本番までに4回の合わせがあります。その他に、弦合わせ、管合わせなどを、それぞれ自主的に行なっているのですが、それはやはり、このオケをやっていて楽しいから、このような動きになってきたのだと思います。
やるからには成功させたい、良い演奏会にしたい、という気持ちはメンバー全員共通しています。自分が今できる演奏よりも、ちょっと上の演奏を実現させたい、 目指したい、という気持ちが各々にあるのだと思います。お祭り的に集まって、今できること範囲のことをパッとやるというのでは、やる意味がないと思ってい ます。自分にないものを常に求めていく。これからもずっと、そういうオーケストラでありたいと思います。」





〈指揮者・平川範幸さんからのメッセージ〉

今 回のプログラムは指揮者にとっても演奏者にとっても非常に難しく、緊張感を持って準備していますが、同じ年代の仲間と共に演奏できるせっかくの機会です。 数少ない一回一回のリハーサルに集中し、若い力を結集して演奏会の成功に挑んでいきたいと思います。



自分を含め、共演する皆さんが勉強してきた道はそれぞ れ違います。ですが、その違いを尊重しながら、演奏会という一つの目標に向かって皆さんを導いていくということは、指揮者の責任ある仕事だと思っていま す。今ある力を出し切って精一杯振るので、ぜひ演奏会にお越しください。よろしくお願いします。





〈コンサートミストレス・川又明日香さんからのメッセージ〉

私は現在、ジュネーヴ州立高等音楽院の修士課程に在籍しており、スイスに住んでいます。ナナシオーケストラには立ち上げから関わっており、今回も公演の時期に合わせて帰国し演奏します。


練習では常に、「オーケストラ=大きな室内楽」を意識しています。これは、指揮者の平川さんと団体の音楽的な方向性について話し合っていくうちに、共通して認識するようになったものでもあります。「室内楽はコミュニケーションが大事」ということを頭に置いて、どうすれば意見を真剣にぶつけ合いながら練習に望めるかどうか、平川さん、それから演奏者でもある代表の篠崎さんと一緒に計画を立てています。


お世話になっている先生方が練習を見に来てくださったり、助言をしてくださることもあります。私たちは、演奏、運営両方の面で、たくさんの疑問や悩みを抱えていますが、先生方のご厚意によってそれらが解消され、ス ムーズに演奏会の準備を進めることが出来ています。何事においても、音楽家としてまだ”子供”である私たちにとって、そういった”大人”の方々に応援して いただけるのはとても心強く、大変感謝しています。


ナナシオケをはじめから一緒に作ってきた篠崎さん、指揮者である平川さん、そして吉本さん、山本さん、野崎さんを初めとした運営のみなさんと、一つ一つの反省点を生かし、「良い団体」を育むために日々頑張っています。着実に成長し続けているナナシオーケストラ、演奏会第4回目はぜひ、もっと多くの方に足をはこんでいただけたら、と思っています。

(取材・向後)

 

インタヴュー

大学の枠を越え、自らの手でオーケストラを

ナナシオーケストラ 第4回演奏会

音楽大学には、オーケストラの授業があり、音楽学生たちはそこで「オケ」を学び、年に何度かの本番を経験する。

しかし、皆が同じように「オケ」に情熱を持って、授業に臨んでいるわけではない。個人によってモチベーションに温度差があるのだ。「オケよりもソロ」、「オケよりも室内楽」という学生もいる。 

         
オーケストラに情熱を持つメンバーで、ひとつの音楽をつくりたい。

こう弾きなさい、と指導され、言われたとおりに弾くだけではなく、自分たちが考えて、提案して、音楽をやりたい。

それを実現するために、「大学」の枠にとどまる必要があるだろうか?

このような思いから生まれたのが「ナナシオーケストラ」だ。



結成は2009年。

調布市文化会館たづくり・くすのきホールにて第1回演奏会を開催した。
初回という勢いもあり、初めての演奏会をなんとか成功させた。しかし、課題も多く残った。その後、2回、3回と公演を重ねる度に少しずつ改良が重ねられた。


4月6日に「第4回演奏会」を控えたナナシオーケストラのメンバー。代表の篠崎史門さん、運営の山本匠さん、広報の野崎りいなさんにお話をうかがった。

(2月 上野にて)

写真左より:野崎りいなさん、篠崎史門さん、山本匠さん

篠崎史門さんはオケの代表を務める

◎ナナシオーケストラ

首都圏を中心とした音楽大学から「大学」の枠を越えた学生が集まり、ひとつの音楽と向き合う。演奏、企画、運営なども現役大学生と卒業後間もない世代が担当。
2009年に調布市文化会館たづくり・くすのきホールにて第1回演奏会を開催。

http://syutokenoke.web.fc2.com



ナナシオーケストラ 第4回演奏会

日時:4月6日(土)19:00開演

会場:上野学園 石橋メモリアルホール

指揮:平川範幸

曲目:

M.I.グリンカ/オペラ「ルスランとリュドミラ」序曲

・M.ラヴェル/マ・メール・ロワ

・J.ブラームス/交響曲第4番ホ短調

チケット:全席自由 一般2,000円 学生:1,000円

http://syutokenoke.web.fc2.com/contact.html



 

4月6日 第4回演奏会は情熱のブラームス!
※画像・音源は第3回演奏会の時のものです

〈関連コンサート〉

マロとN響フレンズ×ナナシオーケストラ

日 時:6月22日(土)18:00開演
会 場:かつしかシンフォニーヒルズ

   モーツァルトホール
出 
演:篠崎史紀(Vn.)、N響フレンズ、

   ナナシオーケストラ

ゲスト:岩村力(ナビゲーター・指揮)、

    森 麻季(ソプラノ)、錦織 健(テノール)
チケット:S席 ¥6,500、A席 ¥5,500、学生 ¥4,500
詳細・チケット取扱い:
http://kyodotokyo.com/maro

© 2014 by アッコルド出版

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