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音楽×私

9人のリレーコラム 〈9月19日〜〉

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思われたことはありますか?

 

新 倉 瞳

Hitomi Niikura(Cello)

皆さんこんにちは。

もうヨーロッパは肌寒い日が続き、夜は日本の鈴虫とは少し違った音色の秋の鈴音を響かせています。

 

留学生活も3年が過ぎ、私はいま教職課程に進み、未だ学生としてバーゼルにいますが、室内オーケストラで首席奏者として演奏させていただくことや、音楽祭に出演させていただくことも増え、学生としてだけではなく、いち音楽家として人前に出る機会も増えてきました。

 

キャリアを積むことができたと言えば確かにそうですし、嬉しいことですが、それよりも、ようやくヨーロッパで自分が音楽家として音楽的にしたいことが明確に見えてきたことが一番嬉しく思っています。

 

むやみやたらに「海外」という場所にブランド感を感じて居座るつもりはありませんが、ヨーロッパで自分の力で生活すると、見えてくることがたくさんあります。

 

日本の音楽教育の素晴らしさを実感することもありますし、ある部分では時代遅れに感じることもあります。今、私自身、試行錯誤していることが、将来、次世代の人たちのお役に立てるような、そのような音楽家になりたいと強く思っています。

 

今、演奏会を控えている室内オーケストラのプログラムは、バッハのブランデンブルグ協奏曲と、イギリスのコントラバシストの作曲した現代曲、この二曲で構成されています。

なんとも対照的な二曲で、バッハのブランデンブルグ協奏曲はレストランでBGMとしても流せる優雅な曲調に対して、現代曲は工事現場を彷彿させるような騒ぎの場面もあります。後者は、レストランでBGMとして流したら間違いなくクレームがつくと思われます(笑)。

 

しかし、この現代曲にはバロック音楽を思わせる崇高なハーモニーで彩られる美しい場面もあり、実はバッハには美しくも苦しいハーモニーが散りばめられ隠されています。

つまり、真逆の立場にあるように見えるものも、背中合わせの感情を発見することが出来ると思います。

 

涙が出るくらい嬉しい。

憎むほど愛してる。

 

古典音楽と現代音楽は、正反対のようで実は非常に近い。ハイドンとブラームスを弾きわけるよりもずっと理解しやすいと私は思います。

 

「古典音楽+現代音楽」のプログラムのコンサートが、日本では考えられないくらいヨーロッパでは当たり前のようにたくさんあります。

日本でもこのようなプログラムが増えるといいのに……。

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみた、習ってみたい、と思われたことはありますか?

 

A:弦楽四重奏のヴィオラパートが大好きで、数年前にヴィオラを購入して習おうとしました。そして、実はヴィオラ奏者 須田祥子先生の門下生です・・・。幽霊部員ならぬ幽霊生徒ですが(笑)。

 

室内楽やオーケストラ内でのヴィオラの存在感に惹かれ、またアルゲリッチ音楽祭にてバシュメット氏とブラームスのクラリネット五重奏弦楽オーケストラ版(ヴィオラソロ+弦楽オーケストラ)を共演した際にもヴィオラの音色の幅広さに惹かれました。

﨑 谷 直 人

Naoto Sakiya(Violin)

アッコルド読者の皆さん、こんにちは!

二週目を終え、筆者各々の個性が更に出てきました。それぞれキャラクターが異なり、面白いな、と思いながら読んでいます。僕のコラムは、テーマ選びから共通質問の答えまで、自分で読み返しても、なかなかヒネくれているな、と感じますから、読者の皆さんには、相当な「ひねくれ者」に映っているのではないでしょうか?(笑)。実際、ちょっと人と違うことがしたいな、書きたいな、と考える天邪鬼であるのは確かですが……。さて前回は僕の趣味と音楽との関連について書きましたが、その続きはまた次回にまわし、今回は皆さんにご報告があります。

 

神奈川フィルの第一コンサートマスターに就任します

 

すでにオフィシャルに情報がリリースされていて、アッコルドのニュースにも取り上げていただきましたが、2014年4月より、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスターに就任することになりました。
今回このコラムにて、そのご挨拶と抱負を書かせていただきたいと思います。

 

神奈川フィルに決めた理由

 

まず神奈川フィルに決めた理由は、「明るさ」と「積極的な雰囲気」でした。
今年に入り、神奈川フィルにゲストで呼んでいただくようになり、直感で、「あ、ここで働くことになるかもしれないなっ!」と感じました。
僕は初めてのことだらけで、あたふたしていたと思いますが、団員の方々は親切に接してくださり、自由にアイディアを提案したり、話し合うことが出来、自然体で弾くことが出来ました(内心、めちゃくちゃ緊張していましたが……笑)。そういったやり取りをさせていただいたことで、ここで経験を積むことが出来たら、僕はもっと成長出来るのではないかな、と直感的に感じたのです。
事務局には若い方も多く、そのお一人おひとりが、どうしたらより子供から大人まで楽しめる演奏会をつくることができるか、ということを真剣に考えているのが伝わってきました。
そして、事務局の方々が僕の弾く演奏会に足を運び、演奏を聴いてくださった。これは僕の中ではとても大きなことです。クァルテットや室内楽で演奏を聴き、僕の特徴と考えを的確に把握してくださっています。これは音楽家として何より嬉しいことでした。
また、神奈川フィルはソロコンサートマスターの石田泰尚さんが長い間オケを支えてこられていますが、定期演奏会など重要な演奏会では、その石田さんのサイドでも弾かせていただきます。これもとても勉強になります。特に定期では大きなプログラムを取り上げることが多いので、サイドで経験を積むことが出来るのは僕にとって大変貴重なことなのです。コンマスとサイドでは仕事内容が大きく異なるので、この両方が出来るのは意義深い仕事になるはずです。

 

理想のコンマス像

 

どんなコンマスになりたいか。もしくはコンマスの役割とは。
これは今すぐには、答えの出ないことだと思っています。というのも、オケや演奏のスタイルによりコンマスに求められる中身もずいぶん変わると思うからです。
例えば、ウィーンフィルのキュッヒルさんは世界を代表するコンマスの一人です。でも、カンマーフィルハーモニーブレーメンのようなモダンなスタイルの演奏をするオケのコンマスに適しているかはまた別だと思います。
僕はパリ管弦楽団のドガレイユ氏とブレーメンのゼペック氏、二人のコンマスに師事しました。二人は全く別のスタイルでしたが、どちらも素晴らしい演奏家でありコンマスです。
オケも、各オケに適したコンマスを求めるでしょう。ですから、コンマスに絶対的な正解は無いのでは?と、今の時点では考えています。
その意味でも、神奈川フィルから僕に求められていることは、フレッシュな感性で、これから先のオケの展望に貢献することだと思っています。何せ若手で初めての経験ばかり、曲だって初めてのものばかりなので、全てが上手く出来るなんてことはまずない。だからこそ、一回一回を大切に、しっかり準備をして挑みたいです。
オケの団員の皆さんは、もう何年もオケを経験しているプレイヤーも多いわけで、そんな中で「はい、ここで皆さん、お入りください」的な合図を出しても何も意味がない(笑)。だから何?っていう話ですよね。
そんなことではなく、音楽に夢中に取り組み、指揮者の考えを読み取る努力をし、皆に音楽の方向性を示すこと。わからないことがあれば話し合い、アイディアがあれば提案する、それに尽きます。それを繰り返していくうちに、自分らしいコンマス像やリーダーシップが出てくるでしょう(出てくると良いのですが…… 出てくる予定です!)
ということで、コンマスとしても一演奏家としても、答えを出すのはずっと先で良いと思っています。今は日々、理想も手段も変わっていく時期だと自分で認識しています。きっと、みんな通る道なのでしょう。

 

これから実践したいこと

 

神奈川フィルで実践していきたいことは、地域に密着し、地域の方達に必要とされる音楽家になる活動です。
オーケストラ自体がそういった方向性ですので、自然と僕のやりたい活動につながると思いますが。
僕は、よく言う「クラシック音楽の敷居を下げる」という表現があまり好きではありません。クラシック音楽とは敷居の高いものだと思っています(あくまで個人の意見ですから悪しからずm(_ _)m)。
素晴らしい作品たちは文化遺産のようなものであり、作曲家が作り出し、世に残した最も美しいものの一つです。それを扱い表現するためには専門的な知識と理解力、技術が必要です。ですから、敷居を下げると言って安っぽいものに作り変え、異なった表現にしてしまうことに僕は違和感があるのです(だったら、全く新しいものなり、音をつくり出す方が創造的で面白味があると感じます)。
でも、演奏者や演奏会をつくる側がお客さんに歩み寄ることは出来るはず。こちらが誠意を込めてお客さんに解かりやすく説明したりコミュニケーションを取り、解かりやすい形の演奏会がつくれたなら、お客さまの方から敷居を越えて来てくれるはずです。
お客さまに、音楽を「理解」してもらうのではなく「感じて」もらう。僕はずっとそのような活動のやり方を模索していましたが、神奈川フィルでならそれが出来るのではないかと感じています。きっとオケの方々も同じような気持ちだからこそ、そのように感じたのではないかと思います。

今回は就任にあたり、自分の今の考えをコラムに書かせていただきました。アッコルド読者の皆さんも、どうぞ一度神奈川フィルを聴きにいらしてください。来年から、自分の出来る精一杯の努力をして参ります。応援していただけたら幸いです。
それでは、また次回まで!

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみた、習ってみたい、と思われたことはありますか?

 

A:ギター。元WANDSで現abingdon boys schoolのギタリスト、柴崎 浩さんに憧れました。今でも、あんな風にカッコ良くなれたらな、と思っています(笑)。でもヴァイオリンが1番好きです。

めかる

Mekaru(Violin)

「うまこゆるあき」

 

食欲の秋!
美味しい季節がやってきましたね。

この間、甘い香りに誘われて梨をひとつ買いました。

みずみずしくて、秋だぁ~なんて思いながら美味しくいただきました。

 

私の好きな食べ物は、炒飯です。
唐揚げも好きです。
カレーも外せません。

どれもカロリーの高い物ばかり。

 

それに、東京は美味しいものがたくさんあるので、おかげさまで、上京してから10kgたくましくなりました(笑)。

 

地方から出てくると、「お袋の味」というのでしょうか、実家で食べていたごはんが無性に恋しくなることがあります。

実家のカレーには、隠し味にニンニクが入っていて、すっごく美味しいです。

東京には、カレーの名店がたくさんありますが、私にとっては母が作るカレーが一番です。

 

思い出の味といえば、試験の前日に作ってくれたトンカツ。

試験に勝つ! カツ!という、よくある験担ぎです(笑)。

 

ヴァイオリンの試験当日は、緊張のあまり食べられなくなってしまうので、梅干しがたくさん入ったおにぎりを握ってくれました。
そして出がけに、「梅干しは、お腹にいいから!」と手渡してくれました。

 

いま思うと、両親のフォローがなければ、ここまでがんばれませんでした。
感謝です。

 

いまでも、ヴァイオリンの本番前は食べられなくなってしまいます。ですから、本番後の打ち上げ時に、皆とごはんを食べて、お酒を呑むのが至福の時です(笑)。

 

今年の秋も、たくさん食べて、更にたくましくなってがんばります!

 

 

10月31日(木)ハロウィーン (^^)/ ☆☆

@吉祥寺マンダラ2

乙三×めかる 2マンライブ!

ぜひ遊びにきてください☆

http://ameblo.jp/asanomekaru/

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思ったことはありますか?

 

A:ギターを習ってみたいです。そしてバンドを組むのが夢です♪

飲みの席で、ベースの友達はドラムを、ドラムの友達はピアノを、自分の専門以外の楽器を練習してバンドを組もう!という話になったことがありますが(ベース募集中!)、未だ、動く気配はありません。。。

因に、ベースの友達は、一応、ドラムスティックを買う、というところまでは行動にうつしたそうです(笑)。

「ドキュメント・オブ・シュニトケ」

 

9月7日、東京藝術大学藝術祭2日目。わたしはA.Schnittke記念オーケストラの公演「死と変容〜原爆から平和へ〜」にオーケストラの一員として参加しました。

曲はオール・シュニトケ・プログラムで『ハイドン風モーツァルト』、「オラトリオ『長崎』」、アンコールに『ファウスト・カンタータ』の抜粋。『長崎』が日本で演奏されるのは読売交響楽団の日本初演以来のことです。

 

今回は趣向を変えて、この演奏会の企画の主宰・飯野和英さん(東京藝術大学大学院 3年 ヴィオラ)、と指揮者・川崎嘉昭さん(東京藝術大学 4年 指揮)へのインタビューをもとに、企画のはじまりから本番までをドキュメンタリー風に追ってみました!

 

寒い寒い、冬のある日から始まった

 

川崎さんが飯野さんから指揮を依頼されたのは昨年暮れ。指揮科にとって藝祭は学生のオーケストラを振ることができる数少ない機会。川崎さんはふたつ返事で引き受けた。シュニトケの作品で、大きな編成で、あまり演奏されなくて…… 説明は聞いたものの、まだこの時はそれが恐ろしく難しくて大変な曲とは思わなかった。

 

もともと飯野さんはシュニトケが大好きだった。ヴィオラ協奏曲がきっかけでありとあらゆる作品を聴いた。奇妙なリズムや不協和音が病みつきになる器楽曲、反対に宗教色が濃く賛美歌を想起させる声楽曲。どちらも好きだが、オラトリオやカンタータは両方を一度に味わえる。大学院も今年で終わり。せっかくなら何か大きな計画を成功させて、自分がここにいた爪痕を残したい。大好きなシュニトケの良さを知ってほしいという気持ちもあり、読響の演奏を聴いて感動した『長崎』を学祭でやろうと、飯野さんは決意した。それまで一度も学祭には積極的でなかった飯野さんにとって、これは大きな決心だった。

 

なんて大きなオーケストラなんだ

 

企画を立ち上げて早々に壁にぶつかった。人が集まらない。作曲者の名を口にすると敬遠され、断られる。現代音楽と学生の間に思いの外深い溝があった。学部生だけでは集められず、学祭なんて参加しなそうな院生にも勇気を出して聞いてみると、意外にも快く乗ってくれる人が見つかり、100名近いオケを揃えることができた。合唱も本来は250人規模であるが80人で妥協し、初回の練習までになんとか集まった。

 

実は人集めの最中、会場の奏楽堂の舞台に人が乗り切らないことが発覚した。川崎さん曰く、これは過去10年の藝祭でもっとも大きな企画。飯野さんは奏楽堂スタッフに掛け合った。どうしてもやりたい。人集めと並行して交渉を続け、余程のことがないと使用できない、オーケストラピットを舞台と同じ高さにする仕組みを使えることになった。

 

楽譜を読み始めてから、川崎さんは「事の重大さに気づいた」と言う。ほとんどの科が乗るほどの大編成。変拍子パラダイス。きっと最初は誰もが弾くだけで精一杯だろう。

 

7月末、オーケストラのみでの初練習が行なわれた。参加人数は芳しくなく、ホルンは本番同様8人いたがヴィオラに至ってはひとり。これが藝祭特有の難しさだ。藝祭の練習は夏休みに行なうが、休み中はそれぞれの学生が講習会やコンクールに大忙しで、藝祭の練習は二の次になる。管楽器は一見多いがこれは代奏を立ててくれたからである。今回練習に来た人が次回の練習にも来る保証はない。そんな状況の中、全員にまんべんなくこの曲の良さを伝えるのは大変なことだと川崎さんは思った。

 

しかし実際に振ってわかった『良いところ』もあった。長崎を描いただけに、旋律やリズムなど随所でごく日本的な感触がある。「これは僕ら日本人の肌にすごくなじみのいい音楽だな、という感じがした」と川崎さんは言う。

 

戦場は、他でもない、ここだ

 

とはいえ練習は過酷だった。とにかく人が来ない。オケメンは他の練習もある。練習場所は狭い。冷房は効かない。それでも練習の回を重ねるごとに人数が増えて、アンサンブルは難しくなる。5拍子、7拍子、4分割の9拍子。大編成ゆえ、ただでさえ縦を揃えるのが大変なのに、変拍子のせいで難易度はより上がる。

 

合唱もしかり。少ない時では10人ほどしか集まらない。歌詞はなじみの薄いロシア語。院生でロシアと日本のハーフの人の声で発音を吹き込んだ音源を作った。その人のお母さまに、実際に指導にも来ていただいた。その方は指導中、歌詞を読みながら、そのあまりに悲しい詩に涙したという。そのエピソードを聞いてオケのメンバーも、自分たちが弾いている曲はそんなに悲愴な音楽なんだと気づいて、強いメッセージ性のあるこの曲を絶対に成功させたいという思いが強くなった。

 

170人の祈り

 

連日準備があり、だれにとっても大変な日々だったが、演奏は次第に充実感を得られるようになっていた。本番前最後の練習の仕上がりは実際なかなかよかったと思う。飯野さんはその日の解散前に、メンバーへ感謝の気持ちを伝えてから当日の業務連絡をした。みんなはまだ早いと笑ったが、飯野さんにとってはそれがその時の心からの気持ちだった。

 

当日は17時15分開演のところ14時半から会場入りして、客席前方数列分の椅子を一度オーケストラピットごと下げて床下に収納してから、オケピットを舞台の高さに上げた。奏楽堂の顔・パイプオルガンとの合わせはゲネプロが最初で最後。舞台が伸びたら客席が少なく見えたが、ふたを開けてみれば普段はなかなか埋まることなないバルコニー席にもお客さんがたくさんいた。

 

1曲目『ハイドン風モーツァルト』。薄明るい照明の下、不調和な音楽が始まる。怪しい序奏ののち明かりがついた瞬間、喜劇の幕が開けた。モーツァルトの旋律をパロディにして、13人の奏者それぞれが気持ち悪くずれながら曲は進む。弾きながら歩いたり走ったりして、やっときれいな合奏が聞こえたかと思えば再び狂っていき、終いには奏者が舞台からどんどん去っていく。照明が落ち暗闇迫る中、指揮者だけがいつまでもリズムを刻み、最後まで弾いていたチェロとコントラバスもついに音楽をやめると、真っ暗な舞台に指揮棒が譜面台を叩く音だけが残った。

 

舞台転換を経て、メインの『長崎』。この曲が今夜日本のここ上野で演奏される。届けたいメッセージがある。口には出さないが誰もが使命感に似たものを感じていた。川崎さんが棒を構える。その姿は武者震いしているように見えた。

 

始まったら最後、信じられるのは自分だけと川崎さんは言う。それは決して奏者を信頼していないという意味ではなく、自分の力で進んでいかなければならない、という意味だ。すべての奏者が、川崎さんを信じて弾いている。その信頼をまとめあげるのが川崎さんの仕事だ。

 

飯野さんは、一度しか合わせられなかったパイプオルガンと、うまくアンサンブルを取れるか心配していた。出だし、オルガンのハーモニーと共に流れる悲しみのテーマ。客席へ伸びる音を聞いて、残酷さを抱えた荘厳な響きに酔いしれた。暗い旋律を奏でつつも、自分の企画が実際の音楽となって完成していく様子に、幸せを感じずにはいられなかった。

 

テーマ・長崎と原爆とを提示する1楽章。長崎の爽やかな朝を描いた2楽章の歌詞は、島崎藤村の詩『朝』が用いられている。そこへやってくる飛行機の音から3楽章が始まる。爆弾が街へ落とされる。きのこ雲。狂ったような管弦楽。街は荒れる。4楽章、メゾ・ソプラノのソロによって子を失った親の悲しみが歌われる。そして平和を讃える壮大な5楽章がパイプオルガンを伴った全合奏で締めくくられた。

 

終わった。川崎さんは空中で棒を止め、奏楽堂の長い残響を聴いた。ゆっくり腕を下ろしていく。音が止んでから5秒は沈黙が流れた。拍手が来ない。オケのメンバーはお互いに顔を見合わせながら、大役を終えた川崎さんに拍手をした。次第に客席へ拍手が広がって、気がついたら舞台に向かって大きな拍手が向けられていた。

 

『ファウスト・カンタータ』から抜粋したアンコールは、肩の荷も下りて、川崎さんはとても楽しく振った。魔女の声や迫り来るゾンビ、ファウスト博士を襲う悪魔を全身かけて表現した。指揮者は、手、足、顔…体の隅々まで使って自分がほしい音のイメージを発信する。これはこの曲だけでなく、川崎さんの指揮のポリシーだ。多いに盛り上がり、たくさんのブラボーと拍手をいただいて終演した。

 

戦いを終えて

 

余韻に浸る間もなく、奏楽堂撤収の音頭を取らなければならないのが主宰の辛いところ。飯野さんがほっとしたのは打ち上げでビールを飲んだ時だった。初めて自分で演奏会を企画した。人集め、楽譜の手配、練習場所押さえ…… 演奏以外のことがとにかく大変で、ひとつの演奏会をするのに多くの人が関わっていることを改めて実感した。今回本当にたくさんの人の協力を得られたことに感謝すると同時に、嬉しかったと言う。

 

「空白の5秒」については様々な意見があった。あまりの迫力に圧倒されて、なかなか拍手ができなかった、という感想が多くありがたかったが、中には切れ目なく続く楽章があったから終わりがわからなかったという声もあった。プログラム・ノートに4楽章はメゾ・ソプラノのソロと書いたから伝わるかなと思ったのだが、2・3楽章が続くことを書きそびれたのを飯野さんは少し悔やんだ。しかし、日本でこの曲を弾くのは2回目、このような出来事すら、知られていない曲を演奏するおもしろさかもしれないとわたしは思う。

 

もし。楽譜や資金や会場やら何やらすべて都合がついて、また機会を作ることができたなら。シュニトケ・シリーズをやってみたいな、と今飯野さんは思う。アンコールで弾いた『ファウスト・カンタータ』を全曲やるもよし、あるいは……

ひとつ終えて、夢は広がる。

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思ったことはありますか?

 

A:目にする楽器はどれも、弾いてみたいと思ったことが必ず一度はあります。今興味があるのは、シンセサイザーと二胡です。間近で実演を見るとすぐに自分もやってみたくなってしまう性格なのです。ちなみに今実演を見たいと思っているのはテルミンです。

原 田 真 帆

Maho Harada(Violin)

大 宮 理 人

Yoshito Ohmiya(Cello)

皆さんこんにちは!
 少し前まで暑い暑いと言っていましたが、今では日によって肌寒く感じるほどになりましたね。僕の周りでは風邪が流行っているようで、皆さま体調など崩されないよう、お気をつけください。

そしてそして今回の私事ですが、 来る11月18日(月)にPaulownia Cello Quartetチェロ・クァルテット)のLiveが決 まりました!

出演メンバーは、小林幸太郎、村井智、三井静、そして僕です。


以前、アッコルドのインタヴューでもお話しさせていただきましたが、僕が初めてチェロ・クァルテットに興味を持ったのは、NHK交響楽団の首席と3人のフォアシュピーラーによるラ・クァルティーナの演奏を聴いたときでした。

その演奏は僕にとって衝撃的で、チェロでできることは想像以上にたくさんある、と感じました。

ですから、今、こうしてクァルテットでの活動ができることは、僕にとって幸せなことです。

 

チェロ・クァルテットの魅力は、なんといっても、それぞれの個性を楽しめるところだと思います。

ですから、僕たちは演奏する曲の特性に合わせてパートを入れ替えています。今回のライヴでも、そういったところを楽しんでいただけると嬉しいです。

 会場はこのチェロ・クァルテットでいつもお世話になっている 《Art Cafe Friends(アート カフェ フレンズ)》です。


 今回も本業のクラシックにとどまらず、いろいろなジャンルの曲を演奏する予定です。 
平日の夜ですが、普段のクラシックとは違い、お酒と美味しいお食事を楽しみながら楽しんでいただければと思います。

また、現在コラムメンバーでもあるコバこと小林君が僕たちPaulownia Cello Quartetの公式サイトを制作中です。

こちらが完成しますと次回公演のお知らせやチケット予約なども出来ますので是非そちらもチェックしてみてください!

 

以下詳細です。
Live@ 恵比寿アート・ カフェ・フレンズ
11月18日(月) Open 18:00〜 Start 19:30〜
MusicCharge ¥3000 + 1 Drink ¥500〜
Student ¥2000 + 1 Drink ¥500〜

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思ったことはありますか?

 

A:サックスはやってみたいですね! jazzを聴く度に思います。あとはバンドネオンもやってみたいです。生まれ変わったらjazz演奏者になってみたいです(*´`)(笑)。

荒 井 桃 子

Momoko Arai(Violin)

皆さん、こんにちは!
ようやく涼しくなり秋らしい日が続いていますね^^

 

私事ですが先日26歳の誕生日を迎え、25歳最後の日に自分の一部ともいえるヴァイオリンを奏でていたいという想いで、故郷・神戸でライヴを行ないました。温かい拍手、笑顔、空間をくださった皆さまのお陰で温かい気持ちで25歳を締めくくることができ、感謝の気持ちで一杯です。


今回は1番シンプルな構成、ヴァイオリン&ピアノのデュオを完全なアコースティックで。


最近のソロライヴではヴァイオリン&ピアノ&パーカッションという構成が多い私。そうなるとマイクが必要になります。その他でもマイクを使う機会が増えてきました。その他でもマイクを使う機会が増えてきました。


正直、マイクになれてしまうと生音に戻ったときに違和感を憶えます。


しかしヴァイオリンという楽器は本来、生音を存分に響かせられる楽器。楽器本来の生音で音楽を伝えられてこそ、良いプレイヤーだと思うのです。ヴァイオリンに限らず、どんな楽器や声であっても・・・。


私にとって生音ライヴはとても勉強になり、初心に戻ることができる貴重な機会。これからもこのような活動も続けていきます。

 

マイクをつけた時の音と、完全な生音。


表現できることや幅も違ってきますが、それに加え、腕にかける圧力や楽器から聴こえてくる自分の音、弓のタッチetc・・・ 異なることへの集中力と対応力が必要です。柔軟に対応して、どちらの良さも伝えていけるような、その違いを楽しんで頂けるようなヴァイオリン弾きでありたい、と思う今日この頃。


初心忘るべからず。

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思ったことはありますか?

 

A:ギターです。
ギターの音色がとても好きなのと、弾き語りしてみたいと思ったからです。
音楽好きの親戚にギターをもらったことがありますが、三日坊主でした・・・。(笑)

クリックすると画像が拡大します

小 野 木 遼

Ryou Onoki(Cello)

コラムも3周目になりました。メンバーそれぞれ個性的なコラムで、僕もとても楽しく読んでいます。

 

一方僕はまだ、「生い立ち」と、「グルメ」のコラムしか書いていないような気もするので、今回こそは少し音楽的なことにもスポットを当てていきたいと思います。

 

前に大宮理人さんがコラムに書かれていましたが、チェロという楽器は音域が広いためそれだけでアンサンブルが出来るのです。


また、チェリストというのはなぜか他の楽器同士よりも繋がりが強く、仲が良いと言われています。


僕も芸大出身の仲間たちと2010年より「チェロアンサンブルXTC」 http://celloxtc.com/ を結成しておりまして、今回そのプロモーション用の録音をしたので、その様子をお届けしたいと思います。
まず、個性的なメンバーの紹介から。

リーダーの山澤慧。(写真1・参照)


彼は現代曲のエキスパートで、去年には20世紀以降の作品だけでリサイタルを行なうほどのツワモノです。
 

年齢は僕よりも1つ下ですが、とても頼りになるリーダーです!
そして、井伊準。(写真2)

 

一見パワータイプに見られがちな彼ですが、実はとても繊細な音楽を奏でます。

そして見た目通りよく食べます(笑)。


次に、夏秋裕一。(写真3)
彼は古楽にも精通している、心優しい男ですが、怒らせるとメンバー1恐ろしいのではないかというもっぱらの噂…


西方正輝。(写真4)
僕よりも2つ年下の彼は、本気でボクシングをやってたこともある力自慢で、彼のパワーは凄まじく、いつも配置に悩みます(笑)。


そして、僕。(写真5)
ROCK全般の編曲を担当しております。


そんな我々の演奏が2.3YouTubeに上がっているので、よろしければご覧下さい!


Deep Purple:Highway Star
http://youtu.be/qSitD8-rPJ0


Ligeti:Musica Ricercata
http://youtu.be/Dl-0N9pk_00


聖飢魔Ⅱ:JACK THE RIPPER
http://youtu.be/PzjPDP3bJWw


クラシックのみならず、ロック、ジャズ、アニソンなど様々なジャンルにも取り組んでおります。


そして「写真6 7」はレコーディング風景。

また、今回録音した音源に映像もつけて紹介したいと思うので、お楽しみに!

 

 

 


Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思われたことはありますか?


A:ファゴットです。やはり音域が近い楽器に惹かれるみたいです。

石 塚 彩 子

Ayako Ishizuka(Piano)

皆さま、こんにちは!

変わりやすいお天気が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

この時季は、体調管理にも十分な注意が必要ですね。

 

今回は「食欲の秋」にちなんで、私自身が練習の合間に愛飲しているお茶&もぐもぐ食べている甘いものを簡単にご紹介します!

 

お茶の専門店「ルピシア」で売っている『栗緑茶』。(写真1)

 

朝晩が涼しくなってきた頃に、淹れたてのお茶から立ちのぼる甘~い香りに、ほっこり。数多くあるお茶の中でも、これが秋の一押しです☆

 

川崎市民として思わず嬉しくなってしまう、「末広庵」という菓子店の「音楽のまち」シリーズ。写真2は左上から順に時計回りで、『音楽のまち 川崎ミューザ』『ドレミファソラスク』『惣之助の詩』『寿々の音もなか』。

 

今年の4月にはミューザ川崎シンフォニーホールもリニューアルオープンしましたし、これらをおやつに食べていると、何となく気分が上向き↑になります♪ …って改めて書くと、私ってずいぶんと単純ですね(笑)。

 

美味しいものを食べているときの人間って、もう本当に自然と笑みがこぼれていたりしますよね。口に広がっていくその幸せなひとときを味わう、噛みしめるというか。

 

例えば音楽においても、オーケストラの大音響から発せられるド迫力にノックアウトされる体験も魅力的ですが、何かこう時間の流れがじわーんとした柔らかな幸福感に包まれたソロや室内楽のコンサートの方が、「味わう」「噛みしめる」感覚により近いのでは…?と思います。

 

さて、私は昨年の秋に引き続き、今年も『とやま室内楽フェスティヴァル』に参加します。9日間の期間中には、ピアノ三重奏やピアノ連弾にも取り組む予定です。そして市役所ロビー、病院ロビー、小学校でのアウトリーチ公演をはじめ、地域のホールでのコンサートにも出演します。

 

しっかり体調を整えて、音楽の素晴らしさを受け取る&伝えられる時間にしたいと思います♪そしてもちろん、富山の美味し~い食事も今から楽しみです☆

 

http://chambermusic-toyama.jp/concerts2013.html 

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思ったことはありますか?

 

A:「弾いてみたい=体験してみたい」なら、たくさんあります! 和楽器、民族楽器など。でも「習ってみたい」とは正直、あまり思わないです… ピアノだけでも一生かかっても演奏しきれないほど、たくさん作品がありますので(笑)。

小 林 幸 太 郎

Kotaro Kobayashi(Cello,Arrange)

みなさまこんにちは。前回記事を書かせていただいた時よりも、また寒くなってきましたね。そろそろ衣替えをしようと新しい服を選びに行くものの、なかなか決まらない小林幸太郎です(笑)。

 

コラムメンバー、そしてチェロカルテットメンバーの大宮君が前回述べてくれていましたが、「Paulownia Cello Quartet」のライブを11月18日(月)に行ないます。


大宮君が記事を書いていた頃にはまだ完成していなかったのですが、フライヤーとHPの方が完成いたしました。

 

http://kurousavc.wix.com/pcqweb

 

今までの記事を見てくださった方はおわかりかもしれませんが(汗)、パソコン系担当の為HPなども作れたりします。


ちなみにフライヤーの写真も僕のカメラで自分達で撮っていたりします。

アレンジの方も、今回も新曲をたくさん書かせていただきます。
もしよろしければ脚をお運びいただけたら幸いです。

 

さて、開口一番宣伝となってしまいましたが、今回は、「食欲の秋」ということで、食生活的なことについてふれようと思います。

 

アーティストやアスリートなど、人それぞれ自分の決まった習慣やスタイルがあるかと思うのですが、僕の場合本番前と本番後に必ず決まった物を口にする習慣があります。

・本番の前日は美味しいラーメンを食べる。


こちらに関してはただラーメン好きというだけなのでとくに深い理由はありません(笑)。


オススメの美味しいお店紹介なので楽しく見ていただけたらと思います。

 

前日リハが桐朋学園の場合
「ラーメン二郎仙川店」
詳細については、コラムメンバーの小野木さんがとてつもなく詳しいので、いつか語っていただけた嬉しいです^^;

 

新宿近辺の場合
「ラーメン二郎 小滝橋通り店」
「麺屋武蔵 新宿本店」
「蒙古タンメン中本新宿店」

 

上野の場合
「油そば専門店春日亭」
「野郎ラーメン」 
「鶏王けいすけ 秋葉原店」

 

などなど頑張りたい日の前日にスタミナを付けにラーメンを食べに行きます。
※翌日の事を考えニンニクなどは計画的に入れましょう^^;

 

・本番30分前に「レッドブル」を飲む


こちらは理由があり必ず習慣的に飲んでいます。


「レッドブル」エナジードリンクとして世界で最も有名な飲み物ではないでしょうか?

効果としては


・カフェインによる覚醒作用
・ビタミンB群による代謝向上
・アルギニンによう疲労回復

 

などなど・・・といったところなのですが、摂取後おおよそ30分後から効果が出始め、3時間程度の効果持続をします。

その間はカフェインにより集中力が持続し、疲れも感じにくくなります。

効き目に関しては個人差があるようなのですが、ここぞという本番前などにもしよかったら試してみてはいかがでしょうか?


※効果が切れた後は疲労感を感じやすくなるので「必ず本番前」に摂取する事をお勧めします。

誤ってゲネ前に摂取してしまうと本番でばててしまう恐れがあります^^;

 

・本番後はお酒を飲む
こちらもプライベートの話なので楽しく読んでいただけたらと思います(笑)。
業種やジャンルを問わず終わったらビール!っていうのは美味しいですよね?

ただ、僕はつい最近までお酒を飲めなかったのですが、最近チェロカルテットのメンバーと本番が違っても夜集まって飲みに行くようになり行きつけのお店的な物ができました。

いまだにビールは飲めないのですが、そのお店の店員さんが僕の飲めるお酒でオリジナルのカクテルを作ってくださるので最近少しずつお酒の味が分かってくるようになりました。

早く「まずは生で!」ができるようになりたかったりします^^;

 

 

 

 

Q:他の楽器を弾いてみたい、習ってみたい、と思われたことはありますか?

A:オーボエです。あの音色が好きです。それに結構美味しいメロディも多いですよね♪
あと、リード作りもしてみたいです(笑)。

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