「我々クァルテット・エクセルシオが、参加させていただいてから、ベートーヴェンのこのシリーズは二巡目に入りました。最初は、“ハープ”と“セリオーソ”を先に演奏させていただき、その時はラズモフスキーは無かったんです。古典四重奏団と澤クァルテットが後期の作品を演奏し、その後、ラズモフスキー三曲と後期の作品で、計9曲のシリーズが始まったわけですね。」

 

──この曲目で定着している意義というのは。

 

「最初は後期だけということでしたが、それにプラスαということだと思います。隣の大ホールではベートーヴェンのシンフォニー全曲やっていますから(笑)。」

 

──もし、一日でベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲、となると、凄いことになりますね。

 

「演奏団体も増えるでしょうね(笑)。最近は、作品18(第1番から第6番)の全曲を一度に弾く、という企画もよくありますが、あと、2団体くらいは必要になるかもしれないですね(笑)。

 

先日、ショスタコーヴィチでしたが、全曲コンサートがあり、すべて聴きましたが、朝11時から夜10時過ぎまでかかりました(笑)。一番最後の曲を聴きたかったのですが、やはり一番最初から聴いておくべきだと思ったので。どこかで休憩しようと思ったのですが、でも、最後まで全部聴いても大丈夫でしたし、かなりの人数のお客さんが最後まで残っておられました。」

 

──クァルテット・エクセルシオさんは、今回は後期の三曲ですね。

 

「やはり、大変ですね。ただ、ずっとやってきた印象ですが、『ラズモフスキー』の三曲が一番大変だと私は思います。体力もそうですし、持続する気持ちというものが一番必要で大変なんです。一番エネルギーが必要ですし、体調が重要です。

 

後期の方になってくると、体力的なことは、ラズモフスキーほどではないのですが、やはり精神性の部分で大変です。一番最後は、チェロの場合、弾くこと自体大変ではないです。でも、だからといって余裕があるのかといったら、それはないんです。ラズモフスキーの方は、楽譜に忠実に構築していけば、ある程度、ラズモフスキーの形にはなる。しかし、後期の方へ行くと、そういうふうにはいかない。何か精神の世界、深いところを探っていかなくてはいけない。そういう意味で、後期は難しい世界です。ちょっと違いますね。」

 

──演奏するたびに、演奏の中身が変化することは。

 

「それはそうですね。何でもそうですが。ベートーヴェンが書いたメロディ、リズム、テンポ、そういうものが、だんだんと腑に落ち、掴んでいけてるな、という実感があります。一年の間に我々としてはかなりいろいろなことをやっていくわけですが、その中で、自分自身も変化していく、でまたベートーヴェンに戻ってきたときに、ああ、それなりに変わった、という実感があるわけですね。それはいつも感じるところです。そして、年末の特別なコンサートというふうにいつも思います。」

 

──ベートーヴェンの後期の世界は難解だとずっと思っていましたが、最近歳のせいか少しずつしみじみと味わえるようになってきました。

 

「聴いているとすっと聴き過ごすようなところでも、演奏している感覚からすると、同じ時間でも時間が拡大されるような感じがします。特にベートーヴェンは、10分の楽章であったしても、その何十倍もの練習をしているので、時間が拡大された感覚があります。

 

本当に小さい所の粒が、少しずつ生地になってきて、そこに色あい、手触り……というものが紡ぎ出されていく、という感じがします。難解と思われたものも、そういうことでだんだんと判明してくる、という実感があります。全部いっぺんに判明するわけではなく、ちょっとずつですね。そんな感じが、演奏するたびにあります。」

 

──好きな作品は。

 

「それは難しいですが、作品127は一番最初に演奏した後期の作品なので、とても印象深いものがあります。一番長いつきあいですね。」

 

──ベートーヴェンの作品で弾く頻度の高いものは?

 

「定期で弾いていますから、わりと万遍なく演奏していますが、ラズモフスキーはやはり多いかな。割と後期もコンスタントにやってきましたからね。」

 

──他の団体の演奏も聴かれるのですか?

 

「今回は最後の出番ですから、なかなか他の演奏を聴くのは大変かもしれない(笑)。」

 

──演奏し終わった瞬間の気分というのは。

 

「これで1年終わった、という感慨はありますね。聴衆も演奏者も、お疲れさまという感じで散会していくのもほのぼのとしていいなぁ、と思います。」

 

──この数年間、大晦日はずっと東京文化会館にいらした、ということですね。

 

「そうですね。そういうことになりますね。皆、弾き終わってお疲れさま、あとはフリーという感じですね。正月は、ニューイヤーコンサートから。」

 

──この大晦日のコンサートが終わった後、皆さんで除夜の鐘を聴きに行くとか。

 

「いえ、もうそれぞれ家族の所へ行ったり、実家へ行ったりします。」

 

──聴衆にメッセージを。

 

「いつも熱い拍手を感じます。本当に皆さんベートーヴェンが好きなんだなぁとつくづく思います。会を重ねることに、本当にベートーヴェンが好きな聴衆がどんどん増えています。この演奏会では特に熱い拍手が客席から贈られます。これだけの長時間のコンサートに来る聴衆は相当濃密ですね。是非、多くの方々に聴きにきていただきたいです。」(取材:青木日出男)

 

このコンサートの前に、今回、ベートーヴェンを語る、と題して、土田英三郎、平野昭、野平一郎の各氏による鼎談が行なわれる。(於:東京文化会館4階会議室 入場無料、要予約 日本ベートーヴェンクライス会員と、当日大ホール・小ホールのベートーヴェン演奏会チケット購入者に限られる)

 

来年以降もずっと継続される予定

 

クァルテット・エクセルシオ チェリスト 大友 肇さん

ベートーヴェン弦楽四重奏曲【9曲】演奏会

直前インタヴュー

 

演奏会直前インタヴュー

毎年、恒例のベートーヴェン弦楽四重奏曲【9曲】演奏会(東京文化会館小ホール)が今年8年目を迎える。

 

このコンサートは、大ホールのベートーヴェン交響曲全曲演奏会と並行して行なわれるもので、両方はしごしながら聴かれる聴衆も多い。

 

演奏団体のひとつであるクァルテット・エクセルシオのチェリスト、大友肇さんに抱負をうかがった。

ベートーヴェン弦楽四重奏曲【9曲】演奏会

 

日時:12月31日(火)14:00開演 21時半頃終演予定

会場:東京文化会館 小ホール

料金:全席指定 ¥8,000

出演:

古典四重奏団

 川原千真、花崎淳生、三輪真樹、田崎瑞博

ルートヴィヒ弦楽四重奏団

 小森谷巧、長原幸太、鈴木康浩、山本祐ノ介

クァルテット・エクセルシオ

 西野ゆか、山田百子、吉田有紀子、大友肇

曲目:

作品59-1、2、3「ラズモフスキー1番、2番、3番」

(古典四重奏団)

作品127、130、133「大フーガ」

(ルートヴィヒ弦楽四重奏団)

作品131、132、135

(クァルテット・エクセルシオ)

詳細:ミリオンコンサート協会

http://www.millionconcert.co.jp/

03-3501-5638
 

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