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ヴァイオリニストの名倉淑子さんが、フェリス女学院大学の特任教授の任期を終えるにあたって、名倉さん中心のアンサンブル「フェリス ストリング アンサンブル」のコンサートが9月30日に神奈川県民ホールの小ホールにて行なわれる。これは、フェリスの弦楽器の先生方によって企画されたものだ

 

 

メンデルスゾーンのオクテットは

何度も演奏したけれど

 


「チェロの井上雅代先生が、以前からフェリスの弦の先生方中心のアンサンブルをやってみようと計画されていたのですが、ちょうど私も任期を終える、ということで企画してくださったものです。いつもお世話になっている神奈川県民ホールの小ホールが9月30日に空いていましたし、またほとんどの先生方がふだん凄く忙しいのにもかかわらず、奇跡的にスケジュールがうまく合って参加してくださることになりました。

 

主体は、メンデルスゾーンのオクテット。これが出演者全員で演奏するメインの曲です。そして、コンサートの前半では、そのメンバーによるヴァイオリン四重奏やチェロ二重奏……といった形態で演奏します。つまり皆さんがそれぞれ活躍される楽曲ですね。ダンクラの、4つのヴァイオリンのための「ああ、お母さん聞いて」という曲は、きらきら星変奏曲で、とても面白くて良い曲です

 

私がジュリアード音楽院へ行って初めて弾いた曲が、メンデルスゾーンのオクテットでした。それはよく覚えています。あと、東京クヮルテットにいたときにも、時々この曲は演奏していました。クリーヴランド・クァルテットと一緒に演奏したりしました。また、つい最近では、東京クヮルテットを最初にマネジメントしたアメリカのYCA(ヤング・コンサート・アーティスツ)の主催で、海外から集まったメンバーと銀座のシャネルでも演奏しました。

 

でも、私は1stヴァイオリンはやったことがなかったんです。ですから、今度のコンサートが初めてなんです。いつもこの曲の1st大変そうだな、と思って弾いていましたが、遂に私が1st弾くことになったかな、という思いですね(笑)。」

 

名倉さんに、2000年から指導をなさっているフェリスの思い出を語っていただいた。

 

「私が入った頃は、大学全体がおっとりとした感じでしたが、だいぶ雰囲気は変わってきたように思います。入試のときもおだやかな感じでしたが、最近はある意味緊張感のあるものになってきました。

 

私が着任したときは、オーケストラが編成できるような状態ではありませんでした。室内楽も、演奏関係の授業の補助をしてくれる副手さんたちを入れないと満足に組めるようなものではなかったのですが、いろいろ工夫をして、現在ではオーケストラも室内楽もずいぶん充実したものになりました。そして学部生による室内楽のコンサートも、神奈川県民ホールの共催や地元企業のバックアップをいただいてたくさん行なっています。

 

フェリスには音楽教室があって、そこで勉強してきた子供たちが大学に入学することもあるのですが、高校に音楽科がないので、音楽教室で勉強していても他の高校に行ってしまうのが残念ですね。ただ、他の高校に通いながら音楽教室を継続して、フェリスの大学に入学するというケースもあります。

 

フェリスの先生方は、現役で活躍している素晴らしい演奏家ばかりですから、学生との関係も密接ですし、学生同士も密接ですね。そういったことから音楽的なレベルは向上してきています。しかも、アット・ホーム的な雰囲気なので、学生達は卒業したくないくらい居心地がいい、と言っています(笑)。無駄な競争意識がないんです。

 

皆それぞれ、専攻によって違いますが、弦に限って言えば、地方の子も多いので、地方に帰って演奏活動している子もいれば、こちらに残っている子では、大手の音楽教室で活躍している子もいますし、個人で教室を開く人もいます。一般企業に就職する子もいます。いいご主人を見つけて結婚する子もいます(笑)。だから、女性としては皆幸せな道を選んでいると思います。

 

フェリスは、世界中に多くの交換留学提携校とのつながりがあります。アメリカのミシガン州のホープ・カレッジへ演奏旅行したことがありますし、大学が積極的に、演奏、交流、ホームステイ、海外研修……といったことを奨励していて、海外交流がとても盛んな大学です。海外の大学へ留学して、そこで取得した単位もフェリスの単位として認められています。

 

フェリスでは、どの学部でも履修できる科目として、長期留学できるくらいまで鍛える「外国語インテンシブ・コース」があり、夏休みの語学現地実習も単位認定の対象となります。これは、これは、音楽学部の学生にとってもドイツ語やイタリア語をきちんと勉強できるので大きな魅力になっています。

 

そのほか音楽系の交換留学では、イタリアのピストイアのマベリーニ音楽院、ドイツのブレーメン芸術大学といったところに留学できます。留学している間に現地でいい先生との出会いがあって、そのまま留学を継続している学生もいます。

 

フェリスにはFグループという同窓会組織があって、全国に支部があります。その組織はとても大きいので、地方に帰った学生が、Fグループのサポートで演奏会を行なうんです。同窓生意識はすごく強いものがあります。大きな総会が一年に一回フェリスで行なわれるのですが、そうすると、全国から飛行機で集まってきますよ。私達も九州とか北海道のFグループに呼ばれて、演奏会やレッスンを行ないます。そういう点で、卒業してからも、いろいろな面で学生をバックアップする大学ですね。」

 

──フェリスを退官なされるとやはり寂しさが。

 

「どうでしょう。まだ来年の3月ですから実感がわかないですが、そうなったら寂しくなるのでしょうかね。ただ、私は、日本に帰ってきてからずっと桐朋で教えていましたから、それだけでも忙しく、さらにフェリスに来ることになって滅茶苦茶忙しくなったので、少し楽になるかな、という気持ちもあります。実際、リサイタルがあっても、私っていつ練習するんだろう、と思うくらいでしたから(笑)。もうちょっと演奏活動ができればいいな、と思いますね。」

ヴァイオリニスト名倉淑子さん&フェリス ストリング アンサンブル

──フェリス女学院大学での教育活動

インタヴュー

フェリス・音楽の花束

フェリス ストリング アンサンブル

 

日時:9月30日(月)19:00

会場:神奈川県民ホール小ホール

曲目:

C. ダンクラ:4つのヴァイオリンのための「ああ、お母さん聞いて」Op. 161

 [中村・渡部・千葉・名倉]

L. ボッケリーニ:2つのチェロのためのソナタ ハ長調

 [藤村・井上]

J. ハルヴォルセン:パッサカリア

 [渡部・藤村]

A. ドヴォルジャーク:三重奏曲 ハ長調 Op. 74 B. 148

 [名倉・千葉・中村Va]

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F. メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op. 20

 [全員]

 

出演:

 名倉淑子、渡部基一、千葉純子、那須亜紀子(ヴァイオリン)

 中村静香(ヴァイオリン/ヴィオラ)、

 二木美里(ヴィオラ) 

 藤村俊介、井上雅代(チェロ)

料金:3,000円(全自由席)

お問い合わせ・ご予約

フェリス女学院大学演奏委員会室

TEL 045-681-5189 (平日10:00-17:00)

Email: concert_office@ferris.ac.jp

チケットかながわ

TEL 045-662-8866 (10:00-18:00)

http://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/

主催:フェリス女学院大学音楽学部  

共催:神奈川県民ホール(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)(指定管理者:公益財団法人神奈川文化芸術財団)

 

 

 

名倉淑子(ヴァイオリン)

 

桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部をともに首席で卒業。その間、久保田良作、ジャンヌ・イスナール、斉藤秀雄、小林健次の各氏に師事。

 

ジュリアード音楽院に留学、奨学金を得て、P. マカノヴィツキー、I. ガラミアン、F. ガリミアの各氏に師事。在学中、桐朋学園時代の仲間たちと東京クヮルテットを結成。1970年、ミュンヘン国際コンクールおよびアメリカのコールマン・コンクールで共に優勝して一躍脚光を浴びる。

 

世界各地を演奏旅行、数々の国際フェスティバルに出演、ドイツ・グラモフォンでのレコーディング等で活躍する。1974年、東京クヮルテットを退き、ベルギーに移る。

 

アンフィオン・カルテットに加わり、演奏活動、Deccaとのレコーディングを行なう。1975年、再びアメリカに戻り、ソリストとして本格的な活動を開始。リサイタル、オーケストラとの共演多数。室内楽においても、ニューヨークのリンカーンセンター・チェンバーミュージックソサエティにたびたび出演。一方で、フィラデルフィア音楽アカデミー及びスミス・カレッジにて後進の指導に当る。

 

1977年よりハンブルクに居を移し、ドイツを中心にヨーロッパ各地で活躍、数々のオーケストラと共演。その間、ルドルフ・ゼルキン主宰のマールボロ音楽祭にも参加。また、ハンブルク音楽院で後進の指導に当たる。

 

1981年よりバンベルグ交響楽団のゲストコンサートマスターに就任。同時にバンベルグ弦楽五重奏団のメンバーとしても活躍。1988年に帰国。ヨーロッパで活躍する音楽家たちによって結成されたニッポン・オクテットのメンバーとして、また、水戸室内管弦楽団、及びサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとして活躍。定期的リサイタル、室内楽シリーズ「アンサンブル・アデッソ」の定期演奏会等、演奏、教育の分野で幅広く活躍中。

 

2000年よりフェリス女学院大学で教鞭を執り、現在、音楽学部特任教授。桐朋学園大学非常勤講師。

 

取材:青木日出男

© 2014 by アッコルド出版

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