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ヴィオリスト矢谷明子さん

クレモナのMdVヴァイオリン美術館が「20世紀のイタリア弦楽器製作家たち」展を開催している。MdV美術館運営下のこの新しい展示会は、約一月毎にテーマを変え、イタリア国内でも珍しい貸与、購入、支援という業績を誇る唯一の美術館であり、この重要な時期のイタリア弦楽器製作の歴史の遺産を知らせる為に行なわれている。

 

美術館内の展示会場では、1900年前後のイタリア弦楽器製作家の貴重な作品の数々が展示され、今日まで続く400年以上に亘り音楽の世界に革新を促してきた“高貴な文化”を回想する事ができる。

 

ストラディヴァリ財団MdV美術館が所有する20世紀を代表する製作家の一人、マリノ カピッキオーニの1937年製クァルテット(同じ木からヴァイオリン2本、ヴィオラ1本、チェロ1本が製作される)は、ストラディヴァリ没後200年の年でもあった同年、クレモナ弦楽器製作コンクールにて銀メダルを受賞した記念すべき作品である為、展示会はこのクァルテットを公開(2014/1/11~2/7)する事から始まった。

 

マリノ カピッキオーニ(Marino Capicchioni1895-1977)は、樽作り専門の父のもと、ワインで有名なアルバーナのブドウ畑のあるエミーリア ロマーニャ州の緑の丘の合間にあるサンマリノ共和国に生まれる。

 

彼の音楽とヴァイオリンに対する情熱が弦楽器製作家になるという決心をさせ、独学で型、ニス、木の音調整のすべてを試行錯誤を繰り返しながら研究し、師を持たない一番難しい方法で製作家への道を歩み始めた。

 

1931年、パドヴァで行なわれた展覧会で金メダルを受賞し、1937年にはクレモナ製作コンクールで銀メダルを受賞した。更に彼にとっての幸運は、当時すでに世界的な名声を博していたイタリア四重奏団と高名なヴァイオリニスト、ファルッリ(Farulli)が、その魅惑的な音色を奏でる彼の楽器を愛用し世界各地で演奏した事であった。こうして樽職人の息子であった若い青年は1900年代の偉大な弦楽器製作家の一人として知られて行く事となった。

 

その音色にも見られる雄々しく強靭な楽器の製作スタイルは、メニューイン、オイストラフなど数多くの偉大な音楽家から著名なコレクターまで幅広く惹きつけ、今日、この偉大な巨匠の作品は国際的なオークション会場などで競って探されている。

 

展示会場では上記のクァルテットの他6挺のカピッキオーニの作品(ヴァイオリン4挺、ヴィオラ1挺、チェロ1挺)が集められ、合計10挺の貴重な楽器が一同に展示された。カピッキオーニの生涯が綴られた展示パネルには、製作過程の写真やエチケッタ、彼の楽器を愛用していた音楽家の演奏写真や手紙など貴重な資料も展示され、展示会初日の発表記者会見にはマリノ カピッキオーニの息子で唯一の弟子でもあるマリオ カピッキオーニ氏が出席し、その様子は下記の動画サイトで見る事ができる。

 

http://www.youtube.com/watch?v=1Jg-OTl6fSk

―ストラディヴァリ財団 MdVコレクション―

20世紀のイタリア弦楽器製作家たちVol.1

ストラディヴァリ財団ヴァイオリン美術館

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クレモナ ヴァイオリン博物館

矢谷明子のクレモナ通信

東京都出身。桐朋学園大学卒業、研究科修了後渡欧。イタリア、シエナ・キジアーナ音楽院にてY.バシュメット、クレモナ・W.スタッファー音楽院にてB.ジュランナ各氏に師事。2002年アネモス国際コンクール弦楽器部門最高位受賞。

 

共演したS.アッカルド氏より「正確な技術と温かい音色に加え卓越した音楽性の持ち主」と評され、イタリアを中心に日本・台湾各地でソロ、室内楽奏者として活動。また、団員全員がソリストとして契約するL.マゼール音楽監督、イタリア交響楽団(旧トスカニーニ交響楽団)では唯一の日本人メンバーとして活躍。世界各地で演奏活動を行なう。

 

2011年3月、イタリア・クレモナにて東日本大震災被災地支援コンサートとして行われたヴィオラリサイタルは、地元紙2紙で大きく取り上げられ、その後も震災支援活動の一環としてイタリア、日本において被災地支援コンサートを開催。また、東日本大震災被災者支援のため、クレモナ市に協力を仰ぎ、国立ストラディヴァリ国際弦楽器製作学校所有のヴァイオリン、ヴィオラを寄贈してもらい被災地に届ける活動を開始した。

 

2012年、世界最高峰の弦楽器製作コンクールとして知られ、3年に1度クレモナで開催される「第13回A.ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクール」において日本人演奏家として初めての審査員を努める。クレモナ在住。イタリア音楽家協会エンパレス会員。

以下の写真は、クリック(タップ)すると、

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© 2014 by アッコルド出版

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