top of page

マレック・シュパキエヴィッチ

チェロ・リサイタル を前に・その1

Marek Szpakiewicz Cello Recital

東欧の哀愁と熱情―ヨーヨー・マから賞賛される稀代のソリスト、マレック・シュパキエヴィッチさんが初来日し、コンサートが行なわれる。
本公演の収益金の一部がエル・システマジャパンへ寄付され、また公演の一部で、被災地で生まれ育った木材で製作され、ヨーヨー・マ氏によって日本で初めて演奏されたTSUNAMIチェロが使用される。
 

アレンジについて

 
──CDを聴かせていただきました。美しい音色で、楽曲を忠実に再現された演奏で感銘を受けました。
 
「有り難うございます。」
 
──自己表現というよりも、音楽を大切にするということでしょうか。
 
「演奏家としての私の義務というのは、作品を表現することだと思います。若い人に有りがちな間違いというのは、スコア、楽譜に忠実にしていないですね。私は楽譜を注意深く勉強します。その上で私の強みというのはコミュニケーションだと思っています。私が私が、というエゴよりも作品をどのようにして伝えるのか、コミュニケーションをするのかが大切だと思っています。
 
一番重要なのは、聴衆がどのように作品を受け取るのか、ということであって、私がどのように作品から受け取るのか、ということではないです。」
 
──どちらかというと、客観的に作品と対峙しているということでしょうか。
 
「どのような作品でも、例えばジャズの即興にしても、実はそれは即興では無いところがあると思っています。例えば、上行や下行のパッセージを練習していたとします。瞬間的に、即興に聞こえるパッセージがあるかもしれないでうが、でも、本当に即興をしてしまうと、カオスになると思うのです。
 
私にとって一番大切なことは誠実である、ということです。そして清貧さ。作曲家が作った音楽の範囲の中で、それを忠実にしていくことだと思います。」
 
──リサイタルについて。選曲ですが、ドヴォルザークの作品をご自身が編曲なさっていますね。
 
「まず最初に本当に美しい曲です。心を震わせるようなメロディーがあります。ドヴォルザークは本当に美しいメロディーをたくさん書きました。スラヴ系のメロディもたくさん書かれました。そういったメロディに恋したところがあります。だからその楽譜を探そうとしたところもあります。そしたら問題に当たってしまったのです。
 
ソロとピアノのアレンジの楽譜が見つかったのですが、でもその楽譜は元々の作品に誠実でなかったところがあると思ったのです。例えば、ピアノとチェロとの編曲の作品がすでにあるのですが、でもそれはオリジナルの調性ではありませんでした。私は調性というのは作品の全体のトーンを決めるものだと思っています。例えば作曲家によっては一つの調性が、どのような色をもたせるのか、考えて作曲しています。
 
異なった調には、違ったムードが出てきます。ですから私が行なうアレンジは元々の調性のままにしています。ヴァイオリン用のアレンジにはいくつかのものが有りましたが、クライスラーのアレンジは途中で転調します。クライスラーは直感的な人でいろいろなアレンジを作っていますが、でもそれはオリジナルの楽譜にはなかったものでした。
 
ですので、私は私自身のアレンジを作ろうと思ったのです。」
 
──アレンジに関しても作曲家に忠実という姿勢なのですね。
 
「私が大切だと思うのは、できる限り元の曲の要素を活かすことだと思っています。例えば、映画を作るときに、元々の原作から台本がだいぶ変わってしまうということがあります。勿論、原作に忠実な台本もあります。私でしたら、元々の著者が書いたものに誠実に台本を作ると思います。私は編集されたものに対しては、あまり興味を持っていません。例えばピアソラの『ル・グラン・タンゴ』などは、チェリストによって編集してカットしてしまっているようなアレンジもあります。どのような理由でそのようなカットをしたのかは分かりませんが、もしかしたら単調に感じた部分をカットしたのかもしれません。私だったら、そこは編集しないでそこの部分をどのように私なりに伝えたいのかをよく考えて、その伝えたいことが出てくるまでまず考えるという作業をします。」
 
──たとえそこで例えば難しいフィンガリングになったとしてもそちらを選ぶ?
 
「正にその通りだと思います。何かの作品をアレンジするときに重要になってくるのは、その曲が一番何を大切にしているのか、という点だと思います。例えばオーケストラの作品でフルートがトレモロをやっていたとします。そしてチェロがメロディーを歌っていたとします。そこでどのような選択をするのか、ということが問題です。トレモロのフルートを入れた方がいいのか、それともそれはそれほど重要ではないのか、そのようなことを全部考えてその上でアレンジするということが、私にとって大切なことです。よくあるのが、アレンジする人が調性を変えてしまうことで楽にすることですね。でも元のオリジナルの調そのものが挑戦になることがあるのです。ですから、そこから逃げてはいけないと思うのです。」
 
次回は、アメリカへ移住された経緯から……
マレック・シュパキエヴィッチ チェロ・リサイタルMarek Szpakiewicz Cello Recital
Pf.ジアイ・シー
 
2015年3月27日(金)19:00開演[18:30開場]
王子ホール
曲目
ドヴォルザーク(シュパキエヴィッチ編):スラヴ舞曲 ホ短調 Op.72-2ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 Op.65ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ ニ短調 Op.40ピアソラ:ル・グラン・タンゴ
 
全席指定:¥4,500(消費税込)
◎王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
◎チケットぴあ[Pコード:247-125] 0570-02-9999 http://pia.jp/t/
 
後援:駐日ポーランド共和国大使館、ポーランド広報文化センター、エル・システマジャパン、Classic for Japan
 
制作・お問合せ:株式会社1002[イチマルマルニ] 03-3264-0244 http://www.1002.co.jp/

 

© 2014 by アッコルド出版

bottom of page