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『おみぃのおと。』

 

ヴァイオリニスト 尾池亜美

第5回 「愛溝心」

先日に引き続き弓ネタを。
弓の手前側の毛を積極的に使おうキャンペーンは、お陰様でなかなか功を奏しています。
 
敢えてコッチがわで弾こうってわけではないですが、ちょっとした瞬間にオプションであるととても便利。
 
そしてオプションとして引き出しに持っておくには、今まで全くやっていなかった動きですから、基礎練でガンガン弾いておく必要があります。
 
大丈夫です、普段ほとんど弾いてないですから、多少荒治療しても何も減りません。練習方法の例としては以下のとおりです。
 
バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第二番3楽章など、ゆっくりで移弦ばかりの曲を取り、腕まるごとで移弦せず、手首を「おいでおいで」風(または欧米での「シッシッ!」風)に上下させ低減します。腕はダウン、アップの動きにのみ専念します。
 
弓の動きは、この「ダウンアップ:横」と「移弦:縦」の動きに専念することがいい音への鍵です。縦×横だと平面、かなり限られた方向と想像されますが、時と場合によってこの縦横の動きが、平面のまんま方角を変えるだけなんです。まるで風向計のように。
 
 

Ami Oike

French Romanticism

尾池亜美 ヴァイオリン

 

尾池亜美(ヴァイオリン)

佐野隆哉(ピアノ)

 

セザール・フランク:ヴァイオリン・ソナタ・イ長調

カミーユ・サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ短調Op.75

クロード・ドビュッシー:夢

 

定価2,500円(税込)

 

http://sp.tower.jp/item/3538794/French-Romanticism<通常盤>

回転の中心となる点は、コンタクトポイントと呼ばれる弦と弓の接点です。
この方角を保ちながら、手首を思う存分(大げさに!)動かして、弓手前の毛を思う存分(大げさに!笑)使って弾きます。この曲なら主にベースラインを。
 
ああ~なんだか言葉で説明するのがもどかしくなってきた。百聞は何とやら、で、動画でお見せしたいですね。アッコルドのA木さんに相談しようっと。
 
本当は今回、溝さんの話を書こうとしたのだった。
 
先日また先生に強烈な指摘をされ、直したら劇的に音が変化(正確には、戻ってきた)したことがあって、「ああ~こういうことも卒業したら自分で発見していかねばならないのか~」と悲観しつつ感動した体験談です。
 
いつからか、弓をこう持っていたのですが
これに直したんです。
見えない...中指を上げて、もう一度いきます(笑)
 
から
です。
 
色々と経緯があって上の写真のようになっていたんです。説明したい。なるだけ手短に行きますね(笑)
 
私の最大にして直しにくいクセとして、右親指の反りがありました(左は丸いのに...)。癖を治すには、それまでのやりかた(記憶+筋肉)にサヨナラして、新しい記憶と筋肉を付けなければなりません。
 
親指と中指で仲良く輪をつくって親指の内側の筋肉で弓の重さを支えようとする。と、なぜか、毛箱と革の間より、革の真上を持つほうが軽くて、楽だったんです。
 
支点が中心に近づいて軽くなって動かしやすくもなった。小回りも効く気がした。それでこのままパガニーニの協奏曲まで弾いちゃった(笑)
 
でもね、ヴァイオリン教本の最初に「黒檀の毛箱の真上に親指を」って書いてあるのが間違ってるわけがないんです。実際ロシアンスクールもフレンチもそうだって...そういえばなんか最近音色が思うように出ないなって思ってたんです。
 
そして帰ってきました。ただいま、溝さん! 私はあなたの大切さに今頃気づいてしまった。もう一度やり直させてくれ。今度は絶対に幸せにするよ!
 
いや、幸せになるのは自分のほうで、弓の重さが生かされ自然といい音が出るんです。親指を丸くすることにも慣れた今、改めて溝を愛することが出来ます。
 
演奏活動を続けながら癖を治さねばなので、親指を丸くするために一時的に持ちやすい方へ逃避してしまったのかもしれません。
 
溝は思いの外便利でもあって、箱と革に挟まれているから安定感があって(当たり前か...)、ちょっとしたニュアンスも出しやすいんですね。
 
ああまるで奥さんの有り難みを忘れてしまった旦那さんのようでした・・・って、これ以上は慎みますが(笑)こうして、オイケさんと溝さんはいつまでも仲良く暮らしましたとさ♡
 
めでたしめでたし。
(参考画像:http://rurumba.exblog.jp/tags/風向計/

© 2014 by アッコルド出版

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